フルモデルチェンジした新しい日産リーフに追加された「NISMO」は痛快なEVだった! 『GQ JAPAN』ライフスタイルエディターのイナガキがリポートする。
所有する満足感を高めてくれる1台──新型日産リーフB7 NISMO試乗記
新型日産リーフB7 NISMOの特徴
1.路面を選ばない安心感
2.数値以上の加速力
3.2WDだからこそ味わえる特権
4.総評
1.路面を選ばない安心感
(前のページから続く)いよいよシステムを起動し、街へと走り出す。ドライブモードは、ベースモデルで設定されている4つのモードのうちの一つである標準の「STANDARD」を選択。アクセルペダルを静かに踏み込むと、1920kgの重量を持つボディがまるで重力から解放されたかのように、無音のまま滑らかに、そして力強く前進を始める。NISMOによる専用チューニングが施されているとはいえ、市街地での振る舞いはジェントルだ。
特筆すべきは、乗り心地の良さ。スプリング、スタビライザーに加え、メンバーブッシュの一部もNISMO専用部品に換装することで、サスペンション全体の剛性が高められ、ステアリング操作に対するレスポンスが向上しているにもかかわらず、不快な突き上げや硬さを感じることはない。その秘密は、エクストレイル NISMOと同様に採用された「スウィングバルブ付きショックアブソーバー」にある。
この特殊なダンパーは、路面からの微小な入力に対してはバルブが素早く反応して減衰力を低く保ち、滑らかに路面を追従。一方で、コーナリング時など車体の傾き(ロール)が発生する初期段階では、減衰力を瞬時に高めて傾きを抑え込む相反する特性を両立しているのだ。結果、荒れたアスファルトの継ぎ目やマンホールの段差を乗り越えても、ショックを吸収し、路面を選ばない安心感のある乗り心地を提供してくれる。
また、このモデルからEV NISMOとして初めて採用されたステアリング裏の「回生ブレーキコントロールパドル」の使い勝手も良い。左側のマイナスパドルを引くと回生力が強まり、右側のプラスパドルを引くと弱まる仕組みで、レベル1からレベル4まで選択可能。街中のストップアンドゴーが続く場面では、パドルを操作して回生レベルを高め(Lv.2〜4)に設定することで、アクセルペダルの操作だけで車速を自在にコントロールし、スポーツドライビングを楽しむことができる特性となっている。
逆に、バイパス道路などで空走感を活かしたい時は、Lv.1に設定すれば、ベースモデルよりもさらに減速力が低減され、内燃機関車のコースティングに近い滑らかな滑空を楽しむことができる。ドライバーの意図に合わせて減速の強さを瞬時に切り替えられる本機能は、EVならではの運転の楽しさを拡張するのだ。
2.数値以上の加速力
少し見通しの良い幹線道路に出たところで、センターコンソールのドライブモードセレクターを操作し、「NISMO」を選択。STANDARD、ECO、NISMOの各モードはそれぞれNISMOのシャシーに合わせた専用チューニングが行われ、一体感を感じられる特性となっているが、中でもSPORTモードは「NISMO」モードとして設定されている。本モードは、モーター駆動ならではの俊敏な応答性を引き出し、力強く伸びのある加速を感じられるよう、特別なチューニングが施されたものだ。
前方にクリアな空間が広がった瞬間に、アクセルペダルを深く踏み込んでみる。その瞬間、かなりのGが身体を襲った。内燃機関のスポーツカーがギアのキックダウンを伴って一呼吸置いてから加速するのとは次元が違う。踏み込んだ瞬間、0.1秒のタイムラグもなく最大トルクの355Nmが前輪に叩きつけられ、1920kgの車体を弾丸のように前方へと射出。最高出力160kW、パワーウェイトレシオ12.0kg/kWの数値以上の加速力だ。しかし、これほどの加速を披露しながらも、車両の大きさや重量を感じさせず、車体がブレることはない。強固なボディ剛性と、空力パーツが生み出すダウンフォースが車体を路面に押さえつけ、矢のように直進していく。
鋭い加速Gの中で、あらためてレカロ製スポーツシートの真価を思い知ることとなった。背中から腰にかけてかなりの力でシートバックに押し付けられるものの、強靭なフレームと適切に配置されたウレタンパッドが圧力を分散し、身体を保持し続けてくれるのだ。滑りにくいスエード調の表皮も相まって、ドライバーは姿勢を崩すことなく、ステアリング操作と前方への視線に集中することができる。
速度が上がるにつれて、車内の静粛性の高さにも気づかされる。風切り音は専用のエアロパーツによって綺麗に整流されているためか少なく、ロードノイズも効果的に遮断されている。静かで滑らかに加速していくため、メーターを見ないと現在の速度を錯覚してしまうほど。この静寂の中での異次元の加速は、EVスポーツならではの魅力に満ちている。
欲を言えば、NISMOモードを選択した時だけでも、フォーミュラEのレーシングマシンのような、ドライバーの気分を高揚させる電子的なサウンド演出機能が備わっていれば、さらにエンターテインメント性が増したのではないかと感じる。
3.2WDだからこそ味わえる特権
日産の電動化技術といえば、前後のモーターを独立して緻密に制御し、四輪で路面を掴む「e-4ORCE」システムが有名であり、高い評価を得ている。しかし、リーフ B7 NISMO RECARO装着車に採用されている駆動方式は、前輪駆動の2WD。強大なトルクを発生するモーターを搭載していながら、フロントタイヤのみで駆動を担う。
しかし、連続するカーブを駆け抜けた時、懸念は完全に払拭された。ステアリングを切り込むと、テーラーフィットが巻かれた硬質なステアリングから、路面の状況がダイレクトに伝わってくる。NISMO専用の剛性アップパーツによって強化されたフロント周りは、ステアリング操作に対する遅れがなく、ドライバーの意図した通りにノーズの向きを鋭く変えていく。
そして、クリッピングポイントからアクセルを踏み込んで立ち上がる場面。ここで前輪駆動のネガティブな要素が出るかと思いきや、見事にトラクションを路面に伝えきっている。これにはふたつの理由がある。ひとつは、日産の高度なモーター制御技術。タイヤがスリップする兆候を検知するや否や、瞬時にトルクを絞り、グリップを回復させる。この制御があまりにも自然で素早いため、ドライバーは介入に気づくことすら難しい。
もうひとつの理由は、あえてe-4ORCEを採用せず、2WDとしたことによる軽さと、フロントの回頭性の良さだ。リアにモーターを背負っていないため、リアがフロントの動きを邪魔することなく、意のままで軽快な身のこなしを実現。コーナーの入り口でフロントにスッと荷重を乗せ、向きを変えたら、モータートルクを使って引っ張っていく。この一連の動作が途絶えることなくシームレスに繋がり、まるで自分の手足の延長のように操ることができる。四輪がレールに乗ったように安定して曲がるe-4ORCEも確かに素晴らしい技術だが、リーフ NISMOが示す、前輪のグリップを感じ取りながらドライバー自身が荷重をコントロールして曲げていくピュアなハンドリングの喜びは、2WDだからこそ味わえる特権だ。e-4ORCEではなくても、いや、2WDだからこそ、これほどまでに走りが魅力的で、奥深いドライビングプレジャーを提供してくれるのかもしれない。
4.総評
試乗を終えてもチリチリと冷えるマフラーの音はないものの、このクルマが発する熱気のようなものは確かに感じ取れる。
¥7,227,000は、決して安いものではない。しかし、このクルマにはその価格を正当化するだけの理由がある。NISMOの知見が詰め込まれた空力パーツがもたらす凄みのあるエクステリアや妥協を許さず作り込まれた、質感の高いインテリアとレカロシート。そして、EVらしい痛快な加速力と、2WDのネガティブを感じさせない高度なシャシーチューニングだ。
やはりリーフ NISMOは環境に優しいエコカーの枠組みを飛び越え、日常の移動をエキサイトメントに変えてくれる「駿足のインテリジェント スポーツクロスオーバー」だ。
内燃機関のスポーツカーが少なくなってきた今、日産が提示した新しい時代のスポーツカーのカタチは、クルマを操る楽しさがこの先も失われないことを証明する。電気自動車に退屈なイメージを抱いているクルマ好きにこそ、ぜひ一度リーフ NISMOのステアリングを握り、体感してほしいと思う。見た目からも優れた走行性能やNISMOならではの走りの魅力を直感的に感じられる、仕上がりであった。
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