装飾や派手なデザインで主張するのではなく、削ぎ落とされた佇まいとこだわりの素材使いで、静かでありながらも独創的な力強さを放つコモリ(COMOLI)。成熟した大人の色気とスタイルを備えた4人が、貫禄たっぷりに着こなす。
コモリ、「整い」の美学
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目立たず、埋もれず、佇まいを整える。デザイナーの小森啓二郎とスタイリストの喜多尾祥之が語る装いの輪郭と在り方の現在地とは。
喜多尾祥之(以下、喜多尾) 10代でファッションに目覚めて以来、アメカジ、フレンチアイビー、DCブランド、ロンドンやパリのモードなど、好奇心と衝動に導かれるように、さまざまなスタイルを経験してきました。スタイリストとして仕事で服に関わるようになってからも、時代の変遷とともに多くのスタイルに接してきたわけですが、年齢を重ねるにつれ、体型や体調の変化に向き合う必要が出てきました。そうなると、流行りの服を無理して着るよりも、まずは心地よさを担保した上で、どこまで遊べるかということを気にするようになる。スタイリングの「余白」をどう作っていくかを考え始めた時に、コモリの服に触れ、「あ、これは今の自分にすごくフィットするな」と、バランスの良さを感じたのが僕の最初の印象でした。
小森啓二郎(以下、小森) 自分では所謂ファッションデザイナーという感覚はあまり無くて、今の時代にいい服と言われるものも、もとを辿れば、だいたい過去に誰かが作ったものの延長線上にあると思っていて。「もう少しこうだったらいいのに」とか「この素材がいいんじゃないか」とか「こっちのパターンでやってみたらどうだろう」とか、そういうことを考えて服を作っているだけです。服をデザインするというより、自分の中では「整えている」感覚のほうが強いです。
喜多尾 コレクションを継続して拝見してきた一人として、合点がいきます。いいと思ったアイテムが次のシーズンで絶妙にアップデートされていたり、リピートされているアイテムもあったりして。そのたびに「次は何を見せてくれるんだろう」という期待が自然と生まれてきていました。
小森 例えば自分の生活を顧みたときに、旅行や出張に一着持っていくなら、ダーク系のカシミヤを選びます。軽くて暖かくて、どんな場所にも着て行けるし、スーツケースに丸めて入れてもちゃんと元の形に戻る。そういう意味で、日常生活のなかの道具のような感覚で服を作っている部分があって。毎シーズン、「新しいものを作ってやるぞ」と思っているわけでもなく。実は1月にパリでショーをしようと考えたこともあるのですが、そこに向けて逆算すると8月に真冬のことを考えなくてはいけない。それは身体的にも感覚的にもどうしても自分には難しいんです。昼ご飯を食べている時に「夜ご飯は何が食べたい?」と聞かれて、急に夜ご飯のことを考えさせられるような感じになってしまう。
喜多尾 小森さんのなかでは、リアリティを服にどう落とし込むかが絶対なんでしょうね。服を着るモチベーションって、ある種、欲求を満たす行為です。生活の中で「こうだと助かる」とか「これがあると気持ちがアガる」とかいう実感がないと、気持ち的にもフィットしない。
小森 人を感動させたい、驚かせたいという欲求はあるので、ショーに興味がないわけではないんです。音楽のライブやスポーツのように、人が躍動する場面を生で見ることがいちばん興奮する体験でもありますから。服でそれを表現するとランウェイショーになるだろうとは思います。ただ、東京で生活している今の自分には全くタイミングが合致してないんです。そこは自分の中でもずっと問い続けているところです。
喜多尾 今はなんでもスマホで見て体験したような気になるけれど、服を着るという行為は実際に袖を通すものだから、すごくアナログな体験ですよね。なかでも素材は身体でダイレクトに感じやすいし、時間の経過や温度帯によって、一日のなかで心地よさが変化していくのも当たり前のこと。コモリの服は、そういう繊細さにハマる服でもあると思います。
スタイルと雰囲気小森 素材でいえば、湿度の問題って意外なほどに重要です。洋服はそもそも湿度の低い国の人たちが作ったものがベースにある。例えば英国の有名なシャツ生地にしても、織りの密度が詰まりすぎて、高温多湿の日本だと呼吸できなくて、夏に着るのはけっこう辛い。素材にこだわるというよりも、単に着て心地いいかどうかという、必然性のほうを大事にはしています。
喜多尾 そこは僕も同意します。何を着るかを考える時に、僕は温度や湿度を読むことをすごく大事にするタイプです。それが欠落すると、なんとなく調子が悪くなるというか、まずは快適であるということが担保されていないと、服は楽しめない。ことさら今の若い人たちは、世代的に様々なことを我慢しないぶん、快適であるということに対して、より敏感な気がします。
小森 着心地ももちろん大事ですけれど、服を着たときに、その人の在り方が周りからどう見えるかという部分も、いつも気にしています。どこか別の土地に行った時に、着ているものでわざわざ浮きたくない。その土地に住んでいる人のように、自然に馴染むというのが理想です。そう考えていくと、スーツケースに入れていくのは黒と白系が基本。日差しが強ければ白T、夜は黒を多めにと、その2色の配分でだいたい事足りる。例えば冬のパリにダブルのカシミヤコートを着て行けば、高級街でも気後れしないし、蚤の市にも行けるし、レストランでも対応が丁寧になる。いかに最小限でいられるかということも、常に頭のなかにあります。
喜多尾 コモリは黒とか白がベースにあって、たまにネイビーが入ってくるでしょう。僕はそのなかでダークネイビーがすごく好き。でもネイビーが多くなってしまうと、それはそれでまた雰囲気が変わっちゃいますよね。
小森 自分の好きなネイビーは再現度が難しいんです。染屋さん泣かせというか、ネイビーの色味の塩梅を見誤ると全く着たくない服になってしまう。結局、デザインにしても、なにか新しいものをやらなきゃと思う時もあるんですが、新しいデザインができたと思っても、「じゃあそれを着たいのか?」といったらそれはまた話が別で。前のシーズンと何も変わっていないのもつまらないし、かといってやりすぎると気持ち悪いし。毎日がそんな葛藤の連続です。
喜多尾 コモリの服には、男くささと同時に「照れ」のようなものがあると僕は感じています。キメすぎず、ハズしを許容しながら、ほんのりと色気が滲むような。1980~90年代のヨウジヤマモトがコレクションで見せていた男性像の現代版ともいえる存在に見えます。
小森 見慣れない服を作りたいわけじゃなくて、最終的には、着る人が好きなように味付けしてくださいという感覚です。服を着て、その人が置かれた場所、時間、動きなどで生じるシワなどを含めて見た時に、スタイルが自然と立ち上がるような。そんな想像をしながら作っています。そこまでいって初めて、服をデザインするという行為が完成するんじゃないかと思うので。
喜多尾 「スタイル」や「雰囲気」とはまさにそういうことなんでしょうね。うまく着崩すということは、雰囲気を作ると同義です。デザイナーってやっぱり魔法使いみたいですよね。
小森 先日、新宿のゴールデン街で飲んだあとに、パーク ハイアット 東京のバーに行く機会がありました。自分の服はどちらの場所にも馴染むんです。あくまで体感ですけれど、自分が行きたい場所であれば、どこにでも馴染む服を作りたいという思いは昔から変わらないです。
喜多尾 そんな両極端の場所にちゃんとハマるというのが実にコモリらしいですよね。それが今の新宿だというのもすごくいい(笑)。
小森 そうなんです。ゴールデン街に行くと、なぜかホッとするんです(笑)。
小森啓二郎/KEIJIRO KOMORI1976年生まれ、東京都出身。大手セレクトショップでデザイナーとして勤務後、2011年より「COMOLI」を始動。独自の審美眼とスタイルが幅広い共感を呼ぶ。www.comoli.jp
喜多尾祥之/YOSHIYUKI KITAO1965年生まれ、東京都出身。1980年代よりスタイリストとして活躍。雑誌や広告、俳優などのビジュアルディレクションを手がける。本特集ページのスタイリングを担当。
PHOTOGRAPHS BY TARO MIZUTANI
STYLED BY YOSHIYUKI KITAO
HAIR STYLED & MAKE-UP BY KENICHI YAGUCHI
WORDS BY SATOKO HATAKEYAMA
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