先日登場した日産 ノートオーラは、ノートをベースにしたいわゆる派生車。車名のとおり、ノートとの関連性は非常に高いモデルだ。
一方、中国で先日発表されて話題となったクラウンクルーガーのように、「メジャーなモデルの名前だけを借りた、そのモデルとは関係性がゼロに近い一種の派生車」も過去には意外に多かった。本稿ではそんなモデルを振り返ってみたい。
ダイムラー・ベンツ製のエンジン「DB605」を搭載したメッサーシュミット空撮記【名車の起源に名機あり】
文/永田恵一
写真/TOYOTA、MITSUBISHI
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マークXジオ
トヨタ マークXジオ/全長4695mm×全幅1785×全高1550mm
2019年に生産を終了し、トヨタのアッパーミドルセダンとしてかつては一世を風靡したこともあったマークII&マークXは歴代FR車だった。その名声を借りたステーションワゴンに近いミニバンとして2007年に登場したのがマークXジオである。
当初、2列目がキャプテンシートとなる6人乗りとベンチシートで7人乗りの3列シートミニバンとして登場し、ホンダ オデッセイの3代目モデルに近いミニバンで、セダンのマークXとはまったく関係のないFF(前輪駆動)車だった。
マークXジオは、ミニバンの要素に加え、コンセプトにサルーン的な快適性という要素があったこともあり、1列目と2列目に乗っているぶんには乗用車的な高い快適性を持つなど、面白みこそ薄いもののいいクルマだった。
しかし、マークXジオが登場した時点でオデッセイも含めてステーションワゴン型ミニバンの需要が下火になっていたことに加え、3列目シートの狭さとクセのあるスタイルという大きな弱点があったこともあり、販売は伸び悩み、プリウスαに役割を引き継ぐ形で2013年に絶版となった。
プリウスEX/プリウスC
写真は、米国で発売されていたプリウスC(現行型アクア)。プリウスという車名が「トヨタにおけるエコカーのブランド」として定着してきたこともあり、名付けられた
世界初の量産ハイブリッドカーとして1997年に登場したトヨタ プリウスは登場以来着実に成長。特に2009年登場の3代目モデルで爆発的なヒット車となった。
3代目プリウスは当時ハイブリッドが少なかったこともあり、同時期に登場したホンダ インサイトの2代目モデルと間接的に競合するケースもあった。
また「地方自治体で使うクルマは1.5Lまでという場合がある」といった対応もあり、3代目プリウスとは当然ながら別のクルマとなる2代目プリウスを3代目プリウスの登場後もプリウスEXの車名で継続販売した。
プリウスEXは、3代目登場時点でも充分な競争力を持っており、価格も2代目インサイトのベーシックグレードと同じ189万円に抑えた。
さらに当時はリーマンショック直後の不景気に対応する政府の景気刺激策としてエコカーに対する新車購入補助金があったのだが、3代目プリウスは長期間の納期が掛かっていたため新車購入補助金が間に合わないことも多く、納期が短いプリウスEXにはこの点も追い風となり、まずまずの販売成績だったようだ。
また、3代目モデル以降プリウスという車名は「トヨタにおけるエコカーのブランド」のように成長したこともあり、2011年に登場した現行アクアの米国での車名は、プリウスファミリーの一員を思わせるプリウスCと名付けられた。
GRヤリス
トヨタ GRヤリス/全長3995×全幅1805×全高1455mm
トヨタは2017年からWRCに復帰し、参戦車両として海外ではヤリスとして販売されたヴィッツをチョイス。そして、WRC復帰にあたりトヨタが「モータースポーツで有利に戦うには、市販車からモータースポーツ参戦を強く念頭に置いたモデルが必要」と判断し、2020年に登場したのがGRヤリスである。
GRヤリスは、5ドアのヤリスを3ドアにしたものに見えるかもしれないが、WRCの「R5」カテゴリーへの参戦を視野に入れた1.6Lターボエンジン+4WD/6速MTというパワートレーンにはじまり、プラットホームは、ボディ前半こそ5ドアのヤリスと同じTNGA-Bながら、ボディ後半は1クラス上のプリウスなどが使うTNGA-Cと別物。
さらにボディは全幅1805mmにワイド化され、ルーフ後半はリアスポイラーの効果を上げるためボディ後半に行くに従って垂れ下がったデザインとするなど、5ドアのヤリスとは完全に別のクルマといえる。
その甲斐あってGRヤリスは、特に1.6Lターボ+4WD系が痛快なクルマに仕上がっており、今後さらにモータースポーツ業界を盛り上げていく存在となるのは間違いないだろう。
パジェロミニ/ジュニア/イオ
三菱 パジェロミニ/全長3395×全幅1475×全高1635mm
パジェロは、ピックアップトラックベースの本格クロカンSUVとしてスタートし、時間を追うごとに乗用車的なキャラクターを強めることで初代モデル後半から2代目モデルで人気車となった、三菱にとって最も成功した1台である。
そのイメージを生かしたのが1994年登場の初代パジェロミニだ。車名が一般公募された初代モデルは、軽自動車のクロカンSUVという時点でパジェロとはまったく関係のないモデルながら、パジェロをそのまま小さくしたような3ドアボディに4気筒のNA&ターボエンジンにFR/4WDというパワートレーンを搭載。
当時のパジェロ人気もあり大ヒットしたのに加え、上級グレードにオプションを深く考えずに加えていくと車両価格が200万円を超えるなど、今になると現在の軽自動車の高価格化の先駆けのようなモデルでもあった。
なお、パジェロミニは1998年に軽自動車の規格改正のタイミングで2代目モデルに移行し、2代目モデルは初代モデルほど成功せず、2012年に絶版となった。
また、パジェロファミリーには1995年に、ちょうど現在のジムニーとジムニーシエラの関係のようにパジェロミニのボディサイズを若干拡大し、エンジンを1.1Lとしたパジェロジュニアが追加。ボディとエンジンの拡大による安定性やドライバビリティ(運転のしやすさ)などが高く評価された。
そして、その後継車として1998年に登場したのがパジェロイオである。現在のトヨタ ライズ/ダイハツ ロッキーに近いボディサイズで、3ドアと5ドアをラインナップする、パジェロファミリーらしい高い悪路走破性も備えるコンパクトSUVだった。
この頃にはSUVの主流がトヨタ ハリアーやホンダ CR-Vをはじめとした乗用車ベースに移行していたこともあり、日本では目立たないまま2007年に絶版となったが、中国やブラジルといった海外では2014年まで販売された長寿車だった。
C207型Eクラスクーペ
メルセデスベンツEクラスクーペ/全長4705×全幅1785×全高1395mm
メルセデスベンツはプレミアムブランドだけに、Cクラス以上のFR系にはセダンより贅沢な存在となる2ドアクーペも相当数ラインナップしている。
Eクラスの2代目モデル(W210型)と3代目モデル(W211型)には2ドアクーペはなく、その役割は当時のCクラスベースのCLKが担っていた。
そしてEクラスが先代型の4代目に移行した際にはC207型としてEクラスクーペが復活するのだが、フロントマスクやリアビューは4代目Eクラスを踏襲しながら、当時のCクラスをベースとしたモデルだった。
C207型Eクラスクーペは申し分ない完成度を持つほか、「ボディサイズがEクラスをベースとするより扱いやすい」という武器もあったが、なぜ車名がEクラスクーペだったのか? については、ちょっとした謎である。
なお、Eクラスが現行型5代目モデルになってからのEクラスクーペは車名通りEクラスベースとなっている。
◆ ◆ ◆
冒頭に書いたような「名前だけを借りた本家との関係がゼロに近い派生車」は、最近ほとんどなくなっているが、そのなかで注目したいのはクラウンだ。
それは4月に中国で行われた上海モーターショーでクラウンヴェルファイアと、海外で販売されるラージSUVであるハイランダーのフロントマスクなどを換えたクラウンクルーガーが登場したからである。
クラウンの将来に関してはSUV化などいろいろな情報があり、今後クラウンは「セダンは現行型を継続販売し、ハリアーベースのSUVが加わる」という説もあるだけに、「クラウンの車名を使ったモデルが日本でも増える」という可能性は充分ありそうだ。
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