乗り心地やハンドリングで秀でている
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
【画像】ディスカバリー・スポーツとX3、XC60 PHEVのSUV 3台を比較 全71枚
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ P300eは静かに豊かなトルクを生み出し、驚くほど洗練された走りを得られる。外界からの隔離性にも優れ、運転の充足感は高く、ランドローバーらしい。
他方のボルボXC60とBMW X3は、別の方向性が与えられている。SUVとしての車内空間や実用性を備えつつ、車高はやや低く、リニアで小気味いいクロスオーバー的な操縦性が目指されている。いわゆるSUVの走り味とは違う。
だがXC60とX3は、狙いと実際の能力との間にわずかなギャップがあるようだ。
BMW X3 xドライブ30eは、Mスポーツ仕様。しかし、車高が落とされ引き締められるスポーツサスペンションは備わらない。車重が2tほどあるX3にダイナミックな操縦性を与えるのには限界があると、BMWも理解しているのだろう。
ディスカバリー・スポーツ P300eとX3 xドライブ30eは、アダプティブ・ダンパーをオプションで装備できる。XC60 T6 リチャージはアダプティブ・エアサスペンションがオプション。試乗車のサスペンションはいずれも、標準のままだった。
ディスカバリー・スポーツの乗り心地やハンドリングは、日常的な速度域でも落ち着きがあり、ボディロールは穏やかに発生。郊外のカーブが続く道でも機敏に走れる。
流れるように滑らかに路面の凹凸をいなし、コーナリング時の操縦性も精度が高く秀でている。近年のランドローバーの仕立て方には関心させられる。
ランドローバーと異なる2台の味付け
BMWは、より低くタイト。路面からの隔離性も低めで、それは乗り心地にも反映している。コーナーでは、ターンイン時の俊敏さではランドローバーに及ばないものの、コーナリング中のバランスやグリップ、スタビリティでは上。
ランドローバーより自信を持って、カーブを抜けていける。垂直方向の姿勢制御も優れているが、乗り心地は少し落ち着きがない。快適とはいいにくいだろう。ハンドリングも含めて狙いは伝わるが、巧妙に完成されたと感じるほどではない。
ボルボXC60 T6 リチャージの乗り心地や操縦性は、自然で素直。シフトパドルやスポーツ・モードで気持ちを盛り上げることもない。
ステアリングの応答速度は丁度いい。乗り心地も程々にコシがある。ペダルやステアリングホイールの重み付けは中庸で、扱いやすい。おそらくXC60はもっと機敏にも仕上げられたはずだが、ボルボはあえてそうしなかったようだ。
少し残念だったのが乗り心地。X3より柔らかいスプリングに乗っているのに、路面が乱れた区間ではBMWより落ち着きに欠ける印象。市街地や高速道路では快適だが、姿勢制御が緩く、減衰力が足りていない印象を受けた。
隆起部分などを通過すると、ボディは明確に揺れる。コーナーでスピードを上げていくと、突然外側にボディがロールする様子も見られた。
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ P300eにアドバンテージがあると思う。
明らかに優位なディスカバリー・スポーツ
最後にPHEVのパワートレイン。呼び方は同じでも、まったく違うことに驚かされた。
BMWは、ここでもスポーティさに振ってある。ボルボやランドローバーよりノイズは大きい。EVモードでの走りには頑張っている感があるものの、ハイブリッドはとてもパワフル。
ボルボは低回転域で特に滑らかで、トルクにもゆとりがある。市街地でのEVモードでの移動は、BMWより気持ちがいい。
一方でアクセルペダルを深めに踏み込むと、ドライブトレインの上質さは低下。活発な加速を求めるとやや躊躇し、不自然さを感じる場面もあった。
この2台の後にディスカバリー・スポーツ P300eへ乗り換えると、その静けさや滑らかさ、力強さに唸らされる。BMWやボルボのシステムが、劣って感じるほど。
リアタイヤを駆動する電気モーターは、フロントタイヤを受け持つ3気筒ターボエンジンと電気モーター、8速ATとの組み合わせに見事に融合。高回転域までマナーが良い。
低い速度域でのレスポンスが鋭いだけでなく、100km/h前後の速度域でも、ライバルの2台より力強い。さらに、電気モーターとガソリンエンジンとのシームレスな一体感も素晴らしい。
全開で加速するような場面では、変速ショックも感じられなかった。純EVに乗っているような感覚すらある。
燃費は、こまめに充電を繰り返せる環境にあるドライバーなら、充分に伸ばせるだろう。だが今回の比較試乗の結果、エンジンの出番も多いハイブリッド・モードでは、P300eは11.5km/L前後に留まった。
ゲイドンの経営陣の本腰が反映された
これは、BMWの13.5km/Lや、ボルボの12.7km/Lには明らかに及ばない。日常的に走行距離の長いドライバーにとって、燃料代に反映してくる違いといえる。選択肢の順位を左右する数字だと思う。
それでも今回の3台の中で、ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ P300eの勝利を否定するほどではないだろう。ゲイドンの技術者は、ブランドにとって重要なPHEVを高水準で完成させたといえる。
ディスカバリー・スポーツ P300eは突出した走行性能と航続距離を獲得し、たくましさも他の2台を凌駕している。滑らかさや洗練度、快適さといった点でも驚くほどの水準にある。
多くの人が望むような、PHEVのファミリーSUVに仕立てられている。ゲイドンの経営陣の本腰は、しっかりクルマとして反映されたようだ。
PHEVのSUV 3台のスペック
ランドローバー・ディスカバリー・スポーツ P300e Rダイナミック S(英国仕様)のスペック
英国価格:4万7000ポンド(705万円)
全長:4597mm
全幅:1920mm
全高:1727mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:6.6秒
燃費:49.9km/L
EVモード航続距離:61km
CO2排出量:44g/km
車両重量:2093kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー+ツイン電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:15.0kWhリチウムイオン
最高出力:309ps/5500rpm
最大トルク:54.9kg-m/2000-2500rpm
ギアボックス:8速オートマティック
BMW X3 xドライブ30e Mスポーツ(英国仕様)のスペック
英国価格:5万1900ポンド(778万円)
全長:4708mm
全幅:1891mm
全高:1676mm
最高速度:209km/h
0-97km/h加速:6.1秒
燃費:50.0km/L
EVモード航続距離:48km
CO2排出量:46g/km
車両重量:1990kg
パワートレイン:直列4気筒1998ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:12.0kWhリチウムイオン
最高出力:292ps/5000-6500rpm
最大トルク:42.7kg-m/1350-4000rpm
ギアボックス:8速オートマティック
ボルボXC60 T6 リチャージ AWD Rデザイン(英国仕様)のスペック
英国価格:5万2570ポンド(788万円)
全長:4688mm
全幅:1902mm
全高:1658mm
最高速度:180km/h(リミッター)
0-97km/h加速:5.9秒
燃費:40.0km/L
EVモード航続距離:51km
CO2排出量:56g/km
車両重量:2099kg
パワートレイン:直列4気筒1969ccターボチャージャー+ツイン電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:11.6kWhリチウムイオン
最高出力:253ps(ガソリンエンジン)/89ps(電気モーター)
最大トルク:35.6kg-m(ガソリンエンジン)/24.4kg-m(電気モーター)
ギアボックス:8速オートマティック
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