技術の進化で変化したデザイントレンド
これまでにボディ形状はもとより、ディテールに至るまで数々のデザインアイディアが生み出され、市場に送り出されてきた。それが、誰もが「いいね」と思えて、販売拡大に結びつきそうなものならライバルメーカーも含め、臆面もなく多くのメーカーが追随。アッという間に世界中に拡散した。
バラ文字エンブレムに一文字テール……人気の自動車デザインは誰が生み出した? カーデザイントレンド今昔【前編】
一瞬パッと輝いて消え去った流行から長きに渡って採用され続けている定番まで、デザイントレンドはどのメーカーによって生み出され、どのように根づいたのかを紐解いていく企画の第2弾をお届けしよう。
目力強めな細目ヘッドライトは小さくても明るいLEDがあればこそ
かつてヘッドライトの形状は丸目や四角目など画一的なものばかりだったが、これはデザインというよりも法規によるもので、各社横並びだったのもそのため。
1980年代に入るとハロゲン電球を用いた異型ヘッドライトが主流となって形状の多様化が進み、1990 年代に近くなるとさらにバリエーションが増える。それが1987年の日産のR31型スカイラインに採用されたプロジェクタータイプ(世界初)と、1989年のホンダ・アコードなどに採用されたリフレクタータイプだ。
いずれも2000年を超えたあたりから爆発的に普及。プロジェクターは丸い凸レンズで光量を増幅するため小型化が可能。リフレクターは表面のレンズで配光を行わないため大胆な異型も容易にデザインしやすく、ここから”ツリ目”化と”細目”化が一気に進む。たとえばエスティマで2000年と2006年の各新型を見比べると、ヘッドライトはどんどん細く、切れ上がっているのがわかる。
近年はツリ目が減少傾向にある一方、細目化はより進み、どれがヘッドライトかわからないほど。これはLED電球によるところが大きく、省スペースのLEDであればバンパーとボンネットの隙間がヘッドライトだったり、グリルとの一体化、デイライトとつなげて左右を一直線化したり……ほぼ設置場所を選ばない。
小さくても十分な光量が確保できるLEDがなければ、現在のスタイリッシュな細目ヘッドライトは成立していないはずだ。
採用車種は減少傾向なオシャレに流れるシーケンシャルフラッシャー
シーケンシャルウインカーとは、単純に電球が点滅するのではなく、外側に向かって光が流れるタイプ。日本車での採用は1968年に510型ブルーバードにクーペが追加された際の”ハミングウインカー”が最初。海外では1965年のフォード・マスタングが初なので、先進的な装備だった。
その後、電球を使うことによる構造の複雑化や、法的な問題もあって消滅。復活は2014年のアウディA4からで、世界基準に適合させる形で日本でも合法となり、2016年のトヨタC-HRで初リバイバル。クラウンやアルファード、レクサス/トヨタの高級車を中心に広がりを見せた。
その背景にはLEDの普及があり、クリアな光がシームレスに流れる様子は、それまでにない高級感を感じさせた。法規上はシーケンシャル式でも1分間に60回以上点滅させなければならないため光の移動速度は速く、これがまた”流れる”感をアピールする。
その後も軽自動車でN-BOXに初採用されるなどしたが、最近はレクサスなどで採用車種が減る傾向。理由はライトの構造が複雑化して流れるウインカーを表示するスペース(=長さ)を確保しにくくなってきた点が大きいようだ。とりわけデイライトと共用するダブルファンクション化が衰退に拍車をかけている。
当時の”カーキチ”が切望した昭和53年以前のご禁制品ドアミラー
左右斜め後方を確認するためのサイドミラーはドアミラーが常識。しかし時代を遡ればフェンダーミラーが当然で、いまとなっては”JPNタクシー”だけに装着されている状況だ。フェンダーミラーが絶滅種になりつつある理由はフェンダーからニョキッとステーが生えた、野暮ったいデザインにほかならない。
ただし、肝心の視界についてはフェンダーミラーのほうが勝り、タクシーやハイヤーでは、ドアミラーだと助手席に客を乗せた際、確認時に大きく横に顔を向けるのは失礼にあたるとされ、これがJPNタクシーにフェンダーミラーが存在する大きな理由となっているという。
もっとも、海外では最初からドアミラーで、ドアミラーが認可されていなかった昭和時代、外車に憧れを持つクルマ好きにとっては垂涎の的。違反覚悟でフェンダーミラーを取り外してドアミラーに変更、その穴をリベットで埋めたクルマも存在した。また、ドアミラーそのものの装着は禁じられていなかったため、フェンダーミラーはそのまま、ドアミラーを追加装着するといった珍妙なクルマまで走っていたほどだった。
ドアミラーの解禁は1983年の日産のパルサーEXAから。いすゞのピアッツァもそれに続いた。次いでハチロク(AE86)がドアミラーを装着してデビューを飾ったのがこの頃だ。
なぜ、日本では長期間、頑なまでにドアミラーを認めこなかったのか? いま考えると謎でしかない。
EVシフトとAI化が今後のクルマのデザインに影響を及ぼす
ストッピングパワーを色で誇示するカラードブレーキキャリパー
国内では1990年代初頭のR32型GT-Rあたりから装着が増え始めたブレーキの対向キャリパー。レーシング マシンのそれを想起させる形状と、大型のサイズはハイパフォーマンスカーの証としてクルマ好きから一躍脚光を浴びることに。
本来高出力に応じたストッピングパワーをもたらす必需品で、飾り立てるものでもないが、そのスペシャル感をアピールするように、従来のブラックに代え、真紅に彩ったブレーキキャリパー(通称・ビッグレッド)を装着したのが、ポルシェが1991年にリリースした964型の911ターボだった。
そのインパクトたるや絶大で、以降、多くの自動車メーカーが追随。レッドをメインに、高性能モデルでは(対向、片押し問わず)ペイントを施したブレーキキャリパーを備えることがトレンドとなり、現在に至っている。
ちなみにレクサスでは、走りの特化版である”Fスポーツ”が、専用のオレンジカラーのブレーキキャリパーを採用。ポルシェではすべての車種で、キャリパーの色を自由に選べるオプションも用意されているという。
スッキリした見た目のコンシールドワイパー世界初採用は7代目クラウン
基本的なワイパーの仕組みは古くから変わらず、まったく違う形状のものを実用化できたらノーベル賞ものと言われるほど。ただし、デザインは変化していて、その代表格が”コンシールドワイパー”だ。アームの取り付け位置を変えることで、それまで正面から丸見えだったワイパーがボンネットの後端、つまりフロントウインドウとの間に隠れるように収まることから、この名称になった。
メリットは見た目がスッキリすること。空気抵抗や風切り音の低減にも効果を発揮する。世界初採用は1983年の7代目クラウンで、前方からまったく見えないフルコンシールドタイプで登場した。ちなみに、ワイパーの上部が見えるタイプは”セミコンシールド”と呼ばれ、これはワイパーの本体サイズが大きく、隠しきれない場合に採用される。最近は、金属製のブレードがゴムと一体した樹脂製ブレードに変わって薄くなっているため、フルコンシールドが主流となっている。
ただし、洗車の際などにワイパーを立てにくいのが難点で、スイッチ操作でワイパーの停止位置を途中で止める必要があるなど、面倒臭さを感じさせることもある。
踏ん張り感を引き立てるデザイン手法のブラックペイントホイール
ここ最近、純正ホイールの色に変化が起こっていることに気づいている人も多いかもしれない。かつて、「精悍な印象を際立たせる」という理由から、スポーツモデルで定番の黒系ホイールが、ミニバンやコンパクトカーといった一般的なモデルにも多く見られるようになっている。
クルマのデザインでは足もとの踏ん張り感がきわめて重要で、それを際立たせるためにタイヤを目立たせるのはオーソドックスなデザイン手法。とくにホイールの色を一般的なシルバーにした場合、タイヤの超偏平化に伴うホイールの大径化もあり、とにかく大きく見え、最近まではタイヤとホイールの大径化は当たり前のように行われていた。
しかし、大径化はコストアップのほか、重量増などによる燃費や乗り心地の悪化を招くのは周知のとおり。ミニバンやコンパクトカーのような実用車では看過できない問題だ。そこで、高偏平タイヤと小径ホイールの組み合わせで足もとの踏ん張り感を引き立たせる目的で考え出されたのが、「タイヤとホイールを同化さ せる」手法。タイヤとホイールを同じ黒色で組み合わせるとボリュームが出て、多少ホイールの径が小さくても目立たなくなるという理屈だ。
それでも黒一色では味気ないということなのだろう。最近では多くの車種で、タイヤとの同化を狙った黒ベースのホイールで、一部に切削(表面の一部を機械で削ってシルバーのアルミ地肌を出す)を加え、デザイン性を高めたものが設定されるようになっている。
デザインに変革もたらすEVシフトとAI化
今後のクルマのデザイントレンドに大きな変化をもたらすものとして、本格化するEVシフトとAI化があるのは間違いない。
ご存知のように、電気モーターで走るEVは従来の内燃機車両のようにエンジンをラジエータで冷却する必要がない。つまり”フロントグリル”も不要になる。
いまあるEVのなかでもグリルを廃し、シンプルな印象のフロントマスクを持つ車種が散見されるが、フロントマスクはクルマにとって最大の見せどころだ。ここになんらかの工夫を加えてデザイン性を追求することは容易に想像がつき、それを誰もが「いい」と思えるものならトレンドになるだろう。
クルマのハードウエアを一変させるとも言われているAI化はどうか?
従来のウインドウやシートなどのレイアウトすら変えてしまう、とも言われており、新しいモビリティのカタチからまた新たなデザイントレンドが生み出される可能性が高い。
いずれにせよ、クルマ好きとしては自動車の画一化が急激に進み、あたかも冷蔵庫や洗濯機といった”白物家電”のように、どれもこれも同じようなデザインにならないことを願うばかりだ。
※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております
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