絶滅の危機に瀕している、純エンジン搭載のさまざまな輸入車。ならば中古で……と考えると思うが、中古車の相場や流通台数はどうなっているだろうか? ここでは、新車では絶滅した輸入車の絶滅危険度をレッドリストとしてご紹介する。
※本稿は2024年11月のものです
文:伊達軍曹/写真:ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年12月10日号
※中古車相場や流通台数は伊達軍曹調べ(2024年10月下旬現在)
[ベンツ 500E]に190Eに…[名車]の流通量がどんどん少なくなっている件
【画像ギャラリー】ほんの数年前にはけっこうあったのに……ひっそりと消えゆく中古輸入車レッドデータブック(32枚)
■数年前まではぼちぼち流通していた車種も……
こちらは今やほぼ見かけなくなったメルセデスベンツ190E 2.5-16エボリューションII
仮に新車が絶滅したとしても、その車種の中古車が市場で流通しているのであれば、「完全に絶滅した」とは言えません。
ですが中古車市場のほうにも見当たらなくなったとしたら――それはもう完膚なきまでの絶滅であると言えます。その後も博物館や他人が所有しているそれを眺めることはできますが、「自分のクルマ」として所有することはできなくなってしまうわけです。
そして最近の中古車市場では、数年前までは「少ないが、まあまあの数は流通している」という状態だったモデルの数々が、絶滅の危機を迎えています。
ここではスイスに本部を置くIUCN(国際自然保護連合)が行っているカテゴリー分けにならって、絶滅が近い輸入中古車の数々を「深刻な危機」「危機」「危急」の3ランクに分けながら紹介します。
【画像ギャラリー】ほんの数年前にはけっこうあったのに……ひっそりと消えゆく中古輸入車レッドデータブック(32枚)
■メルセデスベンツ 500E
メルセデスベンツ 500E
W124のコンパクトなボディに最高出力325psの5L、V8DOHCを搭載した怪物セダン。一時はかなりの台数が中程度の価格で流通していましたが、近年の生息数は少なめで、長く飼うための“飼育費”も高額が必要な状況になっています。
●流通台数:約15台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約700万~1500万円
【画像ギャラリー】ほんの数年前にはけっこうあったのに……ひっそりと消えゆく中古輸入車レッドデータブック(32枚)
■メルセデスベンツ 190E
当時のSクラスとおおむね同等の品質を、小さなセダンボディのなかに詰め込んだ「小さな高級車」。一般的なグレードはそれでも20台以上が流通していますが、コスワース製のDOHCヘッドを搭載した190E 2.3-16や2.5-16などの「16V系」は、今やわずか5台程度。かなり高めの絶滅リスクに直面しています。
●流通台数:約30台
●絶滅懸念度:危急
●中古車相場:約150万~450万円
■スマート ロードスター
専用プラットフォームに全長3430×全幅1615×全高1205mmの軽量ボディと、最高出力82psの0.7L直3ターボを載せた、超コンパクトなライトウェイトスポーツ。ホンダS660の登場後もマニア御用達物件として一部で人気を博していましたが、直近は全国で10台程度のみになってしまいました。
●流通台数:約11台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約111万~150万円
【画像ギャラリー】ほんの数年前にはけっこうあったのに……ひっそりと消えゆく中古輸入車レッドデータブック(32枚)
■BMW M5(E60)
BMW M5(E60)
F1の技術をフィードバックした最高出力507psのV10エンジンを搭載。羊の皮を被った狼的存在としてハイパフォーマンスなドイツ車を愛する層からの人気を博しましたが、昨今は中古車が激減中。しかしまだまだ好条件な中古車は残っています。
●流通台数:約15台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約300万~660万円
■BMW 3シリーズ(E30)
1980年代後半の現役時代は「六本木カローラ」などと揶揄されましたが、近年はそのクラシカルなビジュアルとサイズ感が再評価され「シブい一台」というポジションに。
しかし現在、中古車は深刻な絶滅危機に直面しており、直近の流通台数はわずか3台。「いつか買おう」と思っていても、その「いつか」は来ない可能性大です。
●流通台数:約3台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約220万~240万円
■BMW M3クーペ(E36)
日本では1993年から2000年まで販売されたE36(3代目3シリーズ)ベースのM3。何年か前までは「3Lの前期型(M3B)と3.2Lの後期型(M3C)のどちらにしよう?」なんて会話もできましたが、今や中古車の流通台数は片手で数えられるほど。深刻な絶滅危機です。
●流通台数:約5台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約240万~600万円
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■ケータハム スーパーセブン160
ケータハム スーパーセブン160
スズキの軽用ターボエンジン「K6A」を搭載した「軽登録で乗れるセブン」として2014年に登場。もともと台数が少なかったこともあり、直近の流通台数は3台。後継の「スーパーセブン170」も、7台ほどしか流通していません。
●流通台数:約3台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約640万~880万円
■フォルクスワーゲン コラード
1988年に登場した自称「フォルクスワーゲン初のリアルスポーツ」。実際はゴルフIIと基本部分を共用する3ドアクーペですが、デザインとたたずまい、そしてスーパーチャージャーを採用したエンジンなどは魅力的でした。しかし今や2台しか流通していません。
●流通台数:約2台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約450万~490万円
■デイムラー ダブルシックス
1960年代に誕生し1990年代初頭まで作り続けられた5.3L・V12エンジン搭載の高級サルーン。厳かな乗り味とたたずまいは誰もが憧れるところで、整備は大変ですが人生一度は所有してみたいものです。数は少なめですが、まだ買えます。
●流通台数:約17台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約220万~630万円
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■サーブ 900(初代)
サーブ 900(初代)
バブル期に鮮烈な印象を残し、最近では映画『ドライブ・マイ・カー』にも登場して話題となった北欧の一台。中古車は深刻な絶滅危機にありますが、サーブ車を直してくれる工場も一部あり、一度しっかり直せば、その後は意外と普通に乗れる場合が多いものです。
●流通台数:約4台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約300万~500万円
■プジョー 205
バブル期から1990年代前半にかけて「おしゃれなフレンチホットハッチ」として一世を風靡した一台。GTIのエンジンは前期型が1.6Lで後期型が1.9L。本当は1.6Lのほうが軽快でおすすめですが、近年はそんな贅沢を言う暇もなく順調に絶滅傾向です。
●流通台数:約5台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約180万~400万円
■ルノー ルーテシアR.S.(先々代)
3代目ルーテシアに最高出力197psの高性能エンジンを搭載して2009年10月に上陸。しかし法規対応の関係で2010年8月には早くも廃番となってしまった不運の短命モデル。それでも中古車としては普通に買えましたが、最近はやや危機的な状況です。
●流通台数:約8台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約80万~270万円
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■アルファロメオ 147GTA
アルファロメオ 147GTA
小ぶりなアルファロメオ147に最高出力250psの3.2L・V6を搭載して登場。フロントヘビーなためハンドリングが秀逸ということもないのですが、V6エンジンのフィーリングと咆哮は最高でした。台数が減っていますので、買うならお早めに。
●流通台数:約10台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約130万~280万円
■アルファロメオ GTV
基本的には3Lまたは3.2Lのアルファロメオ純血V6を搭載した2+2クーペ。小回りは笑えるほど利きませんが、内外装の雰囲気とエンジンフィールのよさは最高レベル。流通台数は減少傾向が続いていましたが、ここへ来てやや深刻な危機を迎えています。
●流通台数:約8台
●絶滅懸念度:危機
●中古車相場:約120万~270万円
■フィアット ムルティプラ(前期型)
「世界一醜いクルマ」に選出されたこともあるMPV。しかし前期型のデザインは慣れると(?)秀逸にも感じられ、少なくともハンドリングは極めて秀逸。ラテン車専門店においては絶滅することはないと思われますが、全体としては危機的状況です。
●流通台数:約6台
●絶滅懸念度:深刻な危機
●中古車相場:約80万~260万円
* * *
ここでは流通台数が5台程度以下の車種を「深刻な危機」と定義しています。しかし希少な人気車種は専門店とマニアックなユーザーが人知れず保有し続けている場合が多いもの。そのため表面上は絶滅寸前に見えても、実際の総数はそれ以上となり、「完全な絶滅」にはなかなか至らないと推測されます。
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