スーパーGT第4戦富士スピードウェイでのレースはスタート前のグリッドウォークで雨が降り、そこからドライに変わった雨上がりの路面で始まったことでアクシデントや接戦が生まれることになり、結果的に予選2番手の100号車STANLEY HRC PRELUDE-GTが優勝を飾り、ニューマシン、ホンダHRCプレリュードGTに初めての勝利をもたらすことになった。100号車スタンレーのふたりのドライバーからは、この初優勝に向けての並々ならぬ想いがあったことが、レース後の会見で明らかになった。
「昨日ポールポジションを8号車に取られて、やっぱドライバーとしてはやっぱり悔しい思いはあったし、何が何でもこの初優勝は自分たちの手でという思いはかなり強かったですし、昨日、夜中に太田(格之進)選手のコメント見て、火がついた感じがあったので、太田選手に感謝します」と話すのは山本。
今季の8号車ARTAは実質ホンダ/HRC陣営のワークス体制となり、太田格之進は2年ぶりに復帰したスーパーGTで8号車のドライバーとなっていたことから、前日のプレリュードGTの初ポール獲得に「僕たちはHRCの名前を背負っているチーム。やっぱり『何が何でもポール、そして優勝しないといけない』という気持ちを持たないといけないチームだと思っています」と発言していた。
その言葉に、山本は反応することになった。
「太田選手も責任が強いですし、彼もやっぱり波々ならぬ思いを持ってこのスーパーGTに望んでるので、その気持ちにやっぱり負けちゃいけない。でも、HRCの看板を背負っているのは彼だけじゃなくて、牧野も僕も、僕ら以外のホンダのドライバーも背負っているので絶対、自分たちの手で初優勝を取ってやるという気持ちは、なんか昨日の夜からメラメラと湧いていました」
その翌日のレースは結果的にポールの8号車ARTAと、2番手の100号車STANLEY の一騎打ちのような戦いになった。実は2台が選んだタイヤはそれぞれ違っており、わかりやすく表現するなら8号車ARTAはソフトタイヤ、100号車スタンレーはハードタイヤだった。
そして、雨上がりの路面が冷えた状態では8号車に分がある状況だったが、64号車Modulo HRC PRELUDE-GTがスタート直後のマルチクラッシュで宙を舞う大きなアクシデントが発生したことで赤旗中断となり、その間に路面はドライアップしていき、赤旗後のリスタートでは8号車ARTAのメリットは大きく失われた状況だった。山本はそのチャンスを逃さなかった。
「自分たちはハードタイヤだったので雨上がりの路面では温められなくて、ちょっとしんどかったですけど、ドライパッチが見えて乾いた状態であればもう全然温められると思っていた。ハードタイヤだったので、余計に8号車よりもタイヤを温めないといけないなと思っていて、あのセーフティカー中はずっとタイヤを温めていて、もう全てはそこ(1コーナー)にかけて集中してました」と山本。
そして見事、赤旗から再開後リスタートでは1コーナーで8号車ARTAの大津弘樹のスリップから、1コーナー(TGRコーナー)のブレーキングでトップを奪い、大役を果たした。
「彼(大津)は1回目のリスタートのタイミングが結構奥め(ストレート手前)だったので、2回目はたぶん、逆をついて早めにリスタートするだろうなと思っていた。彼はウェービングして僕を惑わそうとしていたと思うのですけど、僕はもうウェービングすることなく彼の動きにリアクションすることだけを考えてずっと後ろでピタっと付いていた。すべてがうまくいく、こういうレースもあるんだなと思いました。抜き切った瞬間はもう、気持ちよかったですね」
その山本のオーバーテイクは、ピットで見守っていた牧野の心にも火をつけることになった。
「レース再開した後、尚貴さんのリスタートを見て、僕もメチャメチャ気合いが入った。あとは自分がやるだけだと思っていた」
8号車のピットタイミングに合わせて8号車の翌周の26周目に100号車スタンレーはピットイン。タイヤは同じくハードを選択し、8号車はソフトと、後半スティントでも選択は分かれた。山本がその理由を話す。
「僕らはタイヤの選択をすごく悩んでいた。みんなは路面温度が下がってくるの見て、ソフト目のタイヤをチョイスしていたみたいですけど、僕らも順頭に行けば路温が下がってくるから下側(ソフト側)を入れたかったのですけど、細かいところでハード側を選んだ方がメリットがあると、インラップのヘアピンを立ち上がったくらいで急に変えてもらった。ですので後半スティントの序盤はたぶん、ぶっちぎれると思っていたのですけど、思わぬアクシデントでレース時間も遅れて、路温はレースの終盤に下がってくるから最後の10周はかなり厳しいだろうなと思っていた」
山本からステアリングを受け継いだ牧野も、その狙いをしっかりと把握していた。
「どっちのタイヤを選ぶか難しい中で、前半の尚貴さんのスティントは結構調子が良さそうだったので同じタイヤで行って、実際、自分のスティントの最初から真ん中ぐらいはすごく調子が良かったのですけど最後、路温が下がってきたタイミングがもうメチャクチャきつくて、ピックアップ(タイヤかすが取れずに表面についてグリップダウンを招く現象)がするし、グリップダウンもすごかったし、なかなかきつくて最後に8号車に詰められた」
結果として、最後はコンマ6秒差で100号車の牧野は逃げ切り、猛追する8号車太田の追撃からトップを守り抜いた。パルクフェルメでマシンを降りた牧野は号泣し、公式映像のインタビューでも涙を流しながら喜びを語った。
「今年本当にスーパーGTもそうですけど、スーパーフォーミュラの方でもうまくいかないことが多くて、特に直近の富士のスーパーフォーミュラでも勝てそうなレースを落としたり、そういうのが続いていた。その中で昨日の予選も2番手で、出し切った予選ではあったのですけど負けてしまった。本当に僕自身で思うこともあったのですけど、なんとかそれを払拭できたというか、優勝できて正直。ホッとしています」
牧野はこのプレリュードGTのシェイクダウンを担当するなど、開発ドライバーとしての想いも当然、人一倍強かった。
「開発のシェイクダウンからマシンに座らせてもらって、1番最初にプレリュードGTをシェイクダウンさせてもらった身からすると、何としても初優勝は取りたいと思っていましたし、初ボールはもちろん取りたかったんですけど、それは取られてしまった。ただ優勝は自分たちの手で取ることができたので、ホント、素直に嬉しいです」
山本もチームメイトの牧野を労るとともに、これまでホンダ/HRCを長年率いてきた立場として、そして同じく開発を務めた身として、プレリュードGTの初優勝を喜んだ。
「最後はコンマ6秒差でしたけど、もうチェッカーで前に出てればそれで全て正解なので、彼が後半辛かったと思いますけど、れまでのマージンを牧野選手がちゃんと頑張って築けていたので、よく粘って帰ってきてくれたなと思います。ホンダとしてトップ3は固められなかったですけど、ワン・ツーで第2戦のリベンジができたというのは、本当にホンダ陣営にとって良かったと思いますし、彼らの努力に多少報いることができたのかなと思いますので、本当に感謝しています」
「自分としてもここ数戦、牧野選手の足引っ張っちゃうようなレースが続いてちょっと自信を失いかけていた部分はあったのですけど、でもやっぱり彼と一緒にまた勝ちたいという思いもあった。ホンダのプライドを背負って僕たちも走っているので、何が何でも今回勝ってやるという思いでスタートから気合入れて行ったので、こういう風にうまくいくレースもあるんだなということで、また頑張れる起爆剤のようなものをもらえたなと思います」
ニューマシン、ホンダHRCプレリュードGTの初優勝で、これまでGRスープラの圧勝で展開してきた2026年のスーパーGTのチャンピオンシップが大きく動き始めた。次の鈴鹿、その後のSUGO、オートポリスはこの富士以上に、プレリュードGTとの相性が良いと予想されるコースだけに、また今回のようなホンダ陣営内のバチバチのトップ争いが見られそうだ。
[オートスポーツweb 2026年08月02日]
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
【ホンダF1折原エンジニア独占インタビュー】オランダGPで投入予定の”スペック2”PUで「普通に戦える位置に行くことが目標」 ドライバビリティが課題に
FIAが語るF1パワーユニット規則変更の舞台裏(2)「現レギュレーションがなければ、2メーカーだけになっていた」
【MotoGP】アレックス・マルケス「愚かで、あってはならないミスだった」表彰台2位のチャンスも失った失敗悔やむ|イギリスGP
“本質から逸脱したGT3”にポルシェ首脳も懸念を表明「プロトタイプのようなマシンは見たくない」
マクラーレン、回転リヤウイングのアイデア乗り遅れに「失望」あったと認める。夏休み明けにようやく実践投入へ
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント