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【素晴らしき哉、イタリアン!】対談/カーグラフィック「加藤哲也」×モータージャーナリスト「九島辰也」。「アルフィスタ・エディター」と「生粋イタリア好き」の真剣トーク

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【素晴らしき哉、イタリアン!】対談/カーグラフィック「加藤哲也」×モータージャーナリスト「九島辰也」。「アルフィスタ・エディター」と「生粋イタリア好き」の真剣トーク

九島辰也さん(以下九島) 今回は「イタリアは楽しい!」というコンセプトの対談です。加藤さんは自他ともに認めるイタリア通だと認識していますが、イタリアを意識したきっかけは何だったのですか?

加藤哲也さん(以下加藤) ボクは映画が入り口でした。ベルナルド・ベルトルッチというイタリアの監督が好きで、イタリアに目覚めました。中学生のころです。その昔『NOW』という雑誌があって、ボクはその雑誌で大人の男の嗜み、というのかな、さまざまなことを学びました。あるとき、当時一流のファッションカメラマンが、ベルトルッチ監督の『暗殺の森』という作品を絶賛していたのです。それを実際に観て本当に感動しました。作品全体がすごく美的で、テーマも崇高でした。それで一発でベルトルッチを通してイタリアに憧れたのです。ボクの大学の卒論のテーマは、ベルトルッチでした。それほど彼はボクに影響を与えています。CG誌に就職する前はTV制作に携わっていたのですが、それも彼の影響。映像の世界に身を置きたかったのです。本当は映画制作が希望でしたけれど、当時の日本の映画界は元気がなくて。そこでTV制作を選んだのです。

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九島 それでは最初はクルマとは縁がなかったのですか?

加藤 もちろんそんなことはありません。年齢の近いいとこがボクを含めて3人いて、一人が『CG』、ボクは『オートスポーツ』、もう一人が式場荘吉さんが関係していた『カーマガジン』をそれぞれ買って、小学生のころから3人で愛読していました。だからクルマ、そしてモータースポーツには幼少期から詳しかったです。ボクが7歳のときにFISCOで開催された“日本インディ”(1966年)を観戦したのが、初めてのレース体験です。優勝したジャッキー・スチュワートは確かその当時、26歳でした。スピード、音に痺れ、レーシングドライバーになりたいと思ったものです。でも中学、高校で自我に目覚め、「何かを作りたい!」という目的に変わり、それで映像にたどり着きました。クルマは大好きでした。子供のころからフェラーリは特別な存在だと認識していましたし、アルファロメオに惹かれていました。

初めてのイタリア車はアルファスッド・スプリント

九島 加藤さんのイタリア車歴は何からスタートですか?

加藤 初めてのイタリア車は、アルファスッド・スプリントでした。CG誌の売買欄で見つけたクルマで、確か160万円ぐらい。それに乗って、クルマってこんなに違うのかと心底思いました。エンジンは1.3ℓで最高出力は76㎰程度。5速MTはローギアードな設定で、5速のレブリミットで最高速をマークします。ぶん回して乗っているから最高に速い気分を味わえるのです。ハンドリングも素晴らしかったですね。当時のFFの革命児。“下りの狼、上りのブタ”といわれていました。イタリア車への傾倒はそこから本格的になりました。イタリアのスポーツドライビングに目覚めたのです。

九島 それからイタリア車ひと筋ですか?

加藤 スッドに乗っているときにTV制作の現場が変化し、自分が作りたい作品が作れなくなってしまいました。ちょうどその時期にCG誌が編集記者を募集していまして。それでCG誌に入ったのです。そこで、古いクルマも経験しておいたほうがいいかな、と考えてジュリアGTVを買いました。でもレストア前提のクルマで、レース活動も始めたこともあり、結局、動かさないまま手放しています。その後、結婚して子供も生まれたのでシトロンBXを購入。子供が小さいうちは趣味のクルマに乗れないな、と覚悟していました。けれど、ある日、メルセデス190E 2.5-16のEVO2に出会ってしまい、しばらく乗りました。でもやっぱりアルファが忘れられないのです。憧れのジュリアGTAを手に入れました。GTAの前にCG誌の長期テスト車として156や916のGTV系を担当しましたから、アルファは近しい存在でした。ちなみにCG誌に入って、ボクが初めて企画した記事は“アルファ75とジュリア・スーパーのヒストリーを含めた考察”。そう考えると、アルファロメオとの関係は深いですね。

九島 75はアルファロメオ最後のFRといわれたクルマですね。スタイリングはちょっとクセがある。ボクは、75より33のスポーツワゴンのほうが断然カッコいい、と思っていました。

加藤 33は元スッド・オーナーからすると堕落した存在です。ブレーキがインボードではありませんし。アルファロメオは1960年代からDOHCエンジンや5速MTを搭載していました。75ではトランスアクスル方式を採用して重量配分を適正化していましたし、スッドは水平対向エンジンを積むなど、理想主義を貫くブランドです。そこが魅力でした。しかし、155からフィアット傘下に入り、他車と共通のコンポーネントを使うようになってから、事情は変わってきました。

イタリアはいつ行っても新鮮な感動を覚えます

九島 155の時代は懐かしいですね。ボクはその当時携わっていた一般誌で、155と基本メカニズムが共通なランチアのデドラを「アルファよりこっちのほうが注目株」と紹介した覚えがあります。ところで、最初にイタリアに行かれたのはいつごろですか?

加藤 フェラーリ348tbの取材でイタリアに行ったのが最初です。でも強い印象を受けたのはザガートデザインのランチア・ハイエナの取材にひとりで出かけたときでした。街で赤いクルマなんか見かけません。黒やシルバーのクルマばかり。イタリアの男のファッションはコンサバで、赤いクルマ、そしてアルマーニやヴェルサーチはリアルイタリアではないのだと学びました。それでも街のリストランテのレベルは高く。どこでも美味しかったのを覚えています。それから何回イタリアに出かけたかはわかりません。いつ行っても新鮮な感動を覚える国だと感じています。

九島 イタリアはとにかく魅力的ですよね。悪いところもいっぱいありますが、憎めない。アルファロメオも、そんなイメージですね。

加藤 アルファロメオを掘り下げていくと、人間に行き着きます。アルファロメオの誰もが、アルファロメオがどういうブランドであるかを理解しています。中でも1960年代のジュゼッペ・ルラーギという社長が素晴らしかったですね。彼は経営に苦しむアルファを救うため国営の産業復興公社からアルファに送り込まれた人物です。普通ならレース活動なんて真っ先に切り捨てるのが常識的判断ですが、彼は逆に後押ししました。つまり彼もアルファの本質を理解していたということです。アウトデルタは元々名設計者、カルロ・キティを中心に組織されたレース部隊でしたが、これをアルファの子会社として推進したのがルラーギでした。こうして生まれたのがアルファ・ティーポ33やジュリア・スプリンントGTA、TZ2などの名車です。アルファは創立時からレースのために生まれたようなブランドで、ルラーギは民衆がアルファに何を求めているか?を理解していました。

九島 加藤さんは最近ジュリアのクアドリフォリオを購入されたのですよね。どこに惹かれたんですか。

加藤 ボクはいままで自分のクルマとしてアルファはスッド、GTA、4Cと、ひとつの時代を作りブレークスルーしたモデルに乗ってきました。今回のジュリアも同じ。こんなクルマはもう出ないと思うのです。ジョルジョ・プラットフォームは完成度が高いし、エンジンはフェラーリ由来、まさにアルファの傑作だと思います。純粋に乗りたいと思った。アルファロメオはステランティス・グループに入っていますから、ピュアなアルファの最後の作品だと思います。

九島 加藤さんにとってイタリア、そしてイタリア車はどんな存在なのでしょうか?

加藤  ボクがイタリアが好きなのは、少年のときの感動の要素を見出しているからですね。イタリアが日本と似ている点も惹かれます。南の人々は確かに陽気ですが、北の人たちはすごく真面目、人間性を含め日本人に通じています。ボクの場合、大好きなイタリアを日常的に感じられる対象がクルマであり、ブランドでいえばアルファロメオなのです。ボクは「クルマはグローバルな製品だからこそ、ローカルな魅力を持っていなくてはいけない」と思っているのですが、多くのクルマがグローバル化の名のもとに個性を失う中、イタリア車は、明確にイタリアの空気を伝えてくれます。だから素晴らしいのです。

【加藤哲也 プロフィール】

かとう てつや/1959年、東京生まれ。株式会社カーグラフィック代表取締役社長。TV番組制作を経て1985年に『カーグラフィック(CG)』編集部に入社。2000年に編集長に就任。2010年より現職。世界のクルマ事情に精通する。ファッションを含めイタリアへの思いは熱い。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員長

【九島辰也 プロフィール】

くしま たつや/モータージャーナリスト。2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。「Car Ex」副編集長。「American SUV」編集長など自動車専門誌の他、メンズ誌、機内誌、サーフィンやゴルフメディアで編集長を経験。趣味はクラシックカーと四駆カスタム

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