2022年7月1日、シトロエンC3エアクロスSUVにクリーンディーゼル搭載モデルが設定された。今回、取材の機材車として2日間で約400kmを走ることができたので、その印象を紹介しておこう。
外観はガソリン車と変わりなし。差別化も欲しい?
シトロエン SUVの日本市場投入第2弾としてC3エアクロスSUV(以下、C3エアクロス)が導入されたのは、2019年。2021年にはマイナーチェンジで内外装をリファインされ、そして今回、パワートレーンに1.5Lのクリーンディーゼル搭載モデルが追加設定されたというわけだ。試乗したグレードは「シャインパック ブルーHDi」。ガソリン車にも同じグレードがあるが、内外装は基本的に同じだ。クリーンディーゼルを示すエンブレムも装着されていないが、まあ「能ある鷹は爪を隠す」なのかもしれない。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
2021年のマイナーチェンジで、C3エアクロスはより「SUVらしく」なった。マイチェン前は車名が示すようにC3のイメージが強いクロスオーバー的なモデルといった感じだったが、ヘッドランプとダブルシェブロンをつなぐクロームラインやスキッドプレート風のバンパーなどで、かなり精悍な顔つきになった。
2016年に発表された現行型C3以降の新世代シトロエンは、フロントマスクなど独特のデザインが特徴的だが、見慣れてくるとこれはこれで悪くないかなと思う。むしろ、パッと見にはどこの国のどこのメーカーのクルマか分からないモデルも増えてきた昨今、アイデンティティはハッキリしているし、気に入ってしまう人も多いのではないだろうか。何度も使われてきているフレーズだけど、「デザインに良い悪いはない。好きか嫌いか、だけだ」なのだから。
インテリアも基本デザインこそ変わっていないが、クラス最高レベルの乗り心地と座り心地を提供するというアドバンストコンフォートシートを採用。インパネにはシート生地と同じ霜降りグレーのファブリックを貼り込み、シックで現代的な雰囲気を醸し出している。と、このあたりは前述のようにガソリン車と変わらない。
さて、今回のキモとなるのが1.5L 直4のディーゼルターボエンジンだ。これは、シトロエン C4、DS4、プジョー 308などに搭載されているものより最高出力こそ低められている(130ps→120ps)が、最大トルクは変わらないし、基本的に同じユニットだ。最高出力130psと最大トルク230Nmを発生するガソリン車の1.2L 直3ターボは、いわゆるダウンサイジングターボで低回転域からレスポンスも良く、街中をキビキビと走りまわるのには悪くなかった。
今回のディーゼル車はガソリン車より車両重量が60kg重く、最高出力は10ps劣るものの、最大トルクは70Nmも上回っているから、その効果は絶大。そしてエンジン振動も、ガソリンとディーゼルの差はあっても、やはり3気筒より4気筒のほうがスムーズだ。
意外と下のギアで引っぱるATだが燃費は良い
アイドリングや低速時にはディーゼル独特の音が車内でも感じられるが、市街地走行レベルになれば気にならない。トランスミッションはガソリン車と同じ6速ATだが、意外と下のギアで引っぱるタイプだ。街中では3~4速で走っている。高速走行でも、80~90km/hくらいだと6速まで入らず5速でクルーズする。100km/h走行時のエンジン回転数は、6速で1700rpmくらい。どうやら1500rpm以下ではシフトアップしないようだ。
だが、そのぶんトルクのある低速域でエンジンが稼働しているから加速も余裕があり、高速クルーズも快適。街中でもガソリン車ほどキビキビではないが、小気味良く走ってくれる。今回はオンロードのみの試乗だったが、グリップコントロールというトラクションコントロールやヒルディセントコントロールも備えているから、FWDとはいえ多少のラフロードなら問題なく、またスタッドレスタイヤを装着すればシティユース中心で週末にウインターリゾートへ、なんて使い方が似合いそうだ。
安全&快適装備も充実していて、インターフェースも扱いやすいのだが、ひとつだけ残念だったのは、クルーズコントロールがアダプティブでなかったこと。日本の高速道路(とくに首都圏)では、周囲のクルマの流れに合わせなければ走れないから、やはりただのクルーズコントロールを使うのは難しい。
今回、2日間で約400kmを走行して、平均燃費計の数値は21.2km/Lを記録した。高速クルーズが8割くらいだったとはいえ、真夏の走行なのでエアコンは入れっぱなし、もちろんエコランなどはせずに流れに乗って走り、しかも行楽渋滞にハマったこともあったけれど外気温が高いためアイドリングストップはほとんど作動しない、・・・なんて条件でWLTCモードとほぼ同じ燃費を達成したのは、たいしたもの。市街地走行時でも瞬間燃費計は15~18km/Lくらいを表示していたから、街乗り中心でも実燃費は悪くなさそうだ。
全長は4.2m足らずのコンパクトなボディながら、リアシートやラゲッジスペースも十分広く、ディーゼルエンジン搭載で走行性能や快適性も向上。ガソリン車との車両価格差は約8万円。長距離移動の多いユーザーなら、燃料代などランニングコストでその差はある程度は補える。
入門用輸入車として、またコンパクトSUVとしても最適な1台といえるC3エアクロス。その購入を検討しているけれどパワートレーンのチョイスに悩んでいるという人は、まずは試乗して比べてみることをオススメしたい。(写真:Webモーターマガジン編集部、ほか)
■シトロエン C3エアクロスSUV シャインパック ブルーHDi 主要諸元
●全長×全幅×全高:4160×1765×1630mm
●ホイールベース:2605mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1498cc
●最高出力:88kW(120ps)/3750rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1750rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:軽油・45L
●WLTCモード燃費:21.3km/L
●タイヤサイズ:215/50R17
●車両価格(税込):355万4000円
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