タイヤの寿命まで性能を落とさないための新素材を取り入れた
カーシェアやライドシェアなど、クルマの所有から使用への転換が進む中で、タイヤに求められる性能も変化している。住友ゴム工業が2019年12月1日(日)に発売するダンロップブランドのフラッグシップ低燃費タイヤ「エナセーブNEXTIII」には、そんな時代を見据えた最新の技術が搭載された。
今回の新製品は住友ゴム工業が2017年に示した次世代技術「スマートタイヤコンセプト」の主要技術を採用した第1弾となり、当初の予定よりも1年前倒しで発表した。報道陣向けの技術説明会も開催され、住友ゴム工業の力の注ぎようが伺える。
新商品には、水素添加ポリマーやセルロースナノファイバーなどの新技術を搭載。低燃費でありながらグリップ性能や耐摩耗性能を高めるだけでなく、性能の持続をも有する「ダンロップ史上かつてない低燃費タイヤ」として世に送り出す。タイヤサイズは195/65R15 91Hと汎用性の高い1サイズのみの展開で、価格は2万5100円(税抜)。
スマートタイヤコンセプトは、タイヤが寿命を迎えるまで新品と変わらない性能を持続させる安全性能と、低燃費で長持ちする環境性能を両立させ、タイヤで交通事故のない世界を目指したタイヤの開発を進めている。
タイヤは摩耗や経年などによって性能が低下していくことが課題だ。性能の変化は亀裂摩耗などの物理的な側面と、経年変化などの科学的な側面、物理と化学の両面が合わさったメカノケミカル変化によって引き起こされる。これまでも性能変化の課題に取り組んできたが、今回はさらに長期にわたって新品時の性能を維持させることや、ゴムのしなやかさによるグリップ性能の向上、経年変化による内部の現象の低減に取り組んだ。
そのため、これまでのタイヤに用いていたポリマーとはまったく異なる「水素添加ポリマー」を用いている。水素添加ポリマーを使用することでゴムがより強固になり、亀裂摩耗に強い構造に進化。これにより、ゴムの切れやすさやしなやかさの継続、摩耗の低減やグリップ性能の維持につながるという。その結果、ウエットグリップ性能の低下を従来の「エナセーブNEXTII」に比べて半減することに成功した。
環境を考えた高機能バイオマス材料をタイヤ製品に世界初採用!
また、同社では商品のライフサイクル全体で環境への負荷を評価し、その低減を目指すための手法や考え方を検討する、ライフサイクルアセスメント(LCA)にも力を入れている。とくに原材料では環境性能の向上が一層求められており、石油外天然資源タイヤの開発などを進めてきた。今回は高機能バイオマス材料の第2弾として、木を構成する繊維をナノレベルまでほぐした、高強度のバイオマス素材セルロースナノファイバーをタイヤ製品に世界で初めて採用。タイヤの回転方向にセルロースナノファイバーを配列している。
これにより、タイヤの周方向には硬く強い性質に、径方向には柔らかさを持たせた。また、タイヤラベリング制度において最高グレード「AAA-a」を達成している。高い環境性能と乗り心地、操縦安定性の両立を目指したタイヤに仕立てられている。
そのほか住友ゴム工業では、タイヤの性能変化を重要視している。性能を調べたり予測したりといった技術を融合した「4D NANO DESIGN」と独自のAI解析技術を組み合わせ、目視では判断が困難なタイヤの内部の状態を解析し、性能の変化箇所や要因を検出することができるようになった。
今後はAI技術を用いて開発工数の削減や新材料の創出につながる「高精度バーチャル性能予測」や、タイヤの使用中の変化も予測していく。タイヤを廃棄する時までユーザーの安全を確保することや、製造とリサイクル面でのLCAコンセプトの達成と、開発で得た知見を生かし、スマートタイヤコンセプトの実現を目指す。
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