2023年11月17日~26日まで中国で広州モーターショーが開かれている。新エネルギー車が多く占めていたが、人の集まり方で来期の中国自動車業界が見えた。
中国の自動車市場
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中国自動車工業協会(CAAM)によると、中国の新車販売台数におけるNEV(BEV電気自動車、PHEVプラグインハイブリッド、FCV燃料電池車)比率は、2023年上半期(1~6月)で28.3%だった。これだけ、NEV車の販売台数が増えているのは、2022年まで行われていた政府からの補助金だ。また、通常新車購入時に10%かかる自動車取得税(購置税)をNEV車なら減免される。取得税の免除は延長予定で、2024~25年は最大3万元(最大約62万円)が免除される。
また、もともと中国にはスマホ電池のような小型電池を作っていた会社が深センをあり、それを応用して車載電池まで発展させた。電気自動車には複雑な内燃装置が不要であることから電池さえあれば自動車業界に参入しやすく、電池メーカーであったBYDは自社で作った電池を背景に安い電気自動車を作ることができた。また、現在の自動車電池をシェア1位を握るCATLを筆頭に中国には自動車電池メーカーがあり、電池メーカーから電池を調達してデザインやサービス開発に力を入れて電気自動車をつくる新興メーカーも乱立している。
広州モーターショーは、D区とA区2つの地区に分かれており、D区にはNEV車のみを作る新興メーカー、A区は日系メーカーを含む外資、地場メーカーの広汽汽車集団(GAC)、BYDなど主要自動車メーカーが展示されている。
広州モーターショーでは実際に車の購入ができ、メーカーの受付入り口には営業員が待機し、入場した顧客に車を丁寧に案内し、商談する場合には展示場の2階にメーカーごとにカフェテラスが設置されており、そこで商談ができる。そのため、どのメーカーに人が集まっているかは、来期の中国市場の販売を占うといっても良いだろう。
新興中国自動車メーカー
新興電気自動車メーカーでは、小鹏(Xpeng)、理想、NIOが人気だった。
新興メーカーはスマートコックピットを採用している。
(スマートコックピットの画面)
(運転席のフロントガラスに映像が投影される)
スマートコックピットとは、自動車の内装とスマートフォンが融合化したようなものだ。例えば、iPhoneのSiriのように呼び掛けると、窓の開閉、デバイスに音楽や映像を流す、運転席のマッサージ機能や空調の調整ができる。そもそも、スマートコックピットにはボタンがなく、デバイス上で機能をタッチして選ぶか、この音声機能で実行させる。車がインターネットに繋がっているため、後部座席や運転席のデバイスにbilibil(中国版You Tube)をはじめ動画配信サービスがみられるようになっている。
■小鹏(Xpeng)
小鹏は、地場の広州にあるメーカーだ。ホイールや内装はドイツの高級車を思わせるデザインで、内装は本革を使用している。運転席にはマッサージ機能が付いている。
■理想
(後部座席の画面では、タッチすることなく、手をかざして操作できる。選択するときは手をグーに握ると決定することができる。)
(市内のディーラーの様子。右側に車のカラー、内装カラーの展示)
理想は、OEM生産のメーカーで自社生産していない。電気自動車ではなく、PHEVである。
理想は、車のデザイン、内装はどの種類も同じで、種類ごとに大きさが異なるぐらいと限定している。カラーや内装の皮の種類、内装カラー、ホイールを選ぶことができるが、日系メーカーがあらゆるオプションのなかから顧客が選び出すのとは大きく異なり、かなり限定された選択肢から選択するようになっている。
■NIO
(おしゃれなカフェ風の商談室)
NIOはオーナーが月の一定回数まで(超えた分は有料)バッテリー交換をできるのが特徴。交換所で車を駐車すると、地面から充電済みバッテリーが出てきて、自動で電池を交換してくれる。充電を待つ必要はないためその時間は5分程度で済む。また、NIOのオーナーになると、NIOのディーラー併設のカフェでゆっくり休むことができ、さらに併設の託児所で子どもを預けてゆっくり休むことができる。
新興は目を引くが、結局人気なのは従来メーカー
たくさん人を集めていたのは、新興メーカーのD区ではなく、従来メーカーが集うA区だった。電気自動車ではBYD、ガソリン車(ハイブリッド含む)GAC、トヨタ、ホンダに多くの人が集まっていた。
(中国向け9代目新型「カムリ」、代わる代わる運転席に人が入る人気ぶり)
(地場のGAC、広州でトヨタ、ホンダが合弁を設立)
(中国で人気のクラウン。日本にはない様々な種類のクラウンが発売予定。)
(BYD王朝シリーズ・漢)
(BYD海洋シリーズ・海狮)
(BYDのコックピット)
(BMW・5系Liに人だかり)
(ベンツ・CLE300Coupe)
(レクサスの新型ミニバンLM500h(2代目)。3,000万円以上するが広州市内で初代を時々見かける。)
社内の内装は新興メーカーのような目を引くようなデザインではないが、現実的に考えて安全性、社内環境、走行性、値段で選ぶユーザーも多い。
電気自動車でも、新興メーカーは30万元以上と非常に高く一部高所得者しか購入できない。電池を自社で作るBYDは、社内はシンプルだが、電気自動車でも非常に安く、人気を集めている。現在、中国では新興電気自動車メーカーが100社近くあるが、価格競争が激しくほとんどの新興が赤字であることから、そろそろ淘汰されていくだろう。現実的に価格が高すぎると購入できず、価格面など現実的な選択をする人も多い。
日系メーカー、その他外資も電気自動車を展示していたが、電池を自社生産していないことから、電気自動車で価格競争になるとBYDにはなかなか勝てないかもしれない。
※元の円換算は11月21時点の1元=20.68で計算
取材・文/大堀貴子
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