現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「じゃない方」のフィアット「600」が570万円!「セイチェント」の価値が見直され始めたので買うなら今です

ここから本文です

「じゃない方」のフィアット「600」が570万円!「セイチェント」の価値が見直され始めたので買うなら今です

掲載 4
「じゃない方」のフィアット「600」が570万円!「セイチェント」の価値が見直され始めたので買うなら今です

「チンクじゃない方」のフィアットも、人気が拡大中

日本を含む全世界で大人気を博しているフィアットの2代目「ヌォーヴァ500」系が、近年クラシックカー市場においても高値安定状態となっているのにしたがって、その「姉」にあたる「600」の市場価格もじりじりと上昇。20世紀末ごろのごとく、イタリアの片田舎のジャンクヤードに放置されるような扱いは皆無に等しい状況となっているという。そんな状況にある今、RMサザビーズ欧州本社がサン・モリッツの5つ星ホテル「ケンピンスキー・グランドホテル・デ・バン」にて2023年9月中旬に開催した「St. Moritz 2023」オークションでは、きわめてオリジナル性の高いフィアット600が出品されることになった。

フィアット「600」が447万円!? 実はミケロッティがデザインした「ベルリネッタ モンテローザ」という激レアアイテムでした

イタリアの国民車的存在だったセイチェントとは?

1955年のジュネーヴ・ショーにてデビューしたフィアット600、イタリア人がいうところの「セイチェント」は、第二次大戦前からイタリアのミニマムトランスポーターの役割を一身で担ってきた「トポリーノ」こと500シリーズの後継車。トポリーノの成功を受けて、戦後間もなくフィアット技術陣のトップの地位に就き、のちに自動車史上屈指の巨匠と称されることになるダンテ・ジアコーザ博士と彼の設計チームが「ティーポ100」のコードナンバーとともに開発した、フィアットの新ベーシックカーである。

ジアコーザ博士は、開発当初からFWDを真剣に検討していたといわれるが、当時の等速ジョイントが未だ熟成不足だったこと、あるいはコストが嵩むことなどの理由でこの時には見送られ、RRが採用されることになる。搭載されるエンジンは、このクルマのために新たに設計された水冷直列4気筒OHV 3ベアリング。633ccから24.5psを発生した。

いっぽうフィアットの量産乗用車では初となったモノコックボディは、「カロッツェリア・ギア」の共同オーナーである名スタイリスト、マリオ・フェリーチェ・ボアーノの監修のもと、ジアコーザ博士を含むフィアット社内デザインチームが完成させたもの。大衆車ながら美しいラインで構成され、昨今ではイタリア工業デザイン史上の一大傑作ともいわれているようだ。

ただし、発売当初は商業的に苦戦したのも事実である。それでも、それまで戦後復興を支える足として活躍していた「キャビンスクーター」を高値で下取るなどの販売政策によって、次第にイタリアから欧州のマーケットへと浸透。さらに「ムルティプラ」のような魅力的なバリエーション追加の効果もあって、ようやく人気が爆発することになる。

またスペインの「セアト」、西ドイツ(当時)の「NSUネッカー」など、ボディ形状やエンジンを替えて世界各国でライセンス生産されたばかりでなく、アバルトやジャンニーニなどのレーシングベースとしても大いに活躍したことも特筆すべきトピックだろう。

初期モデルのセイチェントは、767cc/28.5psまでスープアップした「600D」に発展する1960年まで生産が継続される。そして600Dも1970年代まで生きながらえるとともに、最盛期にはイタリア国内で登録される新車の約4割がセイチェントとその派出モデルで占められるなど、イタリア人にとっての国民車的な存在だったのだ。

だから、現在の国際クラシックカーマーケットにおいても、セイチェントの売り物なんて履いて捨てるくらいにある……、なんて時代もたしかにあったのだが、どうやら冒頭でも述べたように、今世紀に入って市況はかなり変容しているようなのだ。

潮目が変わった……? アバルト並みの高価格で落札!

2023年の「St. Moritz」オークションでは、スイス・シュヴィーツ州フライエンバッハに本拠を置く「イセリ・コレクション」から出品された多くのクラシック・フィアットたちが、華やかな高級クラシックカーたちの中にあって異彩を放っていた。

ここでご紹介する「セイチェント」ことフィアット600について、RMサザビーズ欧州本社が公開している公式WEBオークションカタログには、これまでの来歴については記されていないながらも、1959年12月31日にフィアットの故郷トリノにて初登録された個体であることだけは判明しているようだ。

すなわち「D」のつかない初期モデルの600で、直4 OHVエンジンの総排気量は633ccの時代。4速マニュアルのトランスミッションとともに、リアエンドに配置される。

またドアが前開きであるのはもちろん、最初期型と同じくヘッドライトは小径ながら、そのベゼルはメッキされた立派な作りとなっていること、あるいはライトグリーンのボディカラーや、インテリアが2トーン仕立てとなっていることも、600Dに移行する直前の生産モデルであることを示すディテールとして正確に保持されている。

もちろん60年を超える車齢を思えば、レストアが施された経歴があるのは当たり前のことではあるものの、いずれの時期のオーナーが行った修復であるかは明らかになっていないようだ。

くわえて今回のオークション出品に際しては、日本のJAFに相当する「アウトモービレ・クラブ・ディタリア(ACI)」発行の「エストラット・クロノロジコ(車両年譜)」と、オリジナルの「カルタ・ディ・チルコラツィオーネ(車両登録証明書)」が添付されていたとのことである。

この日の競売に向けて、RMサザビーズ欧州本社は出品者であるイセリ・コレクションと協議した結果、1万2000スイスフラン~1万4000スイスフランという、アバルトでもないセイチェントとしてはきわめて順当なエスティメート(推定落札価格)を設定。さらに今回の出品を「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」で行うことを決定した。

そして迎えたオークションでは、「最低落札価格なし」の賭けがみごとにビンゴ。競りにさえ勝てば確実にゲットできることから会場の空気が盛り上がり、終わってみればエスティメート上限を2倍以上も上回る3万4500スイスフラン、日本円に換算すれば約570万円という、ひと頃であればアバルト版セイチェントにも手の届くような高価格で落札されるに至ったのだ。

こうしてみると、前世紀末ごろまでのクラシックカー市場ではチンクエチェントの陰に隠れていた感もあったセイチェントながら、ようやくその歴史的な価値と魅力にスポットライトが当てられるようになったようにも感じられる。

いずれにせよ、チンクエチェントと同じく、イタリアをはじめとする欧州のスペシャリストではパーツのストックも豊富なので、これからも保有しやすいイタリアンクラシックの代表格といえるだろう。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
レッドブル&HRC密着:フロントタイヤへの熱入れを苦手にするRB20。弱点が露呈し初日は2台とも下位に沈む
AUTOSPORT web
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
タイトルに王手のフェルスタッペンが苦戦、ミディアムで17番手「タイヤが機能せず氷の上を走っているよう」/F1第22戦
AUTOSPORT web
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
見かけ倒しでもいいじゃん! ルックスと性能が釣り合わないスポーツモデル5選
ベストカーWeb
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
2025年WEC暫定エントリーリストが発表。ハイパーカーは2社が撤退もLMGT3と同数の18台が参戦
AUTOSPORT web
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
【角田裕毅F1第22戦展望】昨年の反省をもとにセットアップを2種類用意。FP2で「だいたいの方向性は見つかった」
AUTOSPORT web
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
ベストカーWeb
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
勝田貴元、パンクで後退も挽回「まだ諦められない。ファンの声援が力になる」/ラリージャパン デイ2
AUTOSPORT web
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
いよいよ正式発表!? デザイン一新の[新型フォレスター]登場か! トヨタHV搭載でスバル弱点の燃費は向上なるか
ベストカーWeb
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
荒野にポツンと1軒のカフェ!?…25ドルでキャンプサイトを確保。オーストラリアはトレイルも何もかもナメてかかってはいけません!【豪州釣りキャンの旅_10】
Auto Messe Web
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
ローソン初日15番手「路面コンディションに苦労。今日の学習を役立て、トップ10に食い込みたい」/F1第22戦
AUTOSPORT web
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
ボッタス、PUエレメント交換で5グリッド降格が決定。RB勢はエキゾーストを交換/F1第22戦
AUTOSPORT web
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
タナクが王座目指して猛加速。僚機2台はクラッシュ&失速、トヨタに選手権逆転の光明【ラリージャパン デイ2】
AUTOSPORT web
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
燃費と運転体験の両立 フォルクスワーゲン・ゴルフ GTEへ試乗 電気で最長130km走れるHV!
AUTOCAR JAPAN
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
北米の自動車博物館ハシゴ旅! 往年のF1GPカー「ペンスキーPC-1」に出会えて大感激!!…が、展示車両数の多さにすべてを見ることができずに大後悔…
Auto Messe Web
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
角田裕毅 初日10番手「一日のなかで状況を好転させ、方向性を見出した。Q3進出のため調整を続ける」/F1第22戦
AUTOSPORT web
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
イモトアヤコ、600万円超の「“オシャ”ハイエース 」購入! 「車中泊楽しそう」「テンション上がる」反響多数のゴードンミラー「GMLVAN V-01」とは
くるまのニュース
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
日産、英国のゼロ・エミッション義務化に「早急」な対応求める 政府目標は「時代遅れ」と批判
AUTOCAR JAPAN
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
「柏の杜オークション」会場で「パラモトライダー体験走行会」開催! 参加者だけでなくボランティア活動にも興味を持ってもらえた1日でした
Auto Messe Web

みんなのコメント

4件
  • luv********
    セイチェントがベースの600Dムルティプラがかわいいですよ
  • yam********
    初期と言っても57年までの引違い窓でもないしなんで570万もついたんだろ
    Auto Scout24でもprima serieでも15,000ユーロくらいで出てるのに
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村