「間に合わないかもしれない」──ガレージで見た『大手術』
撮影:佐々木純也
【画像】【レーシングドライバー塚本ナナミのスーパー耐久参戦記 第4戦SUGOスーパー耐久4時間レース 全7枚
富士24時間レースでの大クラッシュから、1ヵ月足らず。第4戦『SUGOスーパー耐久4時間レース』(宮城県・スポーツランドSUGO)は、これまでにない緊張感の中で迎えることになりました。
クラッシュした822号車を福島県のガレージ『ファインリミテット』に運んで調べてみると、ダメージは予想以上。フロント周りはすべて損傷しており、丸ごと切り抜いて新しく溶接し直すという、まさに『大手術』が必要な状態でした。
皆さんに喜んでいただいているオリジナルカラーリングの再現まで含めると、「本当に間に合うのか」──チームの誰もが不安を抱えていました。
私もガレージに駆けつけ、現場をこの目で確認しました。そこには、北海道から作業のためにやってきた水田監督が、ファインリミテットの村松チーフエンジニアとともに、つきっきりでマシンを修復してくれている姿がありました。
そして大会前日、なんとか形になったマシンをサーキットに搬入。ただ、外見は戻っても、走らせてみなければ本当にトラブルが解消されたのかは分かりません。
木曜日からの専有走行(本番前に走れるテスト走行枠)でセッティングを詰める予定でしたが、SUGOの空は大雨続き。安定した路面でマシンの正確な動きを確かめたくても、それすら叶わないまま、ぶっつけ本番に近い状態で予選を迎えることになったのです。
雨のノックアウト予選、プレッシャーの最高潮で捨てたもの
今回の予選は、規定タイムをクリアしたクルマだけが上位のアタックへ進める、段階的なノックアウト方式でした。スーパー耐久の予選は複数のドライバーがそれぞれタイムを刻み、その結果を合わせてスターティンググリッド(決勝のスタート順)が決まる仕組みです。
まずBドライバーの川福健太選手が最初のセッションを突破し、上位グループ進出を決めてくれました。続いて、Aドライバーの私の出番です。正直に言うと、24時間レースでのクラッシュは精神的に大きな重荷となっていて、「私にやれるだろうか……。絶対に失敗できない」という思いの中にいました。
しかも折悪しく、私の予選はドライ路面から雨が降り始めるタイミングに当たってしまいました。クラッシュを経験したばかりのドライバーにとって、これほど悪いイメージにつながる状況はありません。
プレッシャーが最高潮に達した私は、すべての邪念を捨てることにしました。
とにかくこのクルマを無事に走らせたい。少しでも周回を重ねて、データを取りたい──その作戦に徹したのです。
結果はクラス3番手。私の中では決して満足できるタイムではありませんでした。でも、マシンはノートラブルで予選を走り切ってくれた。『最低ラインの合格』を胸に、私たちはクラス3番手からのスタートを迎えることになりました。
奇跡の優勝は、皆さんのものです
決勝は4時間。スーパー耐久の中では短い部類のレースで、燃費走行ではなく、ドライバー全員が本気でタイムを稼ぎに行く戦いになります。
スタートを担った川福選手がトップに躍り出てマージンを築き、惠木勇哉選手がそれを守ってバトンをつなぎ、いよいよ私の出番。
ドライバー交代の瞬間は、富士24時間の記憶がよみがえる、とても不安なものでした。
走行中のタイムは関係者やメーカーの方々に見られ、比較されます。それを意識せずに走ることは、レーシングドライバーにとって実はとても難しいこと。
でも今回の私の役割は、確実に次のドライバーへバトンをつなぐことです。エゴもプライドも全部捨てて、タイムが落ちてもいい、接触もトラブルもなく、クルマを無事に次のスティント(各ドライバーの走行担当区間)へ、という思いだけ。シーズンを通して戦うサーキットの中でも道幅が狭い部類に入るSUGOだからこそ、なおさら慎重に、それだけに集中しました。
川名賢選手へバトンタッチできた瞬間、チームに安堵の空気が流れました。「川名選手なら、最後まで安全にゴールまで運んでくれる」。そして私たちAndLegal Racing 822号車は、大クラッシュからわずか1ヵ月で、2位に約42秒差をつけ、奇跡の復活優勝を成し遂げたのです。
私たちにとって念願の優勝でした。
チーム全員が、これまでの思いを胸に涙を流し、抱き合いました。信じて応援してくださったファンの皆様、支えてくださるスポンサーの皆様、そして一切のトラブルなくマシンを仕上げてくれたメカニックの皆さん。私たちの優勝は、皆さんのものです。
次戦は7月25~26日、大分県日田市のオートポリス。このままチーム一丸となって連勝を目指します。We are ONE TEAM!! 引き続き、応援よろしくお願いします!
第4戦SUGOスーパー耐久4時間レース AndLegal Racing 822号車リザルト
順位:1位/タイム:4:00’36.500/ラップ:133
クラス:ST-5F/カーナンバー:822/チーム:AndLegal Racing/マシン:アンドリーガル ドリフトスピリッツ Moty’s FIT/ドライバー:塚本ナナミ、川福健太、惠木勇哉、川名賢
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