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マクラーレン720S スパイダー試乗。秀逸なデザインに隠された本質的な性能【動画レポート】

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マクラーレン720S スパイダー試乗。秀逸なデザインに隠された本質的な性能【動画レポート】

McLaren 720S Spider

マクラーレン 720S スパイダー

マクラーレン720S スパイダー試乗。秀逸なデザインに隠された本質的な性能【動画レポート】

スーパースポーツの性能にGTの要素を加えた720S スパイダー

これまで数々のスーパースポーツカーに試乗した経験からすれば、マクラーレンほど期待を裏切らない自動車メーカーはないと思う。いや、スポーツカーメーカーと表するのが正しいだろう。2009年に設立され、2011年よりロードカーを送り続けていることでも分かるように、極めて若いブランドである。にも関わらず、ニューモデルを出す度にその完成度に感銘を受けてしまう。職業上、冷静に判断しなければ評価の対象にはならないのはわかっているつもりでも、これほどドライバーとの一体感が得られてしまうと、試すことを目的にしつつも、心底、楽しんでしまう自分に気づくから逆に悩ましくもある。

それこそ、この720S スパイダーは、その好例だ。最近のマクラーレンで言えば600LTに感動したばかりだったが、こちらは軽量&スパルタンな位置づけ。今回の720S スパイダーは、どちらかといえば、スーパースポーツを基本にしつつもGTに通じる性能を持ち合わせているのが特徴。720ps&770Nmという膨大なパワー&トルクを活かしがら高い運動性能を快適に味わうことができる。

しかし、昨今のマクラーレンは、ラインナップの拡充を進めていることもあって、正直にいってしまうと誤解されやすいのは事実。つい先ごろには、マクラーレンGTなる、同社流のグランドツアラーを発表したばかりだから尚さらだ。とはいえ、それを理解したうえで確実に伝えたいのは、この720S スパイダーは、ちょうどいいマクラーレンだということ。即ち、スタイリッシュなリアルスポーツカーを、快適かつ素早く乗れてしまうことに意味がある。さらに言うなら、オーナーのライフスタイルの中でこそ活きる、数少ないミッドシップカーだと言えるだろう。

カーボンモノコックとは思えない乗り心地

そう思わせる理由は、とにかく信じがたいほどの乗り心地を確保している点だ。マクラーレンの特徴でもあるように、基本構造体はカーボンモノコックである。通常、カーボンモノコックを用いたモデルの場合、硬さや振動に悩まされるのが常だったが、マクラーレンは、それを見事に克服しているどころか、ラグジュアリースポーツと言っても問題ないほどの快適性を確保することに成功している。無論、他のマクラーレンも同様のことが言えるのだが、720Sスパイダーは、さらに上質な印象を受ける。

何しろ、このプロアクティブ シャシーコントロールIIと呼ばれるサスペンションシステムは、その働きと効果が明確で、どれだけ攻め込んでもドライバーを不快な思いをさせないように、どの領域でも常に快適だと思わせる。これは昨今、多くのスポーツカーにも言えることなのだが、カーボンモノコックを使用した車両で出来ているところに価値を見いだせる。と同時に、F1やGTマシンのようなレースカーでも展開されているように、超高速域や高い旋回性を実現させるにも、ドライバーへと負担を軽減させることを第一に考えていることから快適性能は必然。そうしたノウハウを余すことなくロードカーに転用し、さらに煮詰めていることを、720S スパイダーに乗ると深く実感する。

スポーツモード以上で発揮する凄まじきパワー感

それでいてハンドリングも優秀だからペースは上がるばかりだ。600LTほどゲインは高くないものの、それでもクイックな部類に入るだろう。しかも、素直に、だ。狙ったラインを描きやすく、舵角とのバランスも取りやすいのはマクラーレンの得意性でもあるが、720S スパイダーの場合、他のマクラーレン車から比べるとトレッド値がワイド化されていることもあって、高い安定感が得られる。もっともこのトレッド値こそ快適性にも貢献しているのだが、こうしたバランスを巧みに使い分けているところこそ、最新マクラーレンの恐るべき点でもある。

パワートレインは、もはや“お馴染みの”と言いたくなる、4リッターV型8気筒ツインターボエンジン「M840T」。スポーツシリーズ(570シリーズや540、600LTなど)に搭載される3.8リッター仕様と比較すると、実に41%のパーツが刷新され、720S スパイダーに相応しく、レスポンスの良いシームレスなフィールが印象に残るが、それでもマクラーレンの流儀に従って、スポーツ及びトラックモードでの高回転域におけるパンチ力は凄まじい。パワー感が漲り、強烈な加速を味わえる。クーペ比で48kgほど重量は増しているとはいえ、それすら消し去るほどの軽快感も得られるから、仕上げ方が実に上手い。

そして、このように、それなりのペースで飛ばせる最大の理由は、当然ブレーキ性能が高いからだ。それこそ、功を奏するのはエアブレーキ。コーナー手前で“ガツン!”とブレーキングするとバックミラーが見なくなるほど、リヤスポイラーがほぼ垂直に迫り上がり、制動距離を最小限に抑える。高速域でアクセルを急激に戻した場合でも、このエアブレーキが機能し、空力バランスを崩さないよう姿勢を維持するから見事というほかない。600LTもそうだったが、最新のマクラーレンは、ポルシェに匹敵するほど“宇宙一効くブレーキ”と言っても差し支えないだろう。そう実感させるほど、ブレーキスタビリティは、恐ろしいほどに高い。

そうした驚異的な一面に感動する一方、ノーマルモードなど普段は控えめな印象を維持するから扱いやすさが際立つ。しかも何度も言って恐縮だが、とにかく乗り心地が良い。スパイダーということもあって、サスペンションのセットアップを、より快適方向に振っているから尚さらだろう。

機能とセンスの良さが際立つエクステリア

そう思うと、このエクステリアデザインは秀逸である。ホホジロザメをモチーフにしたというそのフィニッシュは、捕食動物の獰猛さが機能としてスタイリングされていることに共通項を思わせるだけでなく、ミッドシップカーでありながら、エレガントさを備えていることに、マクラーレンの高いセンスを感じてならない。スパイダーであるにも関わらず、グラスルーフに透過式を採用するなど、粋な演出もたまらない。ましてやコクピット周りにしても、一連のマクラーレンと共通しているように映るものの、一部にレザーを用いるなどして、GT感を演出しているからスパルタンさが抑えられ、逆に好感が持てる。メーターパネルもトラックモードでは折り畳められ、最小限の表示に代わるなど、機能とギミックの融合性にマクラーレンの配慮まで伺える。

そして、この720S スパイダーに乗って思い知らされたのは、実のところ、ほぼライバル不在ということだ。パフォーマンスから判断すれば、真っ向勝負となるのは、ランボルギーニ・アヴェンタドールSだろうが、本音で言わせてもらうと、使用用途の広さとセンスの良さから720Sに軍配があがると断言できる。そのポイントは、日常とサーキットという両極端なシーンでの性能バランス。720Sスパイダーは、オープンボディでもサーキットに耐えうる走りを披露することは確実だ。それほど強靭な一面をもちながらも、快適性を重視しているところに、マクラーレンの哲学が見え隠れする。

REPORT/野口 優(Masaru NOGUCHI)

PHOTO & MOVIE/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)



【SPECIFICATIONS】

マクラーレン 720S スパイダー

ボディサイズ:全長4544 全幅2161 全高1194mm

ホイールベース:2670mm

トレッド:前1674 後1629mm

乾燥重量:1322kg

車両重量:1419kg

エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ

総排気量:3994cc

最高出力:530kW(720ps)/7250rpm

最大トルク:770Nm/5500rpm

トランスミッション:7速DCT

駆動方式:RWD

ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン

サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)

ローター径:前390 後380mm

タイヤサイズ(リム幅):前245/35R19(9J) 後305/30R20(11J)

最高速度:341km/h
0-100km/h加速:2.9秒
0-200km/h加速:7.8秒

0-400m加速:10.3秒

CO2排出量(EU WLTP):276g/km

燃料消費量(EU WTLP 複合):12,2L/100km

車両本体価格:3930万円

※納車および登録が2019年10月以降のため、2019年9月24日現在の情報に基づき消費税10%込みの価格で表示しております

【問い合わせ】

マクラーレン東京 TEL 03-6438-1963

マクラーレン麻布 TEL 03-3446-0555

マクラーレン名古屋 TEL 052-528-5855

マクラーレン大阪 TEL 06-6121-8821

マクラーレン福岡 TEL 092-611-8899

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