この記事をまとめると
■昔のクルマは燃料の噴射に「キャブレター」という装置を用いていた
夏の移動が「クルマなのに地獄」ってどういうこと!? なんなら歩いたほうがラクまである「真夏の旧車ライフ」
■現在ではキャブレターを使わずにECUによる電子制御で燃料の噴射をコントロールしている
■乗用車向けとしては1980年の後半までにほぼ電子制御に切り替わりキャブは姿を消した
いまでも愛好家が多い「キャブレター」とは
普通にクルマを所有して運転するぶんには、エンジンの燃料噴射機構について考えることはほとんどないでしょうし、その必要もありません。とくに現代のクルマに関しては、面倒な制御はすべてクルマに備わったコンピューター(ECU)がおこなってくれるので、燃料の噴射について考えるのは燃費走行を意識したときくらいでしょうか。
それでもクルマ好きの人の何割かは「キャブレター」という名称を耳にしたことくらいはあるでしょう。いまや市販車に採用されている例はほとんどなくなってしまった往年の装置ですが、その特徴や機構を知ることで、クルマが動く仕組みの一端に触れることが出来ます。
クルマ好きが集まるオフ会などで「キャブ知ってる!」となれば、一目置かれるとともに、よりディープな話題に参加できるかもしれませんよ。
そもそも「キャブレター」とは何ですか?
まず“燃料噴射機構”についてです。クルマのエンジンはガソリンや軽油などの燃料を燃焼させ、そのパワーを回転力に換えることで動いています。その燃料は液体のままでは燃焼(着火)しづらい特性なので、霧状に噴霧して空気(酸素)と混ぜて燃焼室に送ってやる必要があります。その噴霧する機構が燃料噴射機構になります。
現代のクルマの燃料噴射は“インジェクション機構”によっておこなわれています。「インジェクション」とは「液体を注入すること。またはその装置」という意味の言葉です。クルマの場合は燃料を霧状に噴射してエンジンに送るための装置を指します。このインジェクション機構はコンピュータで制御されていて、その状況ごとの最適な量とタイミングで噴射がおこなわれるので、燃料の無駄がなく、ドライバーの扱いやすさも実現できる方式です。
一方で「キャブレター」ですが、こちらはデジタル制御の「インジェクション」に対してアナログ制御の燃料噴射機構になります。
後年になると、始動性の改善や排気ガス規制に対応させるための電気的な補助機構が装備されますが、基本的な噴射機構に関しては、ずっとアナログの構造でおこなわれていました。
機構の原理をごく簡単に解説しておきます。
まず、空中に浮かんだパイプを思い浮かべてください。パイプの真ん中には、液体が入ったタンクに繋がるホースが繋がって、パイプの内側に流れるようになっています。この状態でそのパイプと平行に、右から左に空気を流しますが、その状態ではパイプの内側に液体は流れません。ただ空気が通っていくだけです。
ここで、パイプの真ん中を細くしてみましょう。大げさに例えると砂時計を横に寝かしたようなイメージです。空気や水のような“流体”は、「通路が細くなると速度が増して圧力が低くなる」という特性があります。これを「ベンチュリー効果」といいます。これ以上は論文みたいな解説になってしまうので、「そういうもの」として覚えておいてください。
この細い部分に発生した“負圧(圧力の低い状態)”によって、燃料がパイプの内側に吸い出されるのです。この原理を利用して燃料をパイプ=吸気管に噴霧するのが「キャブレター」というわけです。
キャブレターってどこに付いているどのパーツ?
まだこの説明では「空中に浮かんだクビレのあるパイプ」としかイメージできていないでしょう。具体的にどの部分に付いているパーツなのでしょう? ほとんどのエンジンにおいてキャブレターは上のほうに付いています。燃料を送り込む先がシリンダーヘッドの奥の燃焼室のため、シリンダーヘッドのすぐ横に付いています。
ここでオートバイの姿を思い出してみてもらえるとわかりやすいかと思います。車体真ん中に抱えられたエンジンの上部、シリンダーヘッドのすぐ後ろに付いた、ちょっとゴチャゴチャした装置が「キャブレター」です。
クルマの場合だと、キャブレターよりもエアクリーナーの存在感のほうが大きく、場合によってはその影に隠れて配置されていることもあるので、実際にその存在をしっかり認識したことのある人は少ないかもしれません。
さらには、先述のさまざまな補助デバイスが装着され、作動させるためのロッドやアーム、そして燃料やエアなどのパイプ類が集まっていてかなりゴチャゴチャした印象の部分なので、その本体がどんなカタチをしているかとなると、外したキャブレター単体で見るのでない限りは把握するのは難しいでしょう。
エンジンの構成によってはひとつしか付いていなかったり、気筒数の分だけあったりとさまざまです。乱暴に言ってしまうと、装着数が多いほど多くの吸気を効率よく取り込めるため、高性能なエンジンということになります。
逆にひとつしか付いていないエンジンは実用車向きで、コスト面と扱いやすさに優れています。バンやトラックなどの商用車に後年まで装着されていました。
古臭そうだけどキャブの魅力はどこにあるの?
キャブレターはいつくらいに消えていった?
このキャブレター、だいたいですが、1990~2000年くらいまで一部の商用車が採用し続けていたようですが、いまではほぼ絶滅状態と言って良いでしょう。残念です。全盛期となると1950~1970年代でしょうか。1970年代になるとキャブレターとしては成熟が進んで、ほぼ決定版と言える構造に落ち着いていました(オートバイの世界では、1990年初頭まで開発が続けられます)。
その後、1973年に施行された“排ガス規制”に対応させるためにさまざまな対応デバイスが装着されますが、キャブレターでは性能と排気ガス対策の両立が困難で、乗用車向けとしては1980年の後半までにほぼインジェクションに切り替わっていってしまいました。残念です(2回目)。
それでも、コスト面や、ECUなどの周辺装備が不要な点などがメリットとされる商用車に細々と採用され続けていましたが、先に書いたように2010年くらいにはそれもインジェクションに淘汰されてしまったようです。
ちなみに、世界一売ったバイクとして有名な「ホンダ・スーパーカブ」は、2007年にインジェクションに切り替わりましたが、それまではキャブレターでリッター30キロ以上の超省燃費を実現していました。キャブも捨てたもんではありません。
キャブレターに惚れ込む人がいる? その魅力とは?
時代の流れに淘汰されてしまった「キャブレター」ですが、いまでも一部のマニア層には根強い支持を受けています。曰く、「やっぱりキャブの音が最高なんだよなー」、曰く「自分でいじれるキャブ最高!」といった意見を、旧車ミーティングやオーナーズクラブのオフ会などでちょくちょく耳にします。
筆者も音がいいという意見の賛同者のひとりですが、だいたい同じ仕様のエンジンに付いた同じ口径のキャブレターとインジェクション(※どちらも吸気音がダイレクトなエアクリーナーレス仕様です)で乗り比べてみたところ、なぜかキャブレター車のほうが音が“響く”んです。言葉にするのは難しいのですが、音がハッキリしてとおりがいい印象に加えて、いい意味でノイズが多いというか、複雑な感じがします。日常使いでも「なんか気持ちいい」という感じです。
じつは気になっていていろんな専門家に聞いてみたことがあるんですが、燃料を吸い出すキャブと噴射するインジェクションの違いだとか、複数空いた穴が鳴っているのではないか? などの意見が出ましたが、論理的な決定的解説には至っていないようなんです。少なくとも自分が耳にした範囲では「インジェクションのほうが音がいい」という意見はありませんでした。不思議です。
キャブレターに興味が涌いた人に向けて……
2023年現在、キャブレターを採用するクルマはもとより、部品としてキャブレターを製造するのも難しくなってきているという状況になっているようです。残念です(3回目)。
しかし、旧車は当然として、ドリフトや走行会など競技志向の人たちの間で、新たにインジェクション仕様のエンジンをキャブレター化して楽しむ人たちもポツポツ増えているという話を聞きます。その理由となっているのが、「ただ速く走るだけでなく、気持ちよく走りたい!」という欲求のようです。キャブの音が気持ちいいという前の項の話と繋がりますね。それに加えて、「自分の遊びグルマは自分でいじりたい」というスタイルにベストマッチした結果のようです。
純正部品としてのキャブレターは、部品の調達も今後は難しくなっていくでしょう。しかし、競技向けのキャブレターはまだ新品で入手が可能です。2輪用がほとんどですが、アダプターなどを使って4輪のエンジンにも装着が可能です。エンジン特性に合わせるセッティングパーツも豊富にあるので、実用の問題はありません。ただし、高年式車にキャブレターを装着する場合は、点火の制御や車検の問題などでハードルは高いと思いますので覚悟して挑んでください。
この記事でキャブレターに興味が涌いてくれた人は、試しに動画配信サービスなどでキャブの音を聴いてみてください。そして生の吸気音はその何倍も魅力的なので、心が打たれること請け合いです。
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みんなのコメント
「乗用車向けとしては1980年の後半までにキャブは姿を消した」とありますが、90年代に入ってもまだ残っていましたし、そもそもキャブレターは日本語で「気化器」というように「噴射装置」ではありません。