大阪ファッションLOVER──Vol5. レイン

強いこだわりと関西ならではのユーモアを巧みに掛け合わせた大阪ファッションの震源地を紹介する短期連載。第5回は、1996年にオープンして以来、大阪古着界を牽引し続ける老舗ヴィンテージショップ「レイン（RAIN）」。だ。

大阪古着の柱的存在東心斎橋の繁華街の中でも、比較的静かなエリアに立地する小さな雑居ビルの3階にヴィンテージショップ「レイン」はある。取り扱うジャンルは多岐にわたるが、一歩足を踏み入れると1900年代初頭に作られたアメリカ古着を筆頭に、50年代製のトゥルーヴィンテージや90年代前後のグッドレギュラー、さらにはオリジナルのリメイクアイテムまで揃っている。オーナーの大沼寛幸さんは長年アメリカで買い付けを続けており、豊富な知識と深い審美眼で、多くのヴィンテージファンが厚い信頼を寄せる。店内に並ぶアイテムは、いずれも独創的であり芸術性にも長けているのだ。

「コロナ前までは毎月アメリカに行っていたのですが、最近は2カ月に一回くらい。オーナーがスリフトなどを回りつつ、現地のディーラーからも買い付けています。ラインナップはほぼメンズでウィメンズは少ないですが、ユニセックスで着られるものがたくさんあるので女性のお客様も多いです」とスタッフの米田さん。

特に目を引くのはヴィンテージを中心としたメンズウェア。リーバイスやチャンピオン、USミリタリーなど王道を押さえつつも、いわゆる“名品”に頼りすぎない。たとえば、ノーブランドながらディテールや素材感が味わい深い80～90年代のジャケットや洗いざらしの質感が美しいカレッジスウェットなど、他店では見過ごされがちな名脇役が古着巧者の琴線に触れる絶妙な表情をたたえている。最近の人気アイテムについて訊いた。

「50年代のレーヨンシャツやギャバジンジャケットが人気です。あとGジャンやデニムパンツ、カバーオールなどヴィンテージのデニム類やミリタリー関連のアイテムはシーズンレスでよく出ますね」

唯一無二のセレクトは買い付けてきた古着のみならず、ここでしか買えないリメイクアイテムもかなりハイセンスな仕上がりだ。米田さんが続ける。

「ヴィンテージファブリックを使ったリメイクアイテムは、縫製は外部にお願いしていますがデザインはオーナー自らが手がけています。生地に変化をつけながら同じパターンで展開していて、ハンドペイント仕様のスウェットやパーカは、絵描きの知人に自由に描いてもらっています。元彫師だったこともあり、迫力のある絵柄が得意。ヴィンテージ古着に描いている貴重な一点ものです」

ここに来れば何か見つかるまた最近の古着屋、特に人気店ともなると入荷日のオープン前には長い行列ができることも少なくないが、「レイン」に限っては例外。これには理由がある。

「特に決まった入荷日を設けていないと言いますか、毎日何かしら入荷があるんです。いつ誰が来店しても欲しいものがあるような品揃えにはなっています。通販もオンラインショップもないので、ぜひお店に足を運んで実際に手にとっていただきたいです」

SNSで頻繁に新入荷をアピールしたり、派手なキャンペーンを打つことはない。その代わり訪れる客との会話や、実際に服に触れたときの感覚を大切にしているのも、「レイン」ならではの魅力と言える。

「30年前くらいから通い詰めていただいているお客様がたくさんいらっしゃるので、そういった常連様に支えられています。みなさんふらっと「ここにきたら何かあるやろ」って感覚で来店されて。そういう存在であることが嬉しいです」

近年では、ヴィンテージ人気が高まるなかで、古着がトレンド的に消費される風潮もあるが、「レイン」はそうした流れとは一線を画す。ブランドバリューや製造年代を問わず長く着続けられる、誰かにとっての“定番”がここにはあるのだ。

RAIN住：大阪市中央区東心斎橋1-12-3 協栄ビル301号　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　TEL：06-6282-9025　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　営：平日13：00～20：00 、土日祝12：00～
休：不定　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
HP：https://ameblo.jp/rain-1996/

写真・中島真美　文・オオサワ圭