「ランドクルーザーなら、何年か乗っても損はしない」。そんな同僚の言葉にも背中を押され、ランクルに詳しくないままランドクルーザー250のガソリン車を買った神奈川県在住のAさん(47)。妻と小学生と中学生、ふたりの娘を持つ年収約770万円の会社員だ。納車の日は家族全員で喜んだ。ところが普段使いを始めると、路面から伝わる揺れ、加速時のうなり音が気になり……。ランクル250が悪いクルマだったのか。それとも、選び方が間違っていたのか。Aさんが購入から約1年半で気づいた“実際”を聞いた。
文/写真:ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】写真と一緒におさらい、ランクル250はかっこいいけれど……憧れだけで手を出す前に!! 末弟FJとの共演ショットも公開!(12枚)
Aさんのプロフィール
47歳、神奈川県在住
製造業の法人営業、年収約770万円
小学生と中学生の2人の娘がいる
購入車:ランドクルーザー250 VX、2.7Lガソリン、2024年式
支払総額:約625万円(メーカーオプション、用品、税・諸費用を含む想定)
取材時の走行距離:約1万7000km
前所有車:トヨタ ハリアー 2Lガソリン
「ランクルが好き」ではなく、「なんかカッコいい」から始まった
――もともとランドクルーザーに憧れがあったのでしょうか。
「正直に言うと、全然詳しくありませんでした。250とか、そういう型式の違いもよくわからない。アウトドアはメインの趣味ではないしもっぱらインドア派。もちろんオフロードを走る趣味もありません。ただ250が発表された時に、角ばった形と大きなボディを見て『なんかカッコいいな。これに乗ってみたい』と思ったんです」
――それまで乗っていたハリアーに不満は?
「大きな不満はなかったです。静かで、街中でも高速でも普通に快適でした。でも7年ほど乗っていたので、そろそろ買い替えようと。ランクルなら存在感があるし、子どもたちも喜ぶ。会社の同僚から『ランクルはリセールがいいから、実質的にはそんなに高くない』と言われたのも大きかったですね」
Aさんが選んだのは、2.7Lガソリンエンジンを積むVX。2024年発売時の車両本体価格は545万円だった。ディーゼルVXより85万円安く、短距離の街乗りが多いAさんにはガソリンのほうが向くように思えたという。
「諸費用とオプションを合わせて約625万円ほどでした。前のクルマの売却代と貯金から220万円ほど入れて、残りはローンです。年収770万円でも、子どもが2人いると余裕の買い物ではありません。ただ、売る時にはかなりの値段が残るなら大丈夫だろうと考えました」
納車3日目、娘から「前のクルマのほうが静かだった」
――最初に違和感を持ったのは、どんな場面でしたか。
「納車されて家の近くを走っている時です。細かな段差を越えるたびに、シートや床からブルブルッとした揺れが伝わる。大きな段差では、車体の後ろ側がドン、ドンと動く感じもありました。慣れていないので故障かと思ったほどです」
もちろん、ランクル250の乗り味が粗雑という意味ではない。ラダーフレーム車としてはオンロード性能も望外にいい。ただ、乗用車系プラットフォームを持つハリアーから乗り換えたAさんには、フレーム車と後輪リジッドアクスル、大径タイヤが伝える動きが想像以上に大きく感じられた。
「納車3日目くらいに、後席の娘から『前のクルマのほうが静かだったね』と言われました。妻も『結構揺れるんだね』と。私はせっかく買った手前、『こういうクルマだから』と説明しましたが、自分自身が“こういうクルマ”を理解していなかったんですよね。だから説得しても自分が納得できていなくて」
2.2トン超に163PS 高速道路ではアクセルを踏む時間が増えた
――ガソリン車の走りはどう感じますか。
「街中をゆっくり走るぶんには困りません。発進も滑らかです。ただ、合流や上り坂で加速しようとすると、思ったよりアクセルを踏まないといけない。ギアが下がり、エンジン音が『ウォーン』と大きくなるのに、体感ではスピードがあとから付いてくる感じです」
ガソリンVXは、車両重量2240kgの車体に最高出力163PS、最大トルク246Nmの2.7L自然吸気エンジンと6速ATを組み合わせる。公式のWLTCモード燃費は7.5km/L。数値からも、軽快さや燃費を第一にした乗用SUVとはそもそもの狙いが違う。そこに文句を言われても、と思ってしまうのだが……。
「高速で100km/hを保つこと自体は問題ありません。でも、追い越しや登りでサッと速度を乗せる軽快感はない。ハリアーやRAV4の延長で考えていた私の期待とは違いました。横風の日には車の大きさと高さも意識します。長距離を走ると、以前より疲れる感覚があります」
――燃費はいかがですか。
「メーター表示でだいたい6km/L台です。近所の送迎や買い物が多いと6km/Lを切ることもある。80Lタンクなので、給油すると金額が大きい。買う前から燃費がよくないことは知っていましたが、数字で知ることと、毎月払うことは別でした」
「買値以上」を期待したリセール 提示されたのは540万円台
購入から約1年半。Aさんが売却を意識したのは、点検の待ち時間にディーラーに置いてある展示車を眺めていた時だった。
「ディーラーから帰って軽い気持ちで下取り業者に査定額を聞いたら、512万円と言われたんです。『ランクルなのに?』と思いました。それで本当に低いのか確かめたくなって、別の日に買取店を3社回りました。提示されたのは526万円、539万円、548万円。一番高くても540万円台後半でした。
もちろん普通のクルマなら十分高いのでしょうが、私は600万円台半ば、うまくいけば買った時と同じくらいを期待していました」
Aさんが支払った総額は約625万円。最高査定額の548万円との差は約77万円になる。購入から約1年半、1万7000kmを走ったクルマとして考えれば、決して低すぎる査定ではない。むしろ、2024年発売時の車両本体価格545万円と比べれば、値落ちはほとんどない計算だ。
それでもAさんが「思っていたより低い」と感じたのは、車両本体価格ではなく、税金や登録費用、コーティング、用品まで含めて支払った625万円を基準にしていたからだ。さらに購入当時、周囲から「ランクルなら買値以上で売れることもある」と繰り返し聞き、その例外的なケースを自分にも当てはめていた。
「『リセールがいい』を、私は『損をしない』と勝手に変換していました。車両本体に対して何%残るかと、自分が払った総額との差は別なんですよね。ローンの利息もガソリン代もあります。買った瞬間から値上がりする金融商品みたいに考えたのが間違いでした」
ランクル250が悪いのではない 使わない長所のために我慢していた
――いま、ランクル250をどう評価しますか。
「カッコよさはいまも好きです。運転席からの見晴らしもいいし、荷物はたくさん積める。大雨や雪の日の安心感もあります。たぶん悪路を走る人や、耐久性を重視して長く乗る人には、すごくいいクルマなんだと思います」
トヨタがランクル250に掲げた開発コンセプトは、ランクル300と同じGA-Fプラットフォームを使い、悪路走破性、信頼性、耐久性を中心に据えた本格オフローダーである。
「私が走るのは、ほとんどが娘の送迎、スーパー、ショッピングモール、たまの高速道路です。お分かりのとおりランクルの強みを使う場面がない。それなのに、燃費や大きさ、揺れといった部分は毎日受け止める。そこにやっと気づきました」
――次に選ぶなら、どんなクルマでしょう。
「RAV4です。ランクル250より上とか下とかではなく、うちの使い方ならそのほうが合っています。静かで、もう少し軽快で、妻も運転しやすい。『ランクルを所有している』という満足感より、家族4人が週末に楽に移動できるほうが大事でした」
「ランクルだから」で選ぶ前に、高速道路まで試してほしい
Aさんは、購入そのものを完全に後悔しているわけではないという。一度は乗ってみたかったクルマに乗り、その魅力と、自分の生活とのズレを知ることができたからだ。
「ただ、見た目とリセールの話だけで決めるのは勧めません。SNSやYouTubeなんかでもリセールの話が盛り上がります。買取店とかがまことしやかに「価格が上がる」とか言っているんですけど、これも実は相場を作っているんだなと感じました。
これを鵜呑みしたのが悪かったんです当時は争奪戦で試乗もできない状況でしたので、耳心地のいい話ばかりではなく、しっかりベストカーWebを見ておけばよかったと思います。お世辞ではなく(笑)」
ランドクルーザー250は、乗用SUVを大きく豪華にしたクルマではない。舗装路の外でも人を運び、壊れにくく、長く使えることに価値の中心を置く。その特性が必要な人には代えがたい一台だが、必要でない人にとっては、長所よりも日常のトレードオフが目につくこともある。
「ランクルに興味はないけれど、なんかカッコいいから乗りたい」。その入口自体は悪くない。ただし、カッコよさの向こうにあるクルマの成り立ちまで理解して初めて、後悔のない選択になるのだ。
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