「新車の4割」争奪戦
日本経済新聞は2025年4月22日、中国の電気自動車(EV)最大手・比亜迪(BYD)が日本の軽自動車市場に参入すると報じた。BYDはすでに軽自動車規格に準拠した設計を完了し、日本専用の新型プラットフォームを開発。2026年に投入する方針だ。
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軽自動車は
「新車販売の約4割」
を占める日本独自の市場である。税制の優遇措置や駐車場要件の緩和といった制度に支えられてきた。いわゆるガラパゴス市場であり、ローカル規格への対応が求められるため、海外メーカーには高い参入障壁がある。
そこへEVの世界的リーダーであるBYDが挑む。この動きは注目に値する。本稿では、軽EVで先行する日産や三菱との違いに着目し、BYDの狙いと参入の成否を考察する。
軽EV市場は日産・三菱の独擅場
軽EV市場の先駆けとなったのが、日産「サクラ」と三菱「eKクロス」だ。両車は2022年に市場投入された。日産サクラの車両価格は補助金適用前でおよそ260万円。補助金を活用すれば200万円を下回る価格での購入も可能だ。内外装の質感は高く評価されており、「軽 = 安っぽい」という既成概念を覆した。
日産サクラの累計販売台数は8万台を超えた。2024年まで3年連続で軽EVの販売台数トップを維持している。EVの普及が進まない日本において、一定の成果を挙げたといえる。ただし、航続距離は180kmにとどまり、補助金依存の価格設計という課題も抱える。
2024年10月にはホンダが商用EV「N-VAN e」を投入した。車両価格は補助金適用前で約270万円から。サクラやeKクロスの上位グレードよりも割安な価格帯となっている。加えて、運転支援機能「ホンダセンシング」を全車標準装備している点も強みだ。
ガラパゴス化した軽自動車市場に、海外勢として唯一参入したのが、当時ダイムラークライスラー傘下にあったスマートである。2001(平成13)年から2004年にかけて販売された「スマートK」は排気量598cc。
・ESP(横滑り防止装置)
・BAS(ブレーキアシスト)
・ヒルスタートアシスト(坂道発進補助)
など、安全機能を標準で搭載していた。当時の販売価格は127万円。ただし、ふたり乗りという制限もあり、実用性には限界があった。
150万円台予想という価格破壊
BYDが日本市場に投入する軽EVの詳細はまだ明かされていない。ただし、2019年に発売された小型EV「e1」が最も近い参考モデルとされる。e1のボディサイズは全長3465mm、全幅1618mm、全高1500mmで、軽自動車の規格よりやや大きい。出力は45kW、航続距離は305kmを誇る。軽規格相当としては十分な性能を持っていた。価格は約6万~8万元(約120万~160万円)とされ、コストパフォーマンスも高かった。
BYDの販売が拡大している背景には、際立ったコスト競争力がある。日本経済新聞の報道によれば、BYDは軽EVの価格を250万円前後に設定し、クラス最安水準を狙っている。e1の実績を踏まえれば、補助金適用後に150万円以下の価格も視野に入る。これはサクラやeKクロスよりも約50万円安く、セカンドカーとしての需要を喚起する強みとなる。
差別化のカギを握るのはバッテリーだ。軽EVユーザーが抱える最大の懸念は、冬場の電費とバッテリーの劣化である。BYDが搭載するブレードバッテリーは、耐久性と安全性で評価が高い。熱安定性やコスト、エネルギー密度にも優れ、250kmを超える実用航続距離が期待される。これは日産サクラの180kmを大きく上回る性能である。
装備面でも高い期待がかかる。BYDは大型液晶ディスプレイや先進運転支援機能を標準装備する傾向が強い。日本の消費者は安全性や内装品質に敏感であり、これらの装備が市場での競争力を左右する可能性がある。
一方で、いくつかの課題も立ちはだかる。まず克服すべきは、中国製品に対する根強いネガティブイメージである。
「安かろう悪かろう」
「安全性が不安」
といった先入観が一部消費者に残っている。BYDは日本市場に参入してまだ2年余り。累計販売台数も約4000台にとどまり、日産サクラや三菱eKには信頼性の面で及ばないのが現状だ。
販売・整備体制の拡充も急務となる。現在、BYDは全国に約60店舗を展開中だが、地方への本格進出はこれからである。地方では軽自動車ユーザーの比率が高く、日本メーカーはすでに広範なネットワークを構築している。初期不具合への対応力や定期点検の体制など、アフターサービスの充実が競争力のカギを握る。
中国製部品が脅かす技術優位性
BYDの軽EV市場参入は、日本の電動車市場全体に刺激を与えるだけでなく、価格競争の引き金にもなり得る。これまで補助金に依存してきた日本メーカーは、価格戦略の見直しを迫られるだろう。
仮に、BYDの軽EVが150万円以下の価格で、航続距離250kmを実現すれば、競争の構図が一変する。とりわけ、
・バッテリーモジュール
・熱管理システム
・インバーター
といった分野で中国製部品の採用が進めば、日本の部品メーカーの競争力が揺らぐ可能性がある。内製主義にこだわってきた日本メーカーは、大きな転換点を迎えることになる。
BYDの動きは、単なる外資による市場参入ではない。日本の自動車産業全体に対する構造的な挑戦ともいえる。航続距離や価格で明確な優位性を打ち出せば、一定のシェア獲得は現実味を帯びる。ただし、ブランド構築やサービス体制が不十分であれば、期待外れに終わるリスクもはらむ。
BYDが日本市場で消費者の選択肢として定着するのか。それとも、価格破壊の使者として一過性で終わるのか。この勝負の行方は、単なるEV市場の競争にとどまらない。日本の自動車産業の構造そのものを揺さぶる可能性がある。
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みんなのコメント
このクラスを日本市場にEV投入したのはかなりやばい。安価で乗るのは短距離、自宅もしくは自社充電できるメリットも大きい。メンテ次第では法人需要はかなり持っていくのでは。
危機感を持たないと家電やスマホ同様やられてしまうよ。