4月15日、岡山県の岡山国際サーキットで行われたスーパーGT第1戦の公式予選。GT300クラスは最終的に予選Q1のB組、そしてQ2でトップタイムを記録した蒲生尚弥/篠原拓朗組LEON PYRAMID AMGが開幕ポールポジションを獲得したが、GT500クラス同様、GT300もタイヤメーカーの差が大きく出る予選となった。
今シーズンの開幕戦となった第1戦岡山は、午前の公式練習からウエットコンディション。午後の予選は強い雨の予報が出ており、14時からスタートしたQ1のA組は、予報どおり非常に強い雨のなかでの走行となった。
【動画】2023スーパーGT第1戦岡山 予選日ダイジェスト&オンボード
結果的に開始から9分33秒を過ぎた時点で、セッションはコンディション悪化のため赤旗となり、そのまま終了となるのだが、このA組での上位はこんな顔ぶれだった。
1 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸) 1'43.675 DL
2 K-tunes RC F GT3(高木真一) 1'43.870 DL
3 GAINER TANAX GT-R(富田竜一郎) 1'43.964 DL
4 ANEST IWATA Racing RC F GT3(古谷悠河) 1'44.556 YH
5 apr LC500h GT(小高一斗) 1'44.935 BS
その後予定されていたQ1のB組は、なかなか強い雨が収まらないなかでディレイとなり、14時33分にスタートした。このディレイのおかげもあってか雨は急速に収まり、水量は減っていくことになる。このB組の上位は下記の顔ぶれだ。
1 LEON PYRAMID AMG(篠原拓朗) 1'38.256 BS
2 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(川合孝汰) 1'39.010 BS
3 muta Racing GR86 GT(平良響) 1'39.072 BS
4 RUNUP RIVAUX GT-R(青木孝行) 1'39.919 YH
5 Studie BMW M4(荒聖治) 1'40.097 MI
どちらもトップ3を同一タイヤメーカーが占める結果となった。一方で、A組でトップ3を占めていたダンロップタイヤ勢は、PONOS GAINER GT-R(大草りき)が9番手、Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹)が10番手。スピードあるふたりがドライブしていても、Q1突破はならなかった。そしてその後、GT500のQ1を挟んで行われたGT300のQ2では、こんなトップ5となっている。
1 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥) 1'36.038 BS
2 muta Racing GR86 GT(堤優威) 1'36.749 BS
3 Studie BMW M4(ブルーノ・スペングラー) 1'36.751 MI
4 JLOC Lamborghini GT3(小暮卓史) 1'36.937 YH
5 グッドスマイル 初音ミク AMG(片岡龍也) 1'37.070 YH
Q1のA組から見ると、Q2ではトップタイムで7秒もタイムが上がっている。いかにコンディションが変化したかを裏付ける数字とも言える。そして興味深いのが、上位のタイヤメーカーの顔ぶれが面白いように変わったことだ。
■変わりゆくコンディションに合わせたタイヤの重要性
もちろん、同じタイヤメーカー内でも明暗分かれたチームがある。これは選んだタイヤの種類や、車両との組み合わせもある。B組で2番手だった埼玉トヨペットGB GR Supra GTはQ2では10番手とやや伸び悩んだが、これはタイヤ選択に拠るものだという。
ポールポジションを獲得したLEON PYRAMID AMGの篠原は「僕がQ1で履いたタイヤは雨量の面でも、それしか選択肢がありませんでした。Q2については、蒲生選手が提案したタイヤがうまく発動しなかったら、Q1で僕が履いた種類のタイヤに替えようと思っていたのですが、今回5分間延長したこともあり、うまく機能したと思います」という。
「Q2については蒲生選手とチームの話し合いの結果がバッチリはまりましたね。僕のアウトラップでも良い感触がありましたし、持ち込みが良かったです」
同じメーカー内でもさまざまな種類のタイヤがあり、今回のLEON PYRAMID AMGについては蒲生のアタックに加え、持ち込みのタイヤとチームの判断が優れていたことも、ポール獲得の要因と言える。もちろん天候が読めない決勝も同じことが言えるだろう。「レースはどんな天候になるかは分かりませんが、常にチームと一緒にベストな選択をしてきたいですね」と篠原。
あるヨコハマユーザーのエンジニアは、今回の予選結果について「Q1のA組では、ブリヂストンが発熱しきる前に赤旗になってしまいましたが、あのコンディションではダンロップ、ブリヂストンが良かった。ただダンロップは水量が少なくなったときにレンジが狭かった。一方で、ブリヂストンはダンプコンディションになったときにもう少し落ちるかと思っていたけれど、すごく良かった」と分析した。
そのヨコハマ勢はどうか。グッドスマイル 初音ミク AMGの河野高男エンジニアは、ヨコハマのウエットについては「昨年よりもすごく良くなっている」という。なかでも、今回Q1やQ2で好パフォーマンスを発揮したグッドスマイル 初音ミク AMG、そしてJLOC Lamborghini GT3、7番手に食い込んだANEST IWATA Racing RC F GT3などはコンディション変化にうまく対応したチームだろう。
一方、フロントロウには届かなかったが、ブルーノ・スペングラーのQ2での好走もあり3番手に食い込んだのがStudie BMW M4。実は昨年から雨を待ち望んでいたチームで、ミシュランのウエットが強力なパフォーマンスをもっているのは昨年の第6戦SUGO、そして今回のGT500の結果を見ても明らかだ。
結果的にポールには届かなかったが、「Q1については熱が入るかどうかギリギリのコンディションで、Q2については問題ないコンディションだったと思います」というのは、ミシュランの小田島広明モータースポーツダイレクター。
「もちろんウエットタイヤはピンポイントでタイムだけを狙っていけば、もっと速いチョイスの可能性はあります。ただレースでのチョイスではなくなりますよね。Studie BMW M4で使用しているレインは、レースである程度のスティントを走ってもしっかり走れるものですから」
予選だけを見れば得意不得意、タイムが出る、出ないはあるかもしれないが、決勝レースも見据えなければいけないのがスーパーGTのタイヤの難しさ。今回の予選結果がまったく決勝では変わる可能性もあるだろう。もちろん、路面温度に対してどれだけスピーディーに発動するのか、タイヤが保つのかなど、どう変化するのかはコンディション次第だ。
4月16日の決勝レースでは雨が降り出す予報もあり、どうなるかはまったく予想がつかない。ただ今回の予選での水量とタイム、メーカーの戦力図の変化は、決勝での観戦の一助になるはず。参考として覚えておいてほしいところだ。
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