排気量アップだけでなく全面刷新されたアフリカツイン
トータルで性能向上を実現し、これまでのモデルとは「似て非なる物」、これが新型アフリカツインの実態である。エンジンは排気量を84cc拡大しつつ車両重量は4kg軽量に、そして車体はスリムになり、制御系には6軸のIMU(慣性計測装置)を新採用するなど、ほぼ全面に渡って新設計となっている。
これらのフィーチャーによって、新型アフリカツインはアドベンチャーモデルとしての実力をさらに磨き込み、実質的にはアップライトポジションで操りやすい大型ツアラーとしての性能を完成させたと言ってもいいだろう。
さらには最上級グレードとなるアドベンチャースポーツESではショーワ製の電子制御サスペンション「EERA」を採用。あらゆる走行シチュエーションでライダーに対する高いユーティリティー性を発揮し、よりラグジュアリーな走行フィーリングを実現しているのだ。
かつてCB乗りだったライダーがCB1000Rにハマる理由(前編)
スタンダードモデルで確認した基本的な走行性能だが、ストロークアップによって排気量拡大を図ると同時に、吸排気系から燃焼系のレイアウトも一新したエンジンは、回転フィーリングが従来モデルよりも軽快に感じられかつ、高回転域の吹け上がり感は明らかにシャープで素早いものとなっている。
最高出力は1000ccの従来型から+7馬力の102馬力、最大トルクも向上して発生回転数も250回転アップしており、さらに新たにサイレンサー内に排気バルブを設けた事で実現した高回転の加速感、とくに高速巡航時に中間域から追い越し加速などを行う際の吹け上がりの力強さと爽快さは特筆に値する。
また、(各種のモード設定が影響する部分はあるが)低回転域でのレスポンス性やトラクション感も総じて向上しており、従来モデルをやや重厚な「攻撃機」のイメージとすれば、新型は機敏な「戦闘機」をイメージさせると言ってもいいだろう。
もちろん、そのフィーリングには新しくなった車体の貢献度も大きい。従来モデルと基本的な構成を同じくするフレームだが、実際には剛性バランスと重量を見直した新設計であり、エンジンマウントなど細部まで一新されている。
なにしろ「バイクは少しでも軽い方が良いので、排気量を拡大したからと言ってエンジン重量を増やすわけにはいかなかった」と開発責任者が言うように、エンジンで約2kg、フレームボディで約1.8kgの軽量化の効果は大きく、スリム化等によって凝縮感を向上させたボディと相まって、その運動性能は従来モデルより明らかに軽快だ。
とくにハンドリングや取り回しは、ひとクラス下のモデルのそれを感じさせる。第一印象では、21インチのフロントタイヤ特有の「フロントが立つ」フィーリングが従来モデルよりもマイルドにも感じた。このあたり剛性バランスの調整が利いているのかも知れない。
旅にもオフロードにも効くショーワ製電子制御サスペンション
多くのユーザーの場合、メインの使用シチュエーションとなるオンロードでは、総じてより軽快になった取りまわしと、サスペンションストロークの調整で830mm(ローダウン時810mm)に引き下げられたシート高が、格段の安心感と利便性を感じさせてくれるはずだ。
ちなみに国内でも限定発売が予定されているEU仕様と同じ「ロングサスペンション仕様」は、サスペンションストロークがフロント230mm(国内仕様185mm)、リア220mm(同180mm)となっており、シート高は890mmなので従来モデルのアドベンチャースポーツと同様だ。
さて、注目の電子制御サスペンションEERAだが、これはもう性能的にはまったくの別物であり、あらゆるシチュエーションでその乗り心地を角の取れたスムーズなものとしてくれる。分かりやすいのはフルブレーキング時におけるノーズダイブ量の違いや、路面の段差や凹凸の通過時にスタンダードのサスペンションが「ダダンッ」なら、EERAは「タンッ」というほど違うショックの伝わり方だろう。
また、IMUやサスペンションストローク、エンジン回転等のパラメータからの情報を1/1000秒単位で検知しているというシステムによって、幅広いシチュエーションでほぼ瞬時にサスペンションの減衰特性をアジャストするため、通常だと「乗り心地が良い」という感覚に始終してしまうのだが、このEERAの恩恵を最も感じ取れるのは、路面の起伏があり、断続的に大きな衝撃が加わるオフロード走行である。
ウェーブ状にうねる大きな連続ギャップではショックを適切に吸収するから、車体のピッチングが抑制されて穏やかになるし、ジャンプの着地ではサスペンションのストロークスピードが変化するのか、スタンダードより衝撃の伝わり方がマイルドだ。この事によって車体の安定感が高く、操作もより楽になるし、結果的には疲労の低減にもつながる。
総じて、オフロードを意識してサスペンションストロークを確保したアドベンチャーモデルでは、オンロードでは極端に姿勢変化しないようストロークを抑制したい、オフロードでは衝撃吸収性を上げるためストロークさせたいという、二律背反を抱える事になるのだが、オンでもオフでも適切な作動特性を実現できるEERAはこの矛盾を解決したと言ってもいい。
新型アフリカツインはラグジュアリーツアラーとしても使える
そもそも大排気量アドベンチャーモデルは、そこで思い描く「夢」としてオフロード走行を意識させるものだが、実際のオフロード走行ではそのサイズや重さが足かせとなる場合も少なくない。
しかし、アフリカツインの場合は元々がオフロードのポテンシャルも十分に意識した性格であり、この新型ではさらにそのポテンシャルを拡大している。高回転フィーリングの良さ、軽快感とマスの集中感が向上した車体がその理由だが、そこにEERAを装着したアドベンチャースポーツESは言ってみれば、オン/オフを同じようにこなす万能ラグジュアリー・スポーツツアラーと言っても良いだろう。
何しろ、タンデムをしようが、ケース類に荷物を満載しようが、これも新たに採用されたゴールドウイング同様のイニシャル設定をすれば、後はEERAが最適かつ快適な作動を実現するのである。発売直後で早くも受注が700台あり、その大半がこのアドベンチャースポーツと言うから、市場の期待が大きい事も分かるというものだ。
(試乗レポーター●関谷守正 photo●柴田直行/ホンダ)
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