高齢者支える路面電車
高知県を走るとさでん交通の路面電車が当面、存続することになった。県と高知市など沿線地方自治体が支援拡大を決めたためだが、将来の危機が回避されたわけではない。
【画像】「えぇぇぇ!」 これが60年前の「高知駅」です! 画像で見る(計8枚)
高知県南国市大埇(おおそね)のとさでん交通後免町停留場で年季の入った路面電車が動きだす。乗客は地元の高齢者とクラブ活動の運動具を持つ中学生グループの計5人。6月上旬の週末の朝、雨模様のせいからか、行楽に向かう家族連れの姿は見えない。
高知市を目指す路面電車は頻繁に乗り降りがある。後免町停留場から乗車した年金生活の高齢女性(80歳)=南国市=は
「朝は便数が多いから、近くへ出かけるのにちょうどいい。それに週末は空いているから」
という。それでも高知市に入り、沿線の風景が田舎町から都市部に変わると乗客が少しずつ増えていった。
コロナ禍で債務が急拡大
とさでん交通の路面電車は、はりまや橋停留場(高知市はりまや町)から後免町停留場へ向かう御免線、伊野町停留場(いの町)を結ぶ伊野線、JR高知駅と接続する高知駅前停留場(高知市北本町)行きの駅前線、高知港近くの桟橋通五丁目停留場(高知市桟橋通)へ向かう桟橋線の4路線がある。総軌道距離は25.3kmに及ぶ。
とさでん交通は高知市など県中部で路面電車やバス事業をしていた土佐電気鉄道、高知県交通、土佐電ドリームサービスの3社が合併して2014(平成26)年に発足した。土佐電気鉄道と高知県交通の2社が債務超過に陥っていたのを救済する目的で、県と県内12市町村が計10億円を出資し、事実上公営化した格好だ。
開業後は経営が順調に進み、発足時に約38億円あった債務が2019年度で約25億円に減った。しかし、コロナ禍が待ったをかける。乗客の激減で大幅赤字が続き、財務状況が急激に悪化、債務は2024年度で約37億円に膨らんだ。
高知市は有識者会議を設置して2022年から対応を検討したが、路面電車の運行区間適正化や路線バスとの並走区間解消などを求める報告書が2023年に提出され、路線維持が危機に直面していることが明らかになった。
県と沿線市町が約12億円の協調支援
危機感を抱いた県は高知市、南国市、土佐市、いの町のとさでん交通路面電車、路線バス沿線4市町と協議した結果、路面電車について当面、現状を維持し、車両や施設の老朽化で大幅な設備投資が見込まれる10年後の姿を検討する方向性を示した。
とさでん交通は高速バスや貸切バスの収益で公共交通を維持するビジネスモデルだが、負債の増加で設備投資に必要最小限の予算しか振り向けられず、老朽化した車両や設備の更新ができていなかった。そのうえ、運転士不足を乗り切るため報酬増の予算も乏しい。
バス路線は縮小が続き、このままではじり貧に陥りかねないことから、コロナ禍で増えた約12億円の債務解消を目指して協調支援を決めた。支援額は県が約8億円、4市町が約4億円。4市町の内訳は人口規模や運行路線の延長から、高知市が約3億2500万円、南国市が約3800万円、いの町が約2300万円、土佐市が約750万円となった。
県交通運輸政策課は
「とさでん交通の経営は負の循環に陥ろうとしている。コロナ禍で増えた負債を解消することで悪い流れを断ち切り、コロナ禍前の経営状態を取り戻したい」
と狙いを説明した。とさでん交通は「これで車両や設備更新、乗務員不足に手を打てる。協調支援を経営改善のきっかけにしたい」と胸をなでおろしている。
路面電車の長期的なあり方を検討する会議も6月から始まった。高知市の高知共済会館で開かれた初会合には、会長を務める高知工科大システム工学群の西内裕晶教授ら有識者、事業者、沿線自治体関係者ら委員14人が出席、とさでん交通から本来必要な年間8億円の維持費を必要最小限の2億3000万円に圧縮している現状の報告を受けた。
検討会は今後、路線維持に必要となる将来的な設備投資のコストや、詳細な利用状況、路線バスとの競合などについて調査を進め、2026年秋ごろに10年後のあり方をまとめる方針だ。
持続可能な運行へ正念場はこれから
だが、とさでん交通を取り巻く環境は厳しい。国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年国勢調査の県人口約69万人は2050年で約45万人に減る見込み。路面電車が走る高知市は約33万人が約24万人、南国市は約4万7000人が約3万3000人、いの町は約2万1000人が約1万1000人になると推計されている。
路面電車の乗客は運転免許を持たない子どもと高齢者が多いが、県によると、2024年度に約5万2000人いた県内小中高校の児童生徒数は、少子高齢化で2027年度に約4万8000人に落ち込み、その後も減少を続ける見通しだ。65歳以上の高齢者人口も2020年の約24万5000人がピークで、2045年には約21万3000人に減ると予測されている。
県内は大人ひとりにマイカー1台の車社会。路線維持にはこれまで路面電車を利用しなかった乗客を確保しなければならないが、マイカーの利便性に慣れた住民を路面電車に呼び戻すのは容易でない。
しかも、県や沿線自治体の財政は社会保障費の増大と税収の減少で厳しさを増す一方。今回のような大幅な支援拡大を何度も続ける余裕はなくなりつつある。高知市交通戦略課は
「支援の方向は決まったが、10年後のあるべき姿をまとめるこれからが正念場」
と気を引き締める。
とさでん交通の路面電車は日本で2番目に古い1904(明治37)年の開業。ちょうど日露戦争が勃発した年で、現存する路面電車で最古となる。高知市を訪れる観光客の多くが利用し、高知市のシンボルにもなっている大切な存在だ。県と沿線自治体はこの厳しい環境を乗り越え、持続可能な未来を切り開くことができるのだろうか。(高田泰(フリージャーナリスト))
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