建造費2倍超の衝撃
近年、液化天然ガス(LNG)を輸送するLNG運搬船の建造費が急騰している。背景には、世界のエネルギー需給の変化、地政学的リスク、造船業界の需給逼迫といった複数の要因がある。
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LNG運搬船は、天然ガスをマイナス162度まで冷却し、液化した状態で輸送する専用タンカーだ。液化によって体積は約600分の1まで圧縮されるため、大量輸送が可能となる。
この種の船は極低温の液体ガスを扱うため、球形または膜型の特殊なタンクを備える。貯蔵には高度な冷却技術と断熱構造が求められる。さらに、安全な航行のために専用の操船システムや特殊な航行技術も必要となる。
設計・建造には高い技術力が必要で、通常の貨物船と比べて圧倒的に難易度が高い。そのため、対応できる造船所は世界でも限られており、建造費の上昇が市場全体に波及している。
役割と市場の重要性
LNGは、石炭や石油に比べて二酸化炭素の排出量が少ない。地球温暖化対策の観点から、世界的に注目されているエネルギー資源だ。脱炭素を進める各国では、LNGの輸入が加速しており、需要は拡大を続けている。
欧州はエネルギーと環境政策の転換が進む地域の一つだ。従来、ロシアからパイプラインでLNGを陸上輸入していたが、2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発により状況が一変した。輸入ルートが断たれたことで、欧州諸国はロシア依存からの脱却を急いだ。アメリカ、中東、アジアからのLNG輸入へとシフトが進んでいる。この流れにより、LNG運搬船の需要も急速に高まっている。
同時期には新型コロナからの経済回復も重なり、LNG価格は過去最高水準にまで高騰した。また、近年ではLNGを燃料とする船舶の建造も相次いでいる。背景には、2020年のSOx(硫黄酸化物)排出規制の強化がある。これにより、SOxの排出が少ない燃料への転換が進んだ。ただし、SOx規制だけではCO2削減には不十分だった。
そのなかで、CO2・NOx・SOxの排出が少ないLNGは、代替燃料として脚光を浴びている。LNG燃料船の建造数も大きく伸びており、このエネルギー転換がLNG需要をさらに押し上げている。国際的なエネルギー構造の再構築において、LNG運搬船が果たす役割はますます大きくなっている。
建造費高騰の背景
LNG運搬船の発注数は、2022年のロシア・ウクライナ戦争の勃発を契機に急増した。世界全体のLNG船発注量はこの年に過去最高を記録し、その大半を韓国勢が獲得している。このタイミングを境に、LNG運搬船の新造価格も大きく上昇した。
2021年には約2億ドルだった価格は、2024年には2億7000万ドルに達し、日本円で400億円を超える水準となった。これまでにない高値圏である。
価格高騰の背景には、複数の要因がある。第一に、LNG船の需要が急増している。欧州ではロシア産ガスへの依存からの脱却が進み、パイプラインによる陸上輸送から海上輸送への切り替えが加速した。アジアでも需要が拡大し、新造船の発注が相次いでいる。特に2022年以降、供給能力が逼迫し、造船所の対応が追いつかない状況となった。
象徴的な動きとして、カタール国営のカタールエナジーは100隻を超えるLNG運搬船の建造プロジェクトを始動。韓国と中国の造船所に次々と発注を行い、世界全体の建造量の約6割を占める規模となっている。業界における存在感は圧倒的だ。
加えて、造船所のキャパシティにも限界がある。LNG運搬船は高度な冷却・断熱技術が必要であり、対応可能な造船所は世界でもごく一部にとどまる。特に韓国のサムスン重工業、HD現代重工業、ハンファオーシャンの3社が受注の大半を担っている。これに続く中国の大手造船所も注文を伸ばしているが、両国とも新規案件を受け入れる余地は限られている。
こうした供給制約のなかで、船主側の価格交渉力は低下した。結果として、建造費の上昇圧力がさらに強まっている。
400億円船価でも止まらぬLNG投資熱
日本は世界有数のLNG輸入国であり、その需要を背景に、長年にわたりLNG運搬船の建造にも取り組んできた。三菱造船、川崎重工業、ジャパンマリンユナイテッドなどがLNG船を手がけ、技術力の高さは国際的にも評価されていた。
しかし近年は、韓国による国家主導の積極的な受注戦略と、造船コストの上昇が大きな転機となった。日本の造船各社は採算確保が難しくなり、LNG運搬船の建造から次々と撤退した。2019年に川崎重工業が最後の大型LNG船を引き渡して以降、日本国内での新造実績はない。
その後も一部では動きが続いている。三井E&S造船は中国の揚子江船業と合弁事業を立ち上げ、中国側でLNG船を建造している。2023年には、日本郵船と名村造船所が、老朽化したLNG運搬船の主機を高効率エンジンに換装するための基本設計を完了させた。ただし、こうした取り組みがあっても、日本国内の造船所でLNG運搬船が建造された例は、現在に至るまで見られない。
LNG運搬船に対する需要は今後も継続すると見られている。だが、市場の見通しには変化の兆しもある。新造船の供給が増え続ける一方で、LNGの新規開発プロジェクトは遅れが目立ち、需給バランスの緩みが指摘され始めている。
それでも多くの海運企業は、LNG船を中長期の戦略投資対象と位置づけている。市場価格も高止まりの傾向が続いており、現時点では建造需要が大きく落ち込む気配はない。
脱炭素を支える浮かぶインフラ
LNG運搬船の価格高騰は、世界のエネルギー市場の構造変化と造船業界における需給の逼迫が主な要因となっている。
今後も建造費は高止まりするとの見方が強い。ただし、造船能力の拡充や代替技術の進展、各国の政策支援によって、価格が次第に安定へ向かう可能性もある。
エネルギー転換と脱炭素社会の実現において、LNG運搬船の重要性は一層高まっていく。こうした環境下で、船主やエネルギー企業には、長期的な視野に基づく戦略的対応が求められている。
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