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リトラとウェッジシェイプを持つ異端の英スポーツ「TR7コンバチ」の約157万円落札は安いか高いか!?

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リトラとウェッジシェイプを持つ異端の英スポーツ「TR7コンバチ」の約157万円落札は安いか高いか!?

英国オープンスポーツ末裔「TR7」は、日産「フェアレディZ」と北米安全規制を意識して誕生

海外の自動車オークションというと、数億~数十億円で落札される博物館級の名車ばかりが注目されがちです。しかし、我々のような“フツーのクルマ好き”でも手が届くモデルも多数存在します。今回はイギリスで開催された「ザ・クラシックカー・セール」に出品された、1983年式トライアンフ「TR7 コンバーチブル」に注目しました。日産「フェアレディZ」の存在や北米の規制に翻弄された時代背景と、驚きの落札価格を詳しく解説します。

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博物館級の超高額だけでなく「普通のクルマ好きも参加可能」な敷居低い英国オークションに出品

昨今では日本でも紹介される機会の増えた、海外の自動車オークションの話題。その多くは「あの貴重な名車がオークション史上最高額となる×××億円で落札された!!」といった、センセーショナルな取り上げられ方であるようだが、そのような博物館級の名車を大富豪や投資のプロが落札を競うことがオークションのすべてではない。今回ご紹介するのは、我々のような“フツーのクルマ好き”でも思わず参加したくなるような、敷居の低いオークションで見かけた1台だ。

さる2026年3月21日(土)~22日(日)に、イギリスはバーミンガムで開催された「ザ・クラシックカー・セール」。このオークションの主催者はアイコニック オークショニアーズという競売会社で、同社の創始者ニック ホエールはもともと英国のレーシングドライバーであり、ポルシェやフェラーリなどの正規ディーラーを務めた経歴もあるという人物である。

そんなこともあってか、同社のオークションに出品されるクルマたちは、一般的なクルマ好きにも手が届くような馴染み深い車種も多い。たとえばこちらのトライアンフ「TR7」などもそんな出品車の1台だ。ちなみにTRとは「トライアンフ・ロードスター」を意味し、TR7はその7番目のモデルというわけだ。

英国スポーツカーの代名詞「トライアンフ」がバンカラを捨て、新たに目指した「フェアレディZ」!?

かつてはMGやオースチン ヒーレーなどとともに英国製スポーツカーの代名詞的存在として知られ、第二次世界大戦後の北米での大ヒットから「アメリカの恋人」とも言われたトライアンフ「TR」シリーズ。その最終章を飾ったのが、1975年にデビューしたトライアンフ「TR7」と、その派生モデルであるトライアンフ「TR8」である。

英国の量産車メーカーが自社の実用セダンなどのコンポーネンツを巧みに活用して、手軽だが奥の深い小型軽量のスポーツカーを生産し、それらが巨大な北米マーケットでベストセラーとなる……。そんな英国の十八番ともいえる方程式に倣ったのが、日産のダットサン ロードスター(日産「フェアレディSP/SR」)だったりするわけだが、日産はさらにそこから一歩進めて、GT的な快適性を備えたクローズドボディの日産「フェアレディZ」を1969年にデビューさせる。

1970年代に入ると、自動車の世界は安全性や快適性、環境性能の向上がより求められるようになってきて、とくに北米市場では連邦自動車安全基準(FMVSS) 216号という乗員保護のために非常に厳しい安全基準の導入を検討していた。その中核が「転倒時の屋根の強度規定(ロールオーバー・プロテクション)」で、世界的にも北米マーケットでは「安全性の見地からオープンカーは全面禁止になるのでは」と噂されていた。旧き佳きバンカラなオープン2シータースポーツの時代に終止符を打ったのはそのような時代背景と急激な安全に対する要求、そして日産「フェアレディZ」のような安価で性能の優れた安全な自動車の登場だったとも言える。

そんな厳しい状況のなか、時代に対応する新世代のトライアンフ製スポーツカーとして登場したのがトライアンフ「TR7」である。本来ロードスターとは最低限の耐候装備しか持たない無蓋車のことであるから、クローズドボディのTR7はすでに「トライアンフ・ロードスター」ではなかったのだが、まぁそれはさておき。

オープンカー禁止危機を免れ、クルーズドボディから誕生した「トライアンフTR7 コンバーチブル」

日産「フェアレディZ」を意識したモノコックのクローズドボディを持つトライアンフ「TR7」のデビューは1975年。その象徴的なウェッジシェイプ(くさび形)とリトラクタブル・ヘッドライトをデザインしたのは、オースチン「アレグロ」なども手がけたハリス・マンだ。賛否両論を巻き起こしたこの前衛的な意匠は、当時の流行の最先端を狙ったものであった。

エンジンは2000cc SOHCの直列4気筒で、デビュー当初はオープンボディが用意されなかった。駆動系は歴代のTRと同様のフロントエンジン・リアドライブとコンベンショナルなものだ。結局、北米市場でオープンカー禁止とはならなかったので、1979年にはルーフを取り払ったコンバーチブルが改めてラインアップに加わった。今回ご紹介しているのが、そのトライアンフ「TR7 コンバーチブル」というわけだ。

なお、TR7の生産は1981年までと言われているが、今回のオークション出品車両は「1983年式」と表記されている。英国のクラシックカー市場では生産年ではなく「初年度登録」を年式とするケースが多く、ディーラー在庫として残り1983年に初めて登録された個体である可能性が高い。

スポーツカー過渡期を伝える生き証人「TR7 コンバチ」に付いた「157万円」という世知辛い価値……

出品車はペルシャ・アクア・メタリックと呼ばれる上品なボディカラーを纏い、内外装ともにほぼオリジナル。全体的に新車時以来の良好な状態を保っており、走行距離は3万2500マイル(約5万2300km)ほどだ。

現役当時はそのキャラクターがいまひとつブレてしまっているようにも思えたトライアンフ「TR7」であったが、現在の目で改めて見てみると、スポーツカーが大きな転換点を迎えつつあった1970年代という時代の空気を今に伝えてくれる、貴重な生き証人のようだ。

主催者側は8000ポンド~1万ポンド(邦貨換算約172万~215万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していたが、実際の落札価格はそれを下回る7313ポンド。日本円に換算して約157万円という価格で競売人のハンマーが鳴らされた。由緒正しいブリティッシュ・オープンスポーツの末裔としては、随分とリーズナブルな価格と言えるのではないだろうか。

※為替レートは1ポンド=215円(2026年4月15日時点)で換算

文:Auto Messe Web 長尾 循(NAGAO Jun)

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みんなのコメント

1件
  • fxnhe501
    当初、トライアンフはTR6の後継車も当然のようにオープン2シーターで開発を進めていた。しかし記事にもあるFMVSSの更新のために、急遽当初のボディデザインを没にしてクローズドボディのクーペに転向することになる。

    しかし、その時トライアンフ部門のデザイナーは誰もが別のプロジェクトに関わっていて手の空いている人間がいなかった。そこで同じBLMCの中でも別の部門であるオースティン・モーリス部門の新鋭、ハリス・マンが内外装のデザインをやり直すことになった。モーリス・マリーナ開発のためにフォードから転籍してきた彼は、マリーナのクーペ版を皮切りにアレグロ、18-22(プリンセス)とオースティン・モーリスの新型車を次々と手掛け、BLの70年代を引っ張っていた。このTR7も時間のない中での作業ではあったものの、それだけに彼のウェッジシェイプへのこだわりが凝縮された佳作に仕上がっている。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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