計27台がエントリーし、国内外のさまざまな規格の車両がしのぎを削るスーパーGT GT300クラス。今季は既に2レースが終了したが、その中で新型車両を走らせてポテンシャルの片鱗を見せつけているのが、D'station Racingだ。
かつては2017年~2020年にGT300クラスを戦っていたD'station Racingは、2021年から星野敏オーナー、そしてチームの夢でもあったWEC(世界耐久選手権)ル・マン24時間レース参戦を実現。アストンマーティンのサポートを受けながら、同社との関係を深めていった。
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その一方で「縁があって自社チームとしてスーパーGTに参戦できる状況になれば、いつでも参戦できるような準備をしていた」とのことで、2024年シーズンに向けては晴れて参戦権を獲得。これまでとは違い完全な自社チームとして、長期的なコミットを前提としたGT300カムバックを果たした。
しかも今シーズンに向けては新型車両が投入された。その車両とは、アストンマーティンの新型ヴァンテージGT3。ドライバーであり、チームのマネージングディレクターも務める藤井誠暢によると、新型ヴァンテージGT3は足回りやエアロダイナミクスが刷新されており、「スタビリティが上がってコーナリングのスピードが前モデルに対して飛躍的に向上しました」とのこと。今季第2戦富士でスーパーGTデビューを果たしたチャーリー・ファグも従来型と比較して「バランスがよりニュートラルになって、より予測可能になった」と語る。
その新型ヴァンテージはテストから好タイムをマークするなどその性能の高さを伺わせていたが、大きなインパクトを残したのが第2戦富士だった。
同レースの予選では、Q1で藤井が好タイムをマークするも1コーナーでの4輪脱輪をとられてベストタイム抹消。Q2では下位グリッドを決める“ロワー17”に回る格好となったが、そこでファグが1分35秒835という驚異的なラップを叩き出した。これはポールポジションを獲得したJLOCランボルギーニでも到達できなかった領域で、予選全体での最速タイムとなった。
Q1、Q2の合算タイムで22番手スタートとなったD'station Racingの777号車は決勝レースでポイント圏内目前まで追い上げていたが、レース中に計3度のタイヤトラブルが発生してしまい、16位に終わった。
しかしながら藤井は、タイヤに関しては全く悲観していない様子だった。むしろダンロップタイヤの性能の高さに舌を巻いており、チームとしてタイヤの使い方をより良く理解して調整をすれば「100点で使い切れるタイヤだと思う」と語った。予選だけでなく決勝でも最速ラップを叩き出したファグも、その要因を尋ねた時には「ダンロップタイヤがクルマとうまくマッチしている。最大限の力を引き出せているのは、タイヤがまず大きいと思っている」と開口一番ダンロップタイヤを称賛していた。
「富士はクルマの相性も良いですが、一番はタイヤですね。ダンロップさんのタイヤがとにかく良かったんです」
藤井はそう語る。
「決勝ではバーストもありましたが、それは耐摩耗で悪かったわけではなく、キャンバーなど、最終的には僕たちの方でも見直さなければいけないタイヤの使い方がありました。タイヤ自体はめちゃくちゃ良くて、ピーク(グリップ)もあるしロングランも良かったです。だからタイヤに対してはすごくポジティブです」
週末に行なわれる第3戦は、前戦と同じ3時間レースで、舞台はタイヤへの入力の大きい鈴鹿サーキット。藤井は鈴鹿に向けては未知数な部分もあるとしつつも、「富士だけで言えば、タイヤ自体のポテンシャルは高かったですが、我々の理解度が低く、もう少しタイヤを守る方向にしていれば問題なかったという解釈です」とのことだ。ただGT300を走るGT3車両はマルチメイクタイヤの性能によるスピードアップとBoP(性能調整)やサクセスウエイトによる重量追加の合わせ技で「世界で一番重くて速いGT3」になっており、タイヤの扱いもその分非常にセンシティブで難しくなっているという。
とはいえ、ダンロップタイヤのポテンシャルはとても高いと繰り返す藤井。タイヤ自体で一定のグリップが確保できていることから、ダウンフォースを削るなど車両セットアップの面で“攻める”ことができるのも利点だと語った。
「シーズンオフから旧型のクルマでタイヤテストをしていたのですが、ダンロップさんのタイヤが非常に良いんですよ。だからダウンフォースを削ることができていますし、クルマの方でも攻めていけます」
「富士でもストレートスピードを稼ぎたいので、かなりダウンフォースを削っていました。それでタイヤがグリップしなければ乗ることができませんが、僕たちはどんどんそういう方向にすることができます」
「そこ(タイヤの使い方)を改善すれば100点で使い切れるタイヤだと思うので、本当に何のネガティブコメントもありません」
今季は藤井、ファグ共にまず1勝を挙げることが目標だと語るD'station Racing。藤井もあらゆる要素が噛み合えば優勝を狙えるはずだと語っていたが、彼らの現在のパッケージにそのポテンシャルがあることは間違いなさそうだ。
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