10月11日に行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権最終戦のモチュール・プチ・ル・マンで、マシュー・ジャミネ&マット・キャンベルとともに3位に入ってポルシェのダブルタイトル獲得に貢献したローレンス・ファントール。当初、7号車のサードドライバーとしてエントリーしていたファントールは、急遽6号車とのダブル・エントリーという役割を担ったが、突然のアクシデントにもかかわらず、「予想以上にスムーズに進んだ」とレースを振り返った。
■レース開始2時間前の異変。「かなり異色の一日」
ジャミネとキャンベルが同一ペアで3年ぶり2度目の戴冠。ポルシェ・ペンスキーとの成功を「誇りに思う」
ベルギー出身のファントールは、ミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタで開催されたシーズン最終戦の10時間レースで、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのポルシェ963の2台をドライブした。これは、当初6号車のサードドライバーとして予定されていたジュリアン・アンドラウアーが、レース開始2時間前というタイミングで「激しい背中(腰)の痛み」を理由に、欠場を余儀なくされたためだ。
アンドラウアーはサーキットで複数の医師の診察を受けた後、更なる検査のためすぐにフランスへ帰国したことをSNSで明らかにした。しかし、このファクトリーGTPチームはリザーブドライバーを置いていなかったため、この欠場により6号車のタイトル獲得に黄信号が灯った。
「ジュリアンは今朝の状況にかなり落胆していた」と、ポルシェ・レーシングのプレジデントであるジョナサン・ディウグイドは明かす。
「でも、正直言って、レーススタート前の1時間はかなり慌ただしかった。(IMSA会長の)ジョン・ドゥーナン、ボー(・バーフィールド)、ポール・ウォルター、そして土壇場でドライバー変更という困難な状況を乗り越えるために尽力してくれた皆さんに、心から敬意を表したい」
「ラリー(ファントールの愛称)は、じつは難しい状況になり始めた時に手を差し伸べて、『君たちが望むことは何でもやる』と言ってくれたんだ」
ファントール本人は、さらにこう付け加えた。
「そういう意味では、僕にとってかなり異色の一日だった。レースが始まって1時間が経った頃、『ラリー、次は君だ』と言われた。『どのマシンだ?』と聞くと、『まだ分からない』という答えだったんだ」
「そんな一日だった。結局、考える時間はなかった。マットとマシュー、そしてチームを助けたかっただけだよ」
「マシューが僕にトップでマシンをつないでくれた。今週末、6号車に乗るのは初めてだったので、ミスをせず、チャンピオンシップに悪影響を与えないことを願っていた」
「僕としては、今日は彼らを助ける日であり、ミスをできない日だった。少しでも貢献できたことを嬉しく思う」
チャンピオンシップをリードする6号車ポルシェに、それまでまったく乗ったことがない状態で飛び乗らなければならなかったというプレッシャーについて、ファントールはまったく感じていなかったという。
「いまにして思えばそうなんだけど、僕はただその状況で最善を尽くそうとしただけだ」とファントール。
「ふたりがなんとかこの結果を出し、僕が少しでも貢献できたことを、心から嬉しく思うよ」
■準備万端だったシート。チームは運転時間の管理に集中
ポルシェ・ペンスキーの今回のケースのような不測の事態への備えが、ロード・アトランタでは功を奏したと言える。両車に同じベースシートが装備されていたため、時間的に不可能だった新しいシートの製作や、土壇場での調整対応といった手間が省けたのだ。
「僕のシート・インサートは、(6号車の)シートにぴったりフィットした」とファントールは説明する。
「(同じ)ポルシェ963だけど、(6号車は)少し違うものなんだ。ツールやソフトウェアの適用方法はそれぞれ違うけど、最初の数周からマシンは快適に感じたよ」
「実際、想像以上に、そして期待以上にスムーズに進んだ」
ディウグイドは次のように付け加えた。
「全体的に見ると、それが我々のチームの強みなんだ。ジャミネが全員のベースシートとなっているので、大きな問題なくマシン間でシートを交換できるというわけだ。ラリーは準備万端で、すぐに作業に取り掛かり、素晴らしい仕事をしてくれた」
ポルシェLMDhのファクトリーディレクター、ウルス・クラトルは、ドライバーと2台のマシンの走行時間に関して、レースは「数学的なゲーム」になったと付け加えた。
ルール上、ファントールはそれぞれのマシンで最低45分の走行が求められたが、さらに重要だったことは、『連続する6時間のなかで(両車合わせて)4時間を超えてドライブしてはいけない』というルールに従うことだった。
「そこからは、6号車と7号車の走行時間をひたすら管理していた」とディウグイドは明かす。
「もちろん(タイトルのかかる)6号車はより一般的なドライバーローテーションを採用した。ただ、それが最終的に7号車に悪影響を与えたとは思っていない」
[オートスポーツweb 2025年10月15日]
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