GMと共同開発も僅か約2年の超短命車! トヨタ ヴォルツが消えた背景【偉大な生産終了車】
2021/01/17 11:05 ベストカーWeb 8
2021/01/17 11:05 ベストカーWeb 8
毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
トヨタ「GRスープラ」がまさかオープンカーに!「スポーツトップ」の市販化も期待したい!?
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はトヨタ ヴォルツ(2002-2004)をご紹介します。
【画像ギャラリー】なにがそんなに悪かったのか?? ギャラリーでトヨタ ヴォルツをじっくり見る
文/伊達軍曹、写真/TOYOTA
■米GMと共同開発 逆輸入車で
トヨタ(シボレー)キャバリエの国内販売不振で学んだトヨタが、企画段階からGMと手を組み、トヨタ主導により開発したクロスオーバーSUV。
だがそれでも不格好だったせいか日本市場ではまったく受けず、わずか1年8カ月で消えていった一台。それが、トヨタ ヴォルツです。
トヨタ ヴォルツは、2002年8月に発売となったトヨタとGMの共同開発車。
当時のカローラをベースとする、SUV/ステーションワゴン/ミニバンの長所を取り入れたクロスオーバーな「新ジャンル」と説明されました。
2002年8月、日本ではネッツ店でスプリンターカリブの後継として販売されたトヨタ ヴォルツ
プレスリリースによれば、メインターゲットは「アクティブなライフスタイルを志向する若者」とのこと。
車両の企画はトヨタとGMが共同で行い、設計と評価はトヨタが担当。生産は、GMとの合弁会社であるカリフォルニアの「NUMMI(New United Motor Manufacturing, Inc.)」で行われました。
北米名は「ポンティアック ヴァイブ」または「トヨタ マトリックス」です。
搭載エンジンは、標準となるのが最高出力132psの1.8L直4DOHCで(※4WDは125ps)、そのほかに同190psのハイチューン版1.8L直4も用意。トランスミッションは4速ATのほか、190psモデルは6MTも選択可能でした。
駆動方式は、190ps仕様はFFのみでしたが、標準エンジン搭載車はビスカスカップリングを用いた4WDモデルもラインナップされました。
走りは「可もなく不可もなく」といったニュアンスでしたが、さすがは米国で企画された車だったからでしょうか、前席と後席居住空間および荷室の広さは十分で、クロスオーバーSUVゆえの高めの最低地上高ゆえに、使いやすく扱いやすい車ではありました。
ヴォルツのインテリア
そんなヴォルツは、というか北米版のヴァイブとマトリックスはまずまず好調なセールスを記録したそうなのですが、日本のヴォルツは箸にも棒にもかからずで、あまり(というかほとんど?)売れませんでした。
そのためトヨタは2004年4月、発売からわずか1年8カ月ほどでとっととヴォルツに見切りをつけ、販売終了としました。
しかし北米のポンティアック ヴァイブは2008年、しぶとく2代目へとフルモデルチェンジを実施。
しかしこちらもGM倒産の煽りを受けてポンティアックブランドが廃止となり、2009年中には廃番となったようです。
■販売期間わずか1年8カ月 ヴォルツ生産終了の背景
キャバリエの反省を活かして(?)、GMの車をただ売るのではなく、企画や設計、生産にもトヨタが積極的に関与したヴォルツが、あっけなく散ってしまった理由。
それは、「逆輸入車にはあまり良いイメージがない」という2002年当時のムードもあったでしょうが、根本的には「デザインがなんだかよくわからなかった」ということに尽きると思われます。
走りの質が前項で述べたとおり「可もなく不可もなく」ぐらいだったとしても、これまた既述のとおり、使い勝手等はなかなか悪くない車でした。
そのため、もう少しデザインがマトモでさえあったなら、ヒット作になったかどうかは微妙ですが、さすがに「1年8カ月でとっとと終了」ということにはならなかったはずです。
リアビュー。9代目カローラなどに採用されていたMCプラットフォームをベースに、エンジン1.8Lの1ZZ-FE型、スポーツツインカムの2ZZ-GE型を搭載。だが販売は思うように伸びなかった
ヴォルツのデザインをどちら様が担当したのか、あいにく筆者は知りませんが、おそらくはアメリカ側の誰かなのでしょう(違っていたらすみません)。
もしもそうだとすると、アメリカの自動車メーカーと日本のメーカーが共同で車を作る場合、そしてそれを日本市場でも積極的に売りたいと考えた場合は、アメリカのデザイナーには(申し訳ないですが)任せないことにするのが絶対の正解です。
というか、正確にはデザイナーの国籍うんぬんではなく「アメリカの一般庶民の好みを優先させてしまってはダメだ」ということです。
その昔、深夜に再放送されていたアメリカの警察ものドラマなどに出てくる「現地の普通の人が普通に乗っている車」のデザインは、はっきり言って日本人には完全に謎です。
もちろん、「あれが好きなんだよ!」という人もいらっしゃるでしょうが、その数は、筆者のこれまでのフィールド調査によれば圧倒的に少数です。
ヴォルツから遡ること1996年から2000年、GMからのOEM供給という形で販売されたキャバリエ。こちらも販売は振るわなかった
走行性能の部分については両者の嗜好は重なる部分も多いはずの両国民ですが、スポーツカー等ではない「実用車のデザイン」に関しては、アメリカン一般人のセンスと、筆者を含むジャパニーズ一般人のセンスの間には三千里ほどの距離があります。なぜかは知りませんが、とにかくそうなのです。
まぁヴォルツの場合はそもそも日本で頑張って売るつもりはさほどなかったのかもしれませんが、いずれにせよトヨタ ヴォルツは、日本では「短期間に廃番になるべくしてなった一台」でした。
■トヨタ ヴォルツ主要諸元
・全長×全幅×全高:4365mm×1775mm×1605mm
・ホイールベース:2600mm
・車重:1270kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1795cc
・最高出力:190ps/7600rpm
・最大トルク:18.4kgm/6800rpm
・燃費:12.2km/L(10・15モード)
・価格:199万8000円(2002年式 Z)
【画像ギャラリー】なにがそんなに悪かったのか?? ギャラリーでトヨタ ヴォルツをじっくり見る
スポーツカーは死なず!! 買うなら最後の機会か 令和に新型となる名スポーツ車カレンダー
消えゆくミニバンの定番装備!? フルフラット&回転対座シートはなぜ廃れたのか
「#ミニの日」で振り返る、クラシックミニの歴史! 派生車種は100種類以上!?
6カ月連続トップ! 売れ筋ヤリスに死角はなしか?
2車揃って好調! ライズとヤリスクロスが売れる理由は?
手の届きやすいEVは中国のだけにあらず! タジマモーターが開発する超小型EVに注目!!
意外なモデルだけどイケてるからイイ! メーカーのイメージと異なる車5選
1980年代にヒットした懐かしの“ハイソカー”5選
日産「S13型 シルビア」を振り返る 美しさと速さを兼ね備えた不朽の名作とは?
北米で発売開始したインフィニティQX55と日本で売れそうなインフィニティ車
【試乗】4代目パジェロはマイナーチェンジで、DI-Dディーゼルを搭載して登場した【10年ひと昔の新車】
本当に出るのか?? そろそろ準備完了か? 今年最大の注目車ランクル300直前情報
トヨタ C-HR 価格差はあるがハイブリッドがおすすめ、グレードはSでも豊富な装備
発表直前、タイカン クロスツーリスモのプロトタイプに緊急試乗。乗り心地や走破性は上回っている
インプレッサ STI スポーツ試乗 STIらしからぬ上質な走りゆえに浮かび上がるCVTのフィール
日産ノートはこのジャンルでベストの1台だが乗り心地と価格は少し気になる
まもなく登場・新型Cクラスに先行試乗。Sクラス並みのデジタル化や快適性重視の走りに期待
マツダ2 設計年次は気になるがライバルを圧倒する内装センスがある
マツダMX-30はハイブリッド車より成熟した走りのEVに魅力あり。大本命は22年登場のPHEVかもしれない
新型911 GT3を一足先に取材。スワンネック形状のウイングを採用した理由とは?
新型「メルセデス・ベンツ Cクラス」世界初公開。近未来的なデジタル装備はまさにベイビーSクラスだ