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【第9回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~オールシーズンタイヤ、進化の歴史~

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【第9回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~オールシーズンタイヤ、進化の歴史~

昔から、あるにはあったけれど……

最近、夢の中に唐突にC8H8とかC4H6、C5H8なんて文字や写真のような分子式が出てきて、ハッとして眼が覚めてしましまうことがあります。もしかしたら病気かもしれません……。

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最近注目を集めているタイヤのひとつに『オールシーズンタイヤ』があります。いまでこそ、一年中使える便利なタイヤとして扱われるようになりましたが、オールシーズンタイヤというのは昔からあったのです。ただし、あまり良い印象ではありませんでした。まあ、『昔』というのは1980年代のことですから、大昔の話ですが。

当時のオールシーズンタイヤといえば、北米で多く標準装着されているタイヤという認識でした。1970年代後半から80年代にかけて、北米ではラジアルタイヤの普及とともに、オールシーズンタイヤが多く標準装着されるようになっていました。

けれども、当時のオールシーズンタイヤは、ドライ路面のグリップが物足りず、氷雪路でもグリップしない(悪い)、サマータイヤとウインタータイヤの悪いところが出てしまったようなタイヤ、そんな感想を持ったのを覚えています。実際、『中途半端』といった評価が優勢だったように思います。

オールシーズンタイヤのイメージがガラリと変わったのは、グッドイヤー『ベクター4シーズンズ』の登場がきっかけでした。『スノーフレークマーク』付きで、それまで期待していなかった冬道性能が格段に向上。しかも、夏場でも普通に舗装路を走ることができることに驚かされました。

きっかけは、ドイツの法改正

オールシーズンタイヤ人気が世界的(欧州と日本ですが)になったきっかけは、2010年のドイツの道路交通規則の改正でした。ドイツ国内で、冬季にウインタータイヤの装着が義務化されたのです。

ドイツ人は法律を守ることを小さい頃からインプリンティングされているので、クルマを1年中走らせるためには、ウインタータイヤの購入はマストとなってしまったわけです。法律を守るドイツ人は、同時に吝嗇(≒合理的)でもあります。できれば余計な出費はしたくない、そんな中で注目を集めたのが、2008年発売のベクター4シーズンズだったのです。オールシーズンタイヤを買えば、夏も冬もこれ1本でOKじゃないか、というわけ。

しかも、欧州(≒ドイツ)では、ウインタータイヤでも高速操縦安定性を重視する傾向が強く、ベクター4シーズンズは、サマータイヤ並の高速操安とウインタータイヤに迫る雪道性能でじわじわと人気を集めました。そして2016年、ベクター4シーズン・ハイブリッドの登場で、本格的にオールシーズンタイヤの地位が確立されたのです。もちろん他のタイヤメーカーも指をくわえて見ているはずはなく、すべてのタイヤメーカーがオールシーズンタイヤ市場に参入した結果、欧州ではオールシーズンタイヤ・バブルともいえるほど爆発的な売れ行きを見せることになりました。

そんなタイヤメーカーの動きもあって、日本市場でもオールシーズンタイヤに注目が集まるようになりました。ただ、日本の冬は世界的に見ても過酷なので、『日本の冬はスタッドレスタイヤ』という認識はなかなか揺らぎませんでした。

とはいえ、新世代となったオールシーズンタイヤの、ちょっとした雪なら安心して走れる雪性能は、非降雪地域のユーザーには十分に魅力的でした。

しかも第2世代、第3世代と進化する過程で、オールシーズンタイヤは若干、雪道寄りに進化していきます。ドライグリップの限界はめったに体験しませんが、雪道のグリップ限界は頻繁に遭遇しますから、これは当然の進化といっていいでしょう。

悶絶レベルの新性能

そして今年、衝撃的なタイヤが登場します。ダンロップのオールシーズンタイヤ『シンクロウェザー』です。

雨をトリガーにコンパウンドが柔軟になり、かつ寒さに対応するゴムの柔軟性を備えているのです。冬性能は、スノーフレークマークよりもさらに厳しい寒さでも性能を発揮する『アイスグリップマーク』を取得。不安なく雪道を走れるくらいの冬道性能を持っています。

実は、このタイヤを理解するには、文系(体育会系?)脳のボクにはハードルが高く、昔読んだタイヤの専門書を読み直したり、ネットで参考になりそうな資料を検索したり、タイヤに使われるポリマー(≒ゴム)の低温特性やその配合などを調べながら、知恵熱が出そうなくらい悶絶しました。で、その結果、分子式が夢にまで出てきたというわけです。

アイスグリップマークは、コンチネンタルのオールシーズンタイヤ『オールシーズンコンタクト2』も取得しており、いよいよオールシーズンタイヤの雪性能戦争が始まる予感。

日本の冬道を考えた時、降雪地域や厳寒地域はスタッドレス一択だと思いますが、それ以外の地域の人にとって、オールシーズンタイヤはさらに魅力的になっているように思います。

もちろん、操縦性に魅力のあるクルマにはやはりサマータイヤを装着したいでしょうし、コンフォート系タイヤも同様だと思います。

また車重が重くて極低速トルクがぶ厚いEVとのマッチングなど、問題は様々あり、すべてのタイヤがオールシーズンにとって代わるようなことは、しばらくの間はないと思います。ですが、日本でもオールシーズンタイヤというカテゴリーが安定しつつあることは、間違いありません。今後の進化に、ますます期待したいです。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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