モビリティショー出展の真意
2025年10月30日開幕の「ジャパンモビリティショー2025」で、スバルが新型ピックアップモデルを世界初公開するとの観測が広がっている。だが、スバルの公式サイトやプレスリリースでは確認できず、情報の真偽は定かでない。
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複数のウェブメディアは、新型ピックアップがトヨタとの共同開発によるプラットフォームを採用し、エンジン車およびハイブリッド車となる見通しだと報じる。CGアーティストのTheo Throttle氏がレンダリング画像を公開しており、情報そのものが意図的にリークされた可能性もある。
情報源が日本である点も不可解だ。米国市場向けのモデルであるにもかかわらず、日本発で話題が拡散した背景には、何らかの戦略的意図があると見るべきだろう。
本稿では、突如浮上したスバルの新型ピックアップについて、米国市場での競争力と成功の可能性を検証する。
販売奨励金30万円の重圧
スバルの2024年度の自動車販売台数は93万6000台に達した。北米市場が約7割を占め、66万2000台を販売したものの、米国市場でのシェアは約4%にとどまる。2025年3月時点で
「32か月連続の前年超え」
を記録し、北米事業は好調を維持している。
一方、米国市場の販売奨励金は1台あたり2000ドル(約30万円)に上昇し、前年から800ドル(約12万円)増加した。販売奨励金とは、メーカーや販売会社が販売促進のためにディーラーに支払うインセンティブである。販売台数増加を狙い、ディーラーに金銭を提供し、値引きの原資として使われることが多い。このため消費者向けの販売価格は下がりやすい一方、メーカーの利益を圧迫する要因ともなる。
その結果、全社営業利益に占める北米事業の割合は約25%にとどまる。地政学リスクや関税政策の懸念はあるが、北米依存の構造的偏りに大きな変化は当面見込めない。
北米販売の約9割はフォレスターやクロストレックなどのスポーツタイプ多目的車(SUV)が占めている。
「極端なSUV依存からの脱却」
が求められており、参入セグメントの再定義は不可避だ。新型ピックアップは、スバルのラインナップの空白を埋める有力な選択肢となる可能性が高い。
デトロイト三強の牙城
北米のピックアップ市場は長年、GM、フォード、ステランティス(クライスラー)による「デトロイトスリー」が支配している。車格はフルサイズ、中型、小型の三つに分類される。フルサイズでは、
「フォード・Fシリーズ」
が不動のベストセラーだ。シボレー・シルバラード、ラム・トラックも続き、これら3モデルの年間販売台数は200万台近くに達し、「鉄壁の3強」と称される。
中型ピックアップではトヨタ・タコマがトップに立ち、デトロイトスリーをリードする健闘を見せている。小型ピックアップ市場は、2021年以降にフォード・マーベリックと現代自動車のサンタクルーズが新たに開拓したセグメントだ。特徴はセダンの後部に荷台を設けたボディ構造にある。
GMやステランティスなどが参入しない“空白市場”であり、スバルがこの分野に商機を見出していると推察される。
北米依存と市場変化の背景
スバルはかつて小型ピックアップを販売していた。2003年から2006年までの「バハ」は、2代目アウトバック(日本名レガシィランカスター)をベースに、後部座席より後方を荷台に変更したモデルである。販売期間はわずか3年で終わったが、撤退理由は明確でない。
当時、スバルの北米依存度は約3割で、市場としてあまり重要視されていなかったことが一因とみられる。また、ボディスタイルが当時の市場に合わなかった可能性もある。近年、小型ピックアップの人気が高まり、時代が追いついた形だ。
近年はZ世代(1990年代半ばから2000年代初頭に生まれた世代)を中心に2000年代のファッションや文化が流行している。バハもレトロブランドとして復活のチャンスはあるが、現代に通用する製品哲学を持つかがカギとなるだろう。
新型ピックアップのモデル名もマーケティング上重要な意味を持つ。
・復活を強調する情緒的な名前にするか
・イメージを刷新し機能を追求する名前にするか
いずれかになるだろう。
共同開発の成否と価値判断
スバルの新型ピックアップに採用されるプラットフォームは、トヨタとの共同開発である点が注目される。両社はすでにスポーツ車「86/BRZ」や電気自動車「Bz4X/ソルテラ」で兄弟車を展開し、共同開発の実績がある。新型ピックアップが生産・開発の水平分業によるものか、真の共同開発かで存在価値は大きく異なる。
トヨタは北米のピックアップ市場で、フルサイズの「タンドラ」と中型の「タコマ」を展開している。小型ピックアップ市場への新規投入は、両社にとって新たな挑戦だ。単独で進められなかった領域を協力して切り拓けるかが焦点となる。
さらにハイブリッド車の導入も視野に入り、北米ピックアップ市場における電動化の主導権争いも見逃せない状況だ。
電動化競争の主導権争い
フォード・マーベリックと現代・サンタクルーズのスペックを比較すると、小型ピックアップ市場が求める実像が見えてくる。両モデルとも2.5Lエンジンを搭載し、車両価格は約2万8000ドル(約420万円)で拮抗している。
燃費性能では、市街地モードでマーベリックが22mpg、サンタクルーズが19mpgとなり、前者が優位に立つ。加速性能でも、電動ブースターを備えるマーベリックが上回るとされる。2024年の米国内販売台数では、マーベリックが13万台超を記録し、サンタクルーズの4倍以上と大きく引き離した。
スバルの新型ピックアップにハイブリッド仕様が設定されれば、燃費性能と価格面のバランスから買いやすさが訴求点となる。一方、同じ車格で電気自動車(EV)を展開する場合は、実用性よりも話題性が先行しやすい。
近年はリヴィアンやテスラも参入し、電動ピックアップ市場への関心が高まっている。ただし、米国内では充電インフラの整備状況に地域差があり、電力料金も統一されていない。加えて、カリフォルニア州などの環境規制が厳しい州では、メーカーに対し電動モデルの強化が求められている。
こうした政策や市場条件のばらつきをいかに吸収し、実効性ある製品として市場に届けられるか。スバルの戦略が問われる局面にある。
追加関税と地産転換
スバルの新型ピックアップは、米インディアナ工場で生産される可能性がある。年間生産能力は約40万台で、現在はアウトバックやインプレッサなどを製造している。
日本から米国へ輸出される自動車には追加関税が課されており、スバルは今後、トヨタの北米拠点を含む生産体制の再構築が求められる。
トヨタとのプラットフォーム共有により、北米での生産分担が可能となるだけでなく、部品調達の共通化や品質の均質化も実現できる。
一方、日本国内での生産が成立するかどうかは、自動車関税の軽減措置や免税制度、物流コストなどの試算次第となる。中長期的には、地産地消がより現実的な選択肢になるだろう。
スケール効果を狙う供給網再編
フォード・マーベリックのハイブリッド車(2.5L)は、約2万8000ドル(約420万円)で展開されている。これを基準とすれば、スバルの新型ピックアップも同水準の価格帯に収める必要がある。
スバルのSUV価格は、フォレスターが約3万ドル(約450万円)、クロストレックが約2万6000ドル(約390万円)と並ぶ。こうした既存モデルとの整合性を保ち、消費者に価格面で混乱を与えないことが重要だ。価格が高すぎれば競合モデルとの格差が開き、逆に安すぎれば既存SUVとの市場の食い合いが懸念される。
バリューチェーン全体においても、コスト抑制は不可避の課題である。特にインフレ下における価格競争では、サプライチェーンの最適化がカギを握る。トヨタとのプラットフォーム共通化は、調達や生産のスケールメリットを通じて、その一助となる。
一方で、米政権の動向も無視できない。トランプ政権は米国ファースト政策を軸に、関税強化やEV補助金廃止、パリ協定離脱など、環境政策と一線を画す路線を鮮明にしている。政権交代が企業の投資戦略に与える影響は大きく、スバルの新型ピックアップも例外ではない。
さらに、米中貿易摩擦の激化により、サプライチェーンや技術移転は厳格な管理体制の下に置く必要がある。地政学リスクの回避には、こうした対応が欠かせない。
加えて、為替変動リスクも中長期的な経営判断を左右する。トランプ政権の方針に沿えば、ドル安・円高基調への転換が予想される。現在の1ドル=150円水準がどこまで維持されるかは不透明であり、先を見据えた戦略立案が強く求められる。
未開市場への再突入
スバルによる小型ピックアップ市場への再参入は、売上の約7割を依存する北米市場における攻勢と位置づけられる。同時に、北米事業に偏った経営構造のリスク分散策とも読み取れる。新型ピックアップの投入が、こうした地域依存の歪みを是正する手段となり得るかが問われている。
この市場は、フォードと現代自動車が切り拓いた未踏の領域ともいえる。スバルがそこに踏み出す意義は小さくない。
成功か失敗かといった短期的な評価を超えた挑戦である。過去の撤退にとらわれず、未知の市場に再び挑むスバルの姿勢が、今後どのような成果を生むのかを注視したい。(鶴見則行(自動車ライター))
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みんなのコメント
個人が妄想して内輪で楽しんでるだけなら自由だけど、それをベースにもっともらしく記事を書くのはいい加減にして欲しいです。