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【ニッポンの名車】目指したのは感動性能! 4代目スバル・レガシィ

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【ニッポンの名車】目指したのは感動性能! 4代目スバル・レガシィ

 ここまでやるかの軽量化を実施

 デビューしたのは2003年。レガシィは初代から一貫して「どんな路面状況でも安全で快適、そして速く」というグランドツーリングカーとしての思想を追求。初代から14年目の4代目となるBP/BLレガシィではその集大成として、仕様やスペックを超えた「感動性能」の作り込みを目指した。

【元祖ぶつからないクルマ】スバル・アイサイトの進化を追う

 日常のあらゆるシーンで運転が愉しく、運転席に座っているだけでも満足でき、内外装を眺めているだけでも嬉しいクルマ。そして、もちろん最大の魅力は操ることに悦びが得られることを目標に開発されている。

 4代目BP/BLレガシィを名車たらしめる注目ポイントはいくつもあるが、中でも軽量化への取り組みは、今振り返ってみてもすごい。開発部門のみならず、生技、購買、鋼材メーカーを始めとする取引先などすべての関係者が一丸となって1グラムを減らすことに執念を燃やした。この関係者の一致団結っぷりは、現行型インプレッサに採用される新世代プラットフォームの開発でも脚光を浴びたが、SUBARUのクルマづくりの良き伝統のひとつといえる。

 4代目レガシィが開発された2000年代初頭、すでに世界中のどこのクルマも衝突安全性の強化や居住性確保などで重量が増加傾向にあったが、当時のスバルは「機敏でしなやかな走り」を最重視し、他に例のない「対旧型比で最大100kgもの軽量化」を実現した。

 ボディ構造の合理化や高強度ハイテン(590Mpa級高張力鋼板)のテーラードブランク工法の広範囲にわたる採用、局部剛性を上げるための新構造などを用いて、初代レガシィから継承されてきた骨格構造を全面的に見直し、荷重伝達経路の改善をはかっている。

 乗り味や性能に大きな影響を与えるリヤまわりの車体構造については、リヤサスからの入力荷重に対してリンホースメントリヤエプロンを介して広くリヤピラーに力を分散させ、さらに閉断面部材で左右を連結させる構造とし、剛性や強度の大幅な向上と軽量化を両立。同時にロードノイズの大幅な提言も実現している。

 セダンのB4では、車体前方部から片側のフレーム後端を拘束することにより、拘束していない側のリヤサス取り付け部に荷重を入力させた結果、3代目レガシィB4に対して1.2倍の剛性向上を遂げた。

 さらに、操縦安定性の良し悪しに直結するサスペンション取付部の構造も抜本的に見直されている。サスペンション取付部の車体側ボックス断面内にネジと一体化した大型フランジ座面をもつ「大座面一体型パイプナット」を設けて局部変形を抑制。CAE解析では3代目レガシィに対して1.25倍の剛性向上を確認し、振動騒音面では1.5~2倍の剛性向上を確保したという。

 もちろん、軽くて強いだけではスバル車のボディとしては不十分、衝突安全性面でも大幅な向上を遂げている。4代目レガシィでは、なんと車体の補強材を大幅に削減しながら高剛性化を実現している点に注目だ。

 衝突による大荷重エネルギーを吸収する部位と、その反力を支持する部位に高強度ハイテンを用いるとともに、荷重分散構造を追求することで補強材を大幅に削減。衝突強度を上げながら3代目レガシィ比で20%もの軽量化と15%の曲げ剛性向上を達せ出来たというから凄まじい。高強度ハイテンとテーラードブランク工法の採用率は46%にまで引き上げられている。

 高強度ハイテンの採用率を上げると、プレス成型時に亀裂や捻れ、微細なシワが発生するなどの問題を伴うが、試験を徹底的に繰り返すことで問題を解消するのに有効な工法にたどり着く。成型シュミレーションの精度向上にもつながったという。

 ほかにも、前後バンパーまわりやリヤゲート・フードのアルミ化など、慣性モーメントや低重心化に有効な部分の軽量化も果たしている。サンルーフは2・3代目レガシィで好評だったタンデムサンルーフからツインリッド式に変更し、開放感や機能性を高めながら3代目レガシィ比で26%もの大幅軽量化を実現している。ターボ車ではデフのメンバーもアルミ化された。

 ボディ全幅は1.7mをわずかに超えてレガシィ初の3ナンバーボディとなったが、それがあまり気にならなかったのは大幅な軽量化によるところが大きい。

 また、細かいところでは、静粛性向上のための技術を見直したことでも大幅な軽量化がはかられている。3代目レガシィでは30kgにも及ぶ防音材を使っていたが、4代目レガシィでは従来の制振による防音構造から、遮音・吸音型へ発想を転換。制振材を遮音材へ置き換えた。内装部品に防音機能を備えた「吸音インパネ構造」とすることで重い防音材を省いている。

 また、4代目レガシィは「SUBARU最後のサッシュレスドア車」であることでも知られているが、ドアの開閉フィールの向上にも当時の開発担当者は執念を燃やして取り組んだ。

 この時代まで「サッシュレスドア」は合理性とスポーティな外観を両立させるSUBARU車のアイデンティティーのひとつでもあった。ドアそのものは、ドアビーム斜め一本配置やRドアキャッチャ構造の採用、パネルの軽量化、ドアガラスの板厚低減ウインドーレギュレーター&モーターアッセンブリーの小型化などにより、3代目レガシィ比で12%の軽量化を実現しているが、同時に開閉フィールなどの質感も大幅に高めている。

 一番こだわったのは「いかに軽い力で確実にドアが閉められるか」で、ウェザーストリップがたわむ時の反力、ドアヒンジまわりの摩擦力、ラッチのバネ力、ドア全閉直前の車室内圧力上昇による抵抗力など、ドア開閉時に発生する運動エネルギーを最小にすることに苦心した。

 反力を低減させながらシール性を確保した新しいウェザーストリップや、ベンチレーション性能の適正化、ドア重心の後方配置(ウインドーレギュレーター&モーターアッセンブリーなどを後方に移動)による慣性力の活用、摺動部抵抗のミニマム化(ヒンジのブッシュをテフロン化)などにより、軽い力で「コトリ」と閉まるドアの高品質感を達成している。

 ドア開閉時の入力を減らしたことで、窓枠のないサッシュレスドアの宿命ともいえる「ガラスのビレ感」も大幅に低減。ガラスの支持部となる窓肩の剛性を従来比で2倍に高め、ガラススタビライザーの適正化や取り付け部の剛性を上げることで制振効果が高まり、減衰時間を縮めることに成功。ドアサッシュを後方へ移動することでドアガラスを安定化。さらにガラス摺動部やレギュレータなどの可動部のすべてにガタ取りダンパーを追加して、ガラスのガタ吸収や経年劣化によるガタつきを抑えた。

 ほかにもドアハンドル操作荷重を下げてドアハンドルの作動ストロークを適正化したり、ワイヤーケーブルに樹脂コーティングを施して機械的なロスを最小に減らすなどの工夫も施されているが、これらにより、3代目レガシィまでとは明らかに別物感のあるドアの開閉フィールを実現した。

 今ではサッシュレスドアを採用するクルマはほとんど見られなくなってしまったが、4代目レガシィのドアは、長年にわたりサッシュレスドアにこだわってきたSUBARUの集大成。まさに、究極のサッシュレスドアといっても過言ではない。3代目レガシィまでの世代のSUBARU車は、古くなるとドアの開閉フィールに残念感が漂うものだが、4代目BP/BLレガシィは、今でもドアの感触がしっかりしている個体が多いのだ。

 アイサイトの前身ADAやSIドライブなど意欲的な装備も採用

 4代目レガシィといえば、排気系等が全車とも独立等長等爆化され、スロットルも全車電子制御化されたことでSUBARU車の歴史の中では極めて重要なモデルといえるが、搭載されるエンジンの個性がより際立つようになったことも大きな特徴だ。エンジンの搭載位置は前端で22mm、フロントデファレンシャルの位置で10mm下げ、持ち前の低重心をさらに活かしている。

 まず、ターボは2/3代目レガシィで採用された2ステージツインターボから、ツインスクロール・シングルチタンターボに変更。チタンアルミタービン化によりターボシステムだけで15kg、エンジン全体で23kg軽量化している。シリンダーヘッドは駄肉除去と薄肉化、シリンダーブロックは薄肉鋳肌ライナー(鋳鉄製)の採用、ピストンも冠面裏の薄肉化がはかられたなど、EJ20-Rは内部がかなり削ぎ落とされて軽くなった。

 軽量化のみならず、ライナーとシリンダーブロックの密着性も向上。ライナーの真円度も高まり、ピストンの振動が大幅に減少した。さらに、クランクジャーナルのハウジング部には鉄系の高強度合金を鋳込み、ハウジング部の熱膨張によりクリアランスの変化を抑える工夫も施している。そんな改良もあってか、この世代のEJ20はいずれも軽く回るようになった印象が強い。

 さらに、3代目レガシィではDOHCのNAの吸気側のみ採用していた可変バルブタイミング機構のAVCSも採用を拡大し、ターボでは吸排気の両側に採用。これにより実用域のトルクが増し、EJ20ターボは劇的に扱いやすくなった。

 また、4代目レガシィはDOHC版のNAのEJ20が大激変したことでもおおいに注目された。従来の2リッターNAエンジンは中低速トルク重視の実用車向けユニットだったが、中低速トルクを維持したまま大幅な高回転化と高出力化に成功。新形状のインテークマニホールドや、吸気バルブにAVCSを採用するなどしてMT向けは7100回転で190馬力を発生し、NAスポーツユニットとして生まれ変わっている。

 等長等爆化による改良効果がもっとも大きかったのはNAのEJ20で、軽量ボディも相まって、待望のNAスポーツグレード2.0Rが誕生。4代目レガシィは歴代SUBARU車で唯一6気筒エンジンをMTで操れたことも合わせて、「NAでも官能的なスポーツ性を愉しめるレガシィ」としても称えられている。

 全車等長等爆化されたことで排気干渉が低減し、全エンジンとも中低速トルクが向上。各気筒からの燃焼圧力波が均等に干渉することになり、濁り感のない排気音となった。音量が下がったことで騒音面でも劇的な改善が果たされたが、もちろんただ静かにしただけではなく、「新しいボクサーサウンド」作りにもさまざまな取り組みが見られる。

 不等長時代の音を懐かしむ声もいまだ多いが、4代目レガシィでは水平対向エンジン本来の特徴である、こもり音につながる低次基本次数が小さいこと、そして大容量の吸気キャンバー設置された独自のレイアウトを活かした軽快でリニアなサウンドを目指した。とくに強く意識したのは、車内のドライバーに聴かせる音作りである。

 まずは3代目レガシィまでのモデルでの課題であった、サスペンションクロスメンバーの共振は車体の高剛性化によって劇的に解消。エンジンの振動入力点から車内音までの伝達経路の問題点を解消できた。吸気系による音質創成では、とくにNAエンジンで大きな成果をあげている。

 スロットルボディがエンジン房内のほぼ中央にあり、しかも車室内向きに設置されているという、縦置き水平対向エンジンならではのレイアウトを活かし、吸気チャンバーやエアクリーナーをスピーカーとして利用。チャンバー内部のリブの削除や高さの変更、およびチャンバー面の曲率や肉厚変更により狙いの周波数域に合わせるなどして、音質を調律している。

 走り出しの音をスッキリさせるべく、6.8リットルの大型サブマフラーと700mmロングテールマフラーを採用し、100Hz以下の低周波排気音を低減。さらに楽器のようにそれぞれの排気管を共鳴させることで中周波排気音を強調。マフラー流入口の多孔分散器と多孔パテーションの採用により、排気の流れの乱れを抑制した。音質を悪化させる気流音については、排気の流れを微細な流れに分散しながら減速させることによって低減している。

 また、クランク系の打撃音やロードノイズなど、余計なノイズを徹底的に低減させたことでもクリアな音質を目指した。前述した「吸音インパネ」という発想も各種ノイズの低減に大きく寄与。4代目レガシィが出た当初は、従来型ユーザーから「静かになりすぎた」という不満の声も挙がったが、そう感じるほど雑音の類が消え失せている。

 SUBARU初の5速ATが搭載されたことも忘れがたい4代目レガシィのトピックだ。それまでの4速ATは小型軽量で耐久性にも優れた傑作ミッションだったが、上質感と燃費性能を追求するべく5速ATをJATCO社の協力を受けて新開発。

 それまでの概念を捨てたとさえ断言できたほど、当時としては世界トップレベルの軽量化を実現している。開発の初期段階からCAE解析を駆使し、業界トップレベルの肉薄ケースを採用。ギヤと軸系パーツ以外のほとんどにアルミ材を多用し、あらゆるパーツを小型軽量化した。

 さらに変速性能を抜本的に改善するべく、油圧制御は各クラッチごとにクラッチ油圧を直接制御可能なダイレクトクラッチ圧制御方式を採用。様々な入力トルクの変化に瞬時に高精度で対応可能となった。トルクコンバーターのロックアップクラッチ機構は湿式単板から湿式多板化して油圧制御回路を2ウェイから3ウェイに変更したことでも制御の緻密化をはかっている。

 なお、5速AT採用とエンジン出力向上に伴い、VTD-AWDも全面新設計。高張力鋼板や花形脚形状化で強度をアップし、基本となる前後駆動配分は45.7対54.3として安定性を回頭性を両立。トルク感応制御としたことで、天候や路面状況の変化により対応しやすくなっている。

 4代目レガシィは、こうした様々な技術的な革新のほか、CNG(圧縮天然ガス)車やSTIのコンプリートカーが4モデルも設定された(「tuned by sti」が3モデルと「S402」)こと、そして欧州市場ではディーゼルターボ仕様も発売されたことでも話題となった。

 さらには最上級の6気筒モデルではアイサイトの前身システムであるADAが選べたり、後期型ではアイサイトのVer.1やSIドライブが追加設定されたなど、歴代モデルの中でもっとも多くの先進技術が投入されたモデルでもあり、猛烈に内容が濃いレガシィといえる。

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