米国依存の危機と対策
「トランプ関税」の影響で、米国向けの自動車輸出が減少する懸念が強まっている。業界は早急に対策を講じる必要がある。だが、米国市場に過度に依存する体質を改め、他の海外市場に目を向けることが不可欠だ。
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日本の国内市場は少子高齢化により縮小が進む。今後は海外市場で勝負するしかない状況にある。しかし、現時点で日本の議論は海外展開に乏しい。その背景には内向き志向の国民性があると指摘される。
日本は約1億2000万人の人口を持ち、先進的な経済市場として巨大な国内市場を形成している。多くの中小企業はこの市場で事足りてきたため、海外進出の必要性が低かった。国内で技術力を高めた自動車メーカーや電機メーカーは、徐々に海外に目を向けるようになり、日本経済は加工貿易を基盤に成長を続けてきた。
財務省が2025年5月に発表した貿易統計によると、2024年4月から2025年3月の輸出総額は前年同期比5.9%増の108兆9394億円に達した。そのうち米国向けは約2割の21兆6482億円を占める。2023年の対米自動車輸出は5兆8439億円である。
脱米依存の生き残り戦略
トランプ前大統領は、米国の産業構造を変えるため貿易政策を強化した。しかし彼自身も、産業構造の変革には時間がかかると認めている。痛みをともなうが、それを受け入れるよう国民に訴えた。次期大統領が民主党から選ばれても、ラストベルトと呼ばれる重要な地域の票を意識すれば、トランプ関税以前の状況に戻ることは難しいだろう。
米国依存から脱却する必要がある。人口減少で国内市場が縮小するなか、生き残るにはグローバルに製品を販売することが不可欠だ。そのためには米国以外の市場開拓が必須となる。
しかし現状では、日本は米国市場にばかり注目している。確かに、米国に代わる有力な市場はまだ存在しないのが現実だ。しかし、ダメージを最小限に抑えるためには、米国外市場にも視野を広げる必要がある。これは自動車産業をはじめとする日本の製造業を守るうえで重要なリスクヘッジになる。
若者の海外志向低下と影響
なぜ日本企業や国民は、ほかの海外市場に目を向けにくいのか。その一因として、日本人の
「内向き志向」
が挙げられる。たとえば近年問題視される「転勤拒否」の傾向だ。就職支援を手掛けるUZUZが2024年4月に実施した調査によると、「海外で働いてみたいか」という質問に対し、52.7%が「思わない」と回答している。その理由は
「近くに友だちや家族がいる方が安心だから」
「言語や文化の違いに不安がある」
が多い。こうした心理は理解できるが、筆者(武田信晃、ジャーナリスト)は幼少期に何度も転校を経験し、カナダや香港にも住んだ。その経験からいえるのは
「百聞は一見に如かず(何度も聞くよりも、一度自分の目で見た方がよくわかるという意味)」
ということだ。人生100年時代を迎えるが、たとえ合計10年間地元を離れても、人生の10%にすぎない。若いうちに異文化に触れることは視野を大きく広げる。後に必ず役立つ経験となる。
最近のハーバード大学の留学生受け入れ停止問題では、香港がすぐに留学生の受け入れを発表した。一方、日本の文科省は各大学に検討を求める連絡をしたのが香港より4日遅かった。世界トップクラスの人材を受け入れる好機にもかかわらず、日本は「留学生がかわいそう」という同情で終わり、受け入れ推進には至らなかった。こうした内向き文化の背景には、島国特有の閉鎖性に加え、企業文化における
・失敗を許さない減点主義
・品質第一主義の風潮
がある。結果として現場でのミス隠しを助長し、いくつかの自動車メーカーで発覚したデータ改ざん問題にもつながったことは記憶に新しい。
日本車シェア拡大の余地
日本には海外市場で活用できる重要な資産がある。それが環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)だ。米国が離脱し、崩壊の危機に直面したが、日本が主導して枠組みを維持した。さらに、地域的な包括的経済連携(RCEP)にも参加し、自由貿易推進の中心的存在となっている。
CPTPPは自由貿易を目的とした協定だ。車の部品でも完成品でも、加盟国のサプライチェーンを活用したスキームを構築すれば、輸出ダメージを軽減できる。
なお、2023年の米国以外への自動車輸出は、欧州連合(EU)が2兆376億円、アジアが2兆4142億円、ASEANが7389億円、中東が1兆8918億円となっている。
ASEAN諸国では中国メーカーの存在感が増しているが、日本車の強さは圧倒的だ。インドネシアでは日本車のシェアが9割を超えるともいわれており、成長余地は小さい。
一方、CPTPP加盟国であるカナダやメキシコでは、日本車が約4割のシェアを持ち、人気は高い。まだ市場を拡大できる余地がある。トランプ関税によりカナダやメキシコで製造した車を米国に輸出すると関税がかかるため、これらの市場に直接回す戦略が有効だ。
ペルーもCPTPP加盟国で、約4割の日本車シェアを誇る。ここへの輸出強化も有望だ。こうした施策で、カナダ・メキシコ工場の稼働率低下によるダメージを緩和できる。
英国市場も注目に値する。欧米勢が強いが、日本車の浸透も進んでいる。2023年の新車登録ランキングで日産「キャシュカイ」が第2位に入った。日産工場の閉鎖問題はあるものの、日本メーカーが戦略的に臨めば英国市場攻略は可能だと示している。
ただし、CPTPPだけにこだわる必要はない。アフリカ市場も有望だ。日本車は悪路でも壊れにくい信頼性から中古車を含めて総じて高い評価を得ている。
国連貿易開発会議(UNCTAD)が2025年2月に発表した「2024年アフリカ経済開発報告書」によると、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が完全施行されれば、3兆4000億米ドル規模の市場創出が見込まれる。
中国は以前から戦略的にアフリカ諸国との関係を強化している。日本メーカーと政府も、この市場に注力すべきだろう。
中国BEVの脅威と対応策
近年の自動車業界を見ると、欧米メーカーだけでなく、中国勢も安価なバッテリー式電気自動車(BEV)を武器に世界中の市場で日本車に挑んでくると予想される。
中国の技術力が低いと侮ってはいけない。歴史が示すように、見くびると足元をすくわれる。
日本勢はライバルと戦いながら、米国市場の代わりを探すという厳しい状況にある。そのため、どの国にどの車種を振り分けるかを的確に判断することが重要だ。これが日本車の将来を決める。
正しい判断を下すには、外向きの思考を持ち、変化の速い世界に敏感である必要がある。(武田信晃(ジャーナリスト))
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