現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜ100馬力超の軽自動車ない? 日本企業がエンジン出力で横並びな理由 キャンプブームで潮目変わるか?

ここから本文です

なぜ100馬力超の軽自動車ない? 日本企業がエンジン出力で横並びな理由 キャンプブームで潮目変わるか?

掲載 更新 146
なぜ100馬力超の軽自動車ない? 日本企業がエンジン出力で横並びな理由 キャンプブームで潮目変わるか?

軽自動車が64馬力を超える日はあるか?

 日本独自の自動車規格である「軽自動車」。2024年度にはホンダ「N-BOX」が21万768台の新車販売数を記録しており、軽自動車の人気ぶりが伺えます。さらに、最近ではアメリカに輸出された中古の軽トラックが現地ユーザーから高い評価を得ており、その存在は国外にも広まり始めています。

【自主規制カンケーなし!】84馬力出る「800万円超えの軽自動車」です(写真)

 日本国内のみならず外国でも高い人気を獲得している軽自動車ですが、エンジンの最大出力は最大64馬力で各社統一されています。

 たとえば、前述したN-BOXのパワートレインには、水冷直列3気筒エンジンが搭載されています。グレードにもよりますが、このエンジンのスペックは最大64馬力、最大トルク約10.6kgf-mとなります。

 また、軽自動車区画のスポーツカーとしてダイハツ「コペン」というクルマがあります。スポーツカーと聞くとパワフルな印象がありますが、こちらで採用している水冷直列3気筒エンジンも最大64馬力、最大トルク約9.4kgf-mとなっています。

 とはいえ、軽自動車の最大馬力は法律で制限されているわけではありません。軽自動車の規格を定めている道路運送車両法の施行規則では、軽自動車のサイズは全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下であること、エンジンの排気量は660cc以下にしなければならない旨が明記されています。しかし、逆にいえば、それ以外の規制はありません。

 言ってしまえば、軽自動車の馬力は、あくまでメーカーどうしの自主規制によって成り立っています。なぜ、そのような制限を日本企業のあいだで作ったのでしょうか。背景には、1980年頃に到来した軽自動車ブームがあります。

「自主規制カンケーなし!」な軽自動車の存在

 この時代に登場した軽自動車といえば、スズキ「アルト」(1979年発売)やダイハツ「ミラ」(1980年発売)が挙げられます。これらに追随するかのように、他メーカーも独創的な軽自動車をいくつも発表。それにあわせて高性能化も進みました。

 しかし、その際に懸念されたのが交通事故です。特に1980年代は自動車交通の発達に交通事故を抑制するための施策が間に合わず、1975年をピークに減少していた死傷者数が再び増加し始めていました。

 こうした背景もあって、当時最もハイパワーだった軽自動車であるスズキ「アルトワークス」(1987年発売)の64馬力を上限として、軽自動車の馬力は自主規制されることになりました。

 ただし、これはあくまで国産車メーカーの取り組みとなります。たとえばイギリスのケーターハムが製造する「セブン170」は日本の軽自動車規格に合致しており、実際に登録も可能ですが、エンジン出力は最大85馬力です。

 現代であれば、軽自動車のエンジンで64馬力以上を発揮するのもさほど難しくないでしょう。しかし国産車メーカーのあいだに、この自主規制をやめようという動きはほとんど見受けられません。その理由は、64馬力で十分実用的だからでしょう。

 多くの軽自動車は、高速道路を使った長距離移動ではなく、近場を走り回る「日常の足」としての役割がメインになっていることが多いです。荷物を多く載せて走行する場合であっても、街乗りならば64馬力で事足ります。

 さらに排ガス規制や燃料費高騰が叫ばれる昨今では、下手に出力を上げて、燃料効率を下げることは、メーカー側もユーザー側も望みません。つまり、特に出力を上げる必要性がないのです。

 最近では日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」といった軽自動車規格のBEV(バッテリー電気自動車)も登場していますが、これらの最大出力も64馬力に制限されています。

出力64馬力では厳しい車種あります

 ただし、軽自動車の自主規制が半永久的に続くとも限りません。最近の軽自動車の売れ筋は、背の高いトールワゴン系のモデルです。車体が大きくなるのに比例して、その車体重量も1t近くになってきています。

 前述したアルトやミラといった1980年代の軽自動車が700kg(0.7t)程度だったことを考えると、ユーザーとしても64馬力で足りないと感じる場面は当時より増えているでしょう。

 また、最近では軽自動車を改造してキャンピングカーにする事例が増加しています。これら軽キャンピングカーの価格は500万円前後。普通の家庭でも手を出しやすく、人気を集めています。

 しかしキャンピングカーに改造すれば、車重はさらに重くなり、走りにも影響が出ます。実際、キャンピングカーイベントで筆者が取材していると、出展者から「走りを不安視するユーザーは多い」という話を耳にすることがあります。ゆえに、中には実際にエンジンを強化して走行性能を高めているキャンピングカーメーカーもありました。

 このように、軽自動車の馬力増加が望まれる場面も一定程度存在するのが事実です。まだまだ64馬力に留めるメリットは大きいのだろうと推察されるものの、実用性などを総合的に鑑みて、今後この自主規制を取りやめるメーカーが出てくる可能性は捨てきれないと言えるでしょう。

文:乗りものニュース 鈴木伊玖馬(乗りもの好きライター)
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

ハイエース牙城は崩れず!? 新商用バン「PV5」上陸で見えた“棲み分けこそ現実解”その意味「価格・積載・コスト」で比べてみた!
ハイエース牙城は崩れず!? 新商用バン「PV5」上陸で見えた“棲み分けこそ現実解”その意味「価格・積載・コスト」で比べてみた!
乗りものニュース
「可愛い顔して、中身はきっちりスポーツカー‼」バブル景気の真っ最中に登場した本格派軽スポーツ
「可愛い顔して、中身はきっちりスポーツカー‼」バブル景気の真っ最中に登場した本格派軽スポーツ
月刊自家用車WEB
ロイター「日本にとって警鐘」…BYDが新型軽EV『ラッコ』をジャパンモビリティショー2025で公開
ロイター「日本にとって警鐘」…BYDが新型軽EV『ラッコ』をジャパンモビリティショー2025で公開
レスポンス
約131万円で7人乗りの「“ちいさい”ミニバン」! ダイハツの軽商用車「アトレーワゴン」から派生したトヨタ「スパーキー」はどんなモデル? 実際の使い勝手は?
約131万円で7人乗りの「“ちいさい”ミニバン」! ダイハツの軽商用車「アトレーワゴン」から派生したトヨタ「スパーキー」はどんなモデル? 実際の使い勝手は?
くるまのニュース
【5代目プレリュード、カプチーノ、初代コペンなど】価格が上がる前に手に入れておきたい国産中古車10選(後編)
【5代目プレリュード、カプチーノ、初代コペンなど】価格が上がる前に手に入れておきたい国産中古車10選(後編)
AUTOCAR JAPAN
ダイハツの「“大きな”コペン」は2種類あった! 幻の「コペンZZ」と市販化が期待された「ビジョンコペン」 その夢の行方とは?
ダイハツの「“大きな”コペン」は2種類あった! 幻の「コペンZZ」と市販化が期待された「ビジョンコペン」 その夢の行方とは?
くるまのニュース
【試乗】ホンダN-ONE e:は「軽EVの理想形」! 300km近い航続距離も取りまわしも装備も納得のデキだった
【試乗】ホンダN-ONE e:は「軽EVの理想形」! 300km近い航続距離も取りまわしも装備も納得のデキだった
WEB CARTOP
日産が新型「車中泊できる軽バン」発売へ! 荷室アレンジ“無限級” これが「動く部屋」の実力か
日産が新型「車中泊できる軽バン」発売へ! 荷室アレンジ“無限級” これが「動く部屋」の実力か
乗りものニュース
“F”ならではの魅力──新型ホンダCB1000F試乗記
“F”ならではの魅力──新型ホンダCB1000F試乗記
GQ JAPAN
原チャリ界の「スーパー戦隊」!?  ホンダの元祖「ビート」 世界初てんこ盛りで、どうにもスベっちゃったワケ
原チャリ界の「スーパー戦隊」!? ホンダの元祖「ビート」 世界初てんこ盛りで、どうにもスベっちゃったワケ
乗りものニュース
値上がり必至!セリカ、カリーナED、ジェミニ、トゥデイ、1985年に発売された昭和の名車たち
値上がり必至!セリカ、カリーナED、ジェミニ、トゥデイ、1985年に発売された昭和の名車たち
@DIME
走り屋たちの夢の跡 オレたちのクルマ、今昔物語。 ~前編~
走り屋たちの夢の跡 オレたちのクルマ、今昔物語。 ~前編~
グーネット
2005年から見たら信じられない!? 20年の進歩ってスゲー! びっくり仰天する2025年のクルマ社会!
2005年から見たら信じられない!? 20年の進歩ってスゲー! びっくり仰天する2025年のクルマ社会!
ベストカーWeb
【中古車バイヤーズガイド】これらの12台は本当に長持ちする!そのうちの4台は日本車だ!
【中古車バイヤーズガイド】これらの12台は本当に長持ちする!そのうちの4台は日本車だ!
AutoBild Japan
日産 パルサーGTI-Rが「悲劇のWRCラリーマシン」と呼ばれた理由【愛すべき日本の珍車と珍技術】
日産 パルサーGTI-Rが「悲劇のWRCラリーマシン」と呼ばれた理由【愛すべき日本の珍車と珍技術】
ベストカーWeb
こ、これが「スクーター」だというのか!? 常識をバッサリ捨て去ったスズキの「類を見ない原チャリ」ストリートマジックのスゴさ
こ、これが「スクーター」だというのか!? 常識をバッサリ捨て去ったスズキの「類を見ない原チャリ」ストリートマジックのスゴさ
乗りものニュース
新型「軽ワゴン」世界初公開に大反響! “26年度”発売に「ぜひ試乗してみたい」の声多数! “めちゃ広ッ車内”のカクカクボディ”&「両側スライドドア」採用! BYD「ラッコ」に熱視線!
新型「軽ワゴン」世界初公開に大反響! “26年度”発売に「ぜひ試乗してみたい」の声多数! “めちゃ広ッ車内”のカクカクボディ”&「両側スライドドア」採用! BYD「ラッコ」に熱視線!
くるまのニュース
名車の裏に文化あり! 時代を彩ったクルマとこれからと
名車の裏に文化あり! 時代を彩ったクルマとこれからと
グーネット

みんなのコメント

146件
  • map********
    自主規制とは言いながら
    そこには多大なオカミのご意向があると思っていますよ
  • aki********
    自主規制の64馬力を撤廃したらお国は税金とか保険料上げるよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

173 . 9万円 203 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0 . 0万円 377 . 4万円

中古車を検索
ホンダ N-BOXの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

173 . 9万円 203 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0 . 0万円 377 . 4万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村