現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > なぜスポーツカーはFR多い? 「FR派」「FF派」あなたはどっち? 理想のクルマとは

ここから本文です

なぜスポーツカーはFR多い? 「FR派」「FF派」あなたはどっち? 理想のクルマとは

掲載 更新 93
なぜスポーツカーはFR多い? 「FR派」「FF派」あなたはどっち? 理想のクルマとは

■あなたはFR派、FF派? スポーツカーではどっちがいいのか

「理想のFRを目指した」という日産の新型「フェアレディZ(プロトタイプ)」が話題となっている一方で、「FF最速」を目指すホンダ「シビックタイプR」も登場しました。
 
 長年、スポーツカーにおいて、FR派とFF派というように好みが分かれますが、どのような違いがあるのでしょうか。

スープラ並みに速いセダンがあった? 絶滅寸前なスゴいセダン5選

 1980年代から1990年代にかけて全盛期を迎えたといわれる国産スポーツカーですが、近年にわかにブームが再燃しています。

 その先駆けとなったのが、2012年に発売されたトヨタ「86」です。スバル「BRZ」を兄弟車としているように、スバルとの共同開発で生まれたこのスポーツカーは、漫画「頭文字D」で話題となったAE86型の「スプリンタートレノ(通称:ハチロク)」をオマージュしています。

 86がオマージュしているのは名前だけではありません。NAエンジンを搭載したコンパクトスポーツカーであり、そしてFRレイアウトを採用している点も、かつてのハチロクと同様です。

 86のチーフエンジニアである多田哲也氏は、あるイベントで「スポーツカーはFRでなくてはダメなのです!」と発言するほど、FRであることにこだわりがあったようです。

 また、2019年に登場したトヨタ「スープラ」も、かつての歴代モデルと同様にFRレイアウトを採用しています。

 さらに、2020年9月16日にプロトタイプが発表され話題になった「フェアレディZ」も、初代から一貫してFRレイアウトです。なぜ、これほどまでにスポーツカーはFRレイアウトを採用するのでしょうか。

 そもそもFRとは、「フロントエンジン/リアドライブ」の略で、フロント部に搭載したエンジンの動力を、プロペラシャフトと呼ばれる部品を介して後輪に伝えて駆動する仕組みを指します。

「フロントエンジン/フロントドライブ」を意味するFFに比べて、部品点数が多い分コストが上がったり、車内空間が狭くなったりするというデメリットがある一方で、スポーツカーにとっては大きなメリットがあります。

 FRレイアウトによる最大のメリットは前後重量配分の均整化です。コーナリングの際、重心が中心にあればあるほど、車体にかかる遠心力が理論上もっとも安定します。

 不安定な挙動とならない分、ハンドル操作に対して正確にクルマが動くことから、「人馬一体」感を得ることができ、端的にいえば、「ハンドリングがよい」クルマとなるのです。

 スポーツカーの定義には議論の余地がありますが、仮に「気持ちのいいドライビングができるクルマ」と定義するのであれば、この「人馬一体」感は、スポーツカーとして、非常に重要な要素であるといえます。

 さらに、FRレイアウトにアクセルを踏んだ分だけ自然に回転数が上がるNAエンジン(=過給器、つまりターボをもたない自然吸気エンジン)を組み合わせることで、よりドライバーの意のままに操れるクルマができあがります。

 これらが転じて、「スポーツカー=FR」という図式が定着してきました。

 一方、FFのスポーツカーも見直されつつあります。2020年10月9日にはFFスポーツカーの代表格であるシビックタイプRのマイナーチェンジモデルが発売されました。

 今回のマイナーチェンジでは、国内200台限定販売となる「シビックタイプR リミテッド・エディション」を設定し、鈴鹿サーキットで2分23秒993というタイムを叩き出しています。

 このタイムはFF車最速であり、なおかつ鈴鹿サーキットにおける86の公式コースレコードである2分29秒949をも上回りました。

 シビックタイプRと86では車格やコンセプトが異なるため、単純には比較できませんが、少なくとも、FFレイアウトだからといって遅いということはないようです。

 一般的に、FFレイアウトを採用するメリットは、部品点数が少ないことによるコストメリットと、居住空間を大きくとれるという、FRレイアウトと逆の点にあるといわれています。

 その反面、前輪で駆動と操舵をおこなわなければならないことから、各部に大きな負担がかかり、スポーツカーのように大きな負荷を与える走行をするモデルには向かないとされてきました。さらに、前述の通り、前後の重量配分の均整をとりづらいこともデメリットです。

■FFのデメリットが解消!? 結局、どのレイアウトが優れているかは「主義」の問題?

 しかし、近年では技術の革新によって、それらのデメリットも小さくなりつつあります。

 とくに、クルマにおける最大の重量物であるエンジンのダウンサイジング化が進み、十分なパワーを持ちつつ軽量化を実現できるようになったことで、重量バランスも改善するようになりました。

 とはいえ、大型な大排気量エンジンは構造上FFレイアウトに向かないため、必然的にコンパクトなパッケージングとなります。実際、FFレイアウトのスポーツカーはほとんどが「ホットハッチ」と呼ばれ、ハッチバックベースのものが多くなっています。

 また、スポーツカーにとってFFレイアウトの弱点ともいえるハンドリングの悪さも、電子制御技術の進化によってかなり改善しました。

 このように、FFレイアウトだからといって、スポーツカーには向かないということはなく、むしろ特定の条件であればFRレイアウトよりもスポーティかつ速く走れるということもあるようです。

 FFとFR、あるいはそのほかのレイアウトのなかで、スポーツカーとしてもっとも優れているものはなにか、という点が気になるところかもしれません。

 しかし、これは、単に機能上の優劣の話ではなく、スポーツカーの定義に関わる問題でもあります。

 例えば、単純に加速の早さや最高速だけを追求するのであれば、日産「GT-R」のように大型のエンジンを搭載し、4WDレイアウトでその力を余すところなく地面に伝えるのが理想的です。

 あるいは、サーキットを1秒でも速く走ること目的であれば、レーシングカーのように、エンジンを限りなく車体の中心に置いた、MRレイアウトが採用されるでしょう。

 ただ、こうしたコンセプトのクルマは、いわゆるスーパーカーやスーパースポーツカーと呼ばれ、多くの人が乗れるものではありませんし、また居住性や積載性は皆無のため、日常の移動にはあまり適さないものです。

「多くの人が運転する喜びを味わえるもの」という点を重視するならば、FRかFFかは大した問題ではないということもできます。

 かつては技術的な制約から、スポーツカーに限らず乗用車のほとんどがFRレイアウトでしたが、現在ではFFの技術も進み、乗用車全体で見ればむしろFFが優勢です。

 前述の通り、ハンドリングのデメリットも、電子制御技術の進歩によって、ほとんど気にならないものとなっています。

 つまり、どのレイアウトが優れているかは、そのユーザーの「主義」によって大きく変わってきており、FR至上主義であるのか、「羊の皮をかぶった狼」のようなホットハッチに魅力を感じるのか、とにかくスペック重視なのか、などです。

 繰り返しになりますが、純粋にサーキットの早さだけを追求するならば、現時点ではMRが理想的です。

「911」でRRレイアウトを採用する数少ないブランドであるポルシェでさえ、世界最速を追求するル・マン24時間耐久レースではMRレイアウトのレーシングカーで戦っています。

 しかし、911がMRレイアウトに生まれ変わることはあり得ないでしょう。RRであることは911のアイデンティティでもあるからです。

 同様に、86やフェアレディZもまた、FRであることをやめたりはしないはずです。前出の多田氏のコメントにあるように、「FRであること」自体が、86を86たらしめている重要な要素なのです。

※ ※ ※

 かつては、FRもFFも、それぞれにメリットとデメリットがありましたが、技術の進歩によってその差はほとんど実感できないものとなっています。

 その分、スポーツカーはどうあるべきか、という各ユーザーの主義が、スポーツカーのレイアウトに大きく影響しているといえるかもしれません。

こんな記事も読まれています

トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
トヨタ堤工場、2週間生産停止の真相、『プリウス』後席ドア不具合で13万台超リコール[新聞ウォッチ]
レスポンス
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
高速道出口にある「青いスラッシュ」何の意味? 実は重要なコト! 覚えておくべき「補助標識」の役割とは
くるまのニュース
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
EV車は重いって聞くけど......電動バイクは?
バイクのニュース
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
東海理化、トヨタ・プリウス向け後部ドアスイッチのリコール 関連費用で110億円
日刊自動車新聞
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
スバルが新型「最上級SUV」発表! オシャブルー映える「新ガイザー」! 約900万円のタフ仕様「アウトバック」伊に登場
くるまのニュース
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
「カワサキコーヒーブレイクミーティング」 アップデートされたファン参加型イベントを聖地オートポリスで開催
バイクのニュース
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
フェラーリ移籍控えるハミルトン、今は勝利目指して全力「そのうちウルフ代表と話す必要がある」
motorsport.com 日本版
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
日産『キャシュカイ』改良新型、表情を大胆チェンジ…欧州発表
レスポンス
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
特別な文字「J」を与えられしたった10台のスペシャルモデル! ついにファイナルを迎えるランボルギーニ・ウラカン「STJ」が登場
WEB CARTOP
札幌市、2024年度のEV補助金を一律10万円へ 軽EVは5万円 より多くの購入者に支給
札幌市、2024年度のEV補助金を一律10万円へ 軽EVは5万円 より多くの購入者に支給
日刊自動車新聞
発表後わずか1週間でモデル名変更 アルファロメオの新型SUVの名前は「ミラノ」から「ジュニア」へ 一体何があったのか?
発表後わずか1週間でモデル名変更 アルファロメオの新型SUVの名前は「ミラノ」から「ジュニア」へ 一体何があったのか?
AutoBild Japan
【20世紀名車ギャラリー】世界中で高く評価されるJ’sスポーツ・レジェンド、1967年式トヨタ2000GTの肖像
【20世紀名車ギャラリー】世界中で高く評価されるJ’sスポーツ・レジェンド、1967年式トヨタ2000GTの肖像
カー・アンド・ドライバー
日本で登場したら人気が出そう…オペルのコンパクトSUV 新型「フロンテラ」初公開! EVのほか48Vハイブリッドを用意
日本で登場したら人気が出そう…オペルのコンパクトSUV 新型「フロンテラ」初公開! EVのほか48Vハイブリッドを用意
VAGUE
外国人のタクシー&バス運転士が増える可能性大! 海外じゃ当たり前の光景が日本でも広がるか
外国人のタクシー&バス運転士が増える可能性大! 海外じゃ当たり前の光景が日本でも広がるか
WEB CARTOP
マツダ、広島本社で5年ぶりの感謝祭を6月に開催! イベントはどんな内容になる?
マツダ、広島本社で5年ぶりの感謝祭を6月に開催! イベントはどんな内容になる?
くるくら
ベスパの特別仕様車「140th」 4日間限定販売の140周年記念モデル発表
ベスパの特別仕様車「140th」 4日間限定販売の140周年記念モデル発表
バイクのニュース
トヨタ新型「ランクル“ミニ”」登場!? カクカクボディ×マットブラックが超カッコイイ! SUV仕様の新型「ハイラックス“ランガ”」に熱望の声も! 尼で実車展示
トヨタ新型「ランクル“ミニ”」登場!? カクカクボディ×マットブラックが超カッコイイ! SUV仕様の新型「ハイラックス“ランガ”」に熱望の声も! 尼で実車展示
くるまのニュース
リカルド、中国GPで使用する新シャシーは「安心感をもたらす」シート喪失のプレッシャーは否定
リカルド、中国GPで使用する新シャシーは「安心感をもたらす」シート喪失のプレッシャーは否定
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

93件
  • さらに言えば、「クーペじゃないとダメ」「WRXやランエボはスポーツカーと言えるのか!?」とか、それぞれの意見があるかと思います。
    Youtubeなんかで軽トラでドリフトする人も見るし、車種がなんでも、FFでもFRでもそれぞれが楽しければ何でもスポーツカーになりうるんですよ。
  • 本日のクルマどころか免許も持ってない連中が蘊蓄をたれる会場はこちらですか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

539.9920.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.02800.0万円

中古車を検索
フェアレディZの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

539.9920.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0.02800.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村