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シェアの時代に、若者たちが愛車のあるライフスタイルを選択する理由

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シェアの時代に、若者たちが愛車のあるライフスタイルを選択する理由

2025年4月20日(日)、第二回「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」が横浜赤レンガ倉庫にて開催される。イベント名が示す通り、イベントの主役は若者と車だ。車離れが進むなか、なぜ若者たちがあえて愛車をもつライフスタイルを選択するのか、イベントを通じてその理由が見えてきた。

YOKOHAMA CAR SESSION|ヨコハマ カー セッション

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2025年4月20日(日)、第二回「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」が横浜赤レンガ倉庫にて開催される。イベント名が示す通り、イベントの主役は若者と車だ。車離れが進むなか、なぜ若者たちがあえて愛車をもつライフスタイルを選択するのか、イベントを通じてその理由が見えてきた。

Text by WASEDA Kosaku|Photographs by MASHIKO Yusuke

車と人、人と人を繋ぐ文化装置

「若者の自動車離れ」という言葉がメディア・世間で言われるようになって久しい。その理由はさまざまだ。ひとつは趣味の多様化、そしてゲームやインターネットなどの普及によるネット体験があげられるだろう。

2024年3月に初めて開催された「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」は、全国津々浦々で愛車とのカーライフを楽しんでいる若者たちが愛車とともに横浜赤レンガ倉庫に集結した。メーカー・年式は多種多様。第一回ということでイベント告知も主催者らによる声掛けによって若者たちが集めらている。参加資格は35歳以下というだけ。極めてライトなものだった。

最終的にネオクラシックと呼ばれる80年代から90年代の車両をはじめ、2000年代、古くは60年代までの国産・輸入車約100台が並んだ。車両に注目すると、どれもこだわって乗られているのがわかる。車種の選び方もさることながら、グレードや色味、カスタムなどに一捻り加えられた車両が多いように思えた。

こうしたイベントでは洗車を終えたばかりの車が並び、ボンネットを開けてエンジンを見せ合い、語られるのはチューンの内容やこだわりのパーツ、そしてその車にまつわる思い出だ。いわば、クルマという「個」を媒介にして、リアルな場で「感情」のシェアを生み出している。

この現象は、SNS全盛の時代においてなぜリアルな集まりが必要なのかという問いを突きつける。

集まった世代は、デジタルネイティブと呼ばれる。Twitter(現X)やInstagram、TikTokといったSNSを自在に使いこなし、情報発信や共感のやり取りも日常的に行っている。その一方で、彼らがリアルなイベントに足を運び、自らの車を持ち寄って展示することには、SNSでは得られない「体感」や「思想や記憶の共有」がある。

SNSは便利だが、匿名性や編集された自己表現の場になりやすい。加工された写真や断片的なコメントだけでは、本当の「好き」や「こだわり」を伝えきるのが難しい。対してリアルなイベントでは、塗装の質感やマフラー音、内装の手触り、そういった五感を通じた“実在する熱量”がダイレクトに伝わる。目の前にある車を囲んで話すことで、「あなたの車、かっこいいですね」「このパーツ、どこで手に入れたんですか?」といったやりとりが自然と生まれ、人間関係の質も一気に深まっていく。

さらに、こうしたイベントでは偶然の出会いや、思わぬ知識の交換も起きやすい。フォロワー数や“いいね”の数ではなく、実際の言葉と表情を通じて人と人がつながる。若者たちは、ネットを通じて築いた関係を、リアルな場で確かめ、再構築し、より強固なコミュニティを育てているのだ。

都市部では交通網が発達し、カーシェアやサブスクリプションといった所有以外の選択肢も増えた。維持費や駐車場代、環境意識の高まりもあり、車を“持たない”ことが合理的な判断として受け入れられている。しかし、だからこそ「敢えて所有する」という選択には、より強い意志と明確な理由が込められる。

車離れという大きな流れの中であえて逆を行く若者たちは、単なるノスタルジーではなく、新しい意味を自ら見出しているのだ。

リアルイベントは、ただ車を見せる場ではない。デジタルの海に浮かぶリアルな灯台のような存在であり、個人の情熱と他者とのつながりが交ざりあう空間だ。SNSを背景に持つからこそ、リアルな出会いが尊くなり、「所有」という重さが価値を帯びる。

車を通じて語られるのは、性能やスペックだけではない。そこには「自分は何を大切にしているか」「どう生きていきたいか」という静かなメッセージが込められているのだ。若者たちは、ただ愛車を並べているのではない。彼らは、自分自身の物語を、エンジンの音やボディの艶に託して、確かに発信しているのだ。

「YOKOHAMA CAR SESSION」は、モノから始まるストーリー、なによりも人と人がつながるという、尊い営みの魅力を若者たちに認識させた。SNSの普及やコロナ禍などを得て、若者たちが改めて認識した「リアル」の愉しみ方。そして若者の車文化そのものを発信する文化装置として機能しているのだった。

主催者たちに聞くYOKOHAMA CAR SESSION

主催者たちに聞くYOKOHAMA CAR SESSION

重視するのは車より人

(左)甲野さん(中)本田さん(右)後藤さん

本イベントを主催したのは自身もカーライフを愉しむ20代の3人。YOKOHAMA CAR SESSIONを開催するにいたる経緯や今後について話を伺った。

後藤さん

後藤さん(以下後藤):実は、最初は横浜出身として赤レンガ倉庫の前に愛車を並べてみたいという欲だけがあったんです。(笑)とはいえ、それはただのわがままになってしまう。「テーマ」が必要だったんですね。だとすると、同世代のカーライフを愉しんでいる人たちを集めれば、赤レンガという場所も相まって発信力があると考えました。そこで自動車イベントの主催経験がある甲野と本田に相談することにしたんです。

甲野さん(以下甲野):いままで自動車イベントの主催経験はありますが、いずれも人里離れた場所。横浜、しかも赤レンガ倉庫でやると相談を受けたときは驚きました。面白そうだけど、さすがに難しいと。しかし、若者たちが車をこんなに楽しんでいるんだぞというのを発信する場として赤レンガ倉庫はぴったりでした。一般の人の目に触れるというところが大きいですね。

本田さん(以下本田):赤レンガ倉庫での自動車イベント自体は前例があったんです。ヒストリックカーイベントだったり、ポルシェの限定車を展示するものだったり。しかしそれはメディアやインポーターなどのバックアップがついている。我々なんて若いから正直お金もコネもない。でもやってみたいという強い気持ちはあったので、とりあえず甲野にコストを試算してもらいました。

甲野さん

本田さん

後藤:私は本職がイベントの設営や設計をしています。赤レンガの敷地を借りる費用がこれくらいなら、1台につき展示料をこれくらい取ればなんとかなるのではないかと。するとちょっとずつ現実みを帯びてきたんです。

甲野:イベント経験がある私と本田、そしてイベントデザインを職にしている後藤が協力すれば良いイベントになりそうだという結論に至りました。

本田:そこからはどのような「若者のカーライフ」を発信するのか表現方法を考えました。やはり多様性ですね。ただし、現実問題として若者が維持できる車を選定すると全部同じような車が並んでしまう。見せるんだったら全部見せにいかなければ、という思いがありました。

甲野:とりあえず今回は第1回目ということで、事前に出展車のオーナーに声かける前にリストアップして、展示車がバラバラになるように心がけました。イベントの目玉はこの車です、のようなものはありません。確かにカウンタックのようなスーパーカーは誰もが認めるヒーローのような存在で人目を惹きます。しかしわれわれには「学生の内は難しいかもしれないけれど、社会人になって頑張れば自分も買えるかも」という現実的な夢を提案したいという気持ちがありました。

後藤:とはいえ、車種というよりは人。人と車の関係性やストーリーが垣間見える方々に声を掛けました。所詮車はモノで道具。それにいかに愛情や魂が込められているかを重視しました。

限界を引き上げてくれた周りの存在

後藤:開催するにあたってやることはたくさんありました。許可取りや展示位置の決定、誘導までも自分たちでなんとかしなければならない。いろいろな方々に協力してもらってなんとか形にすることができました。

それこそ赤レンガでヒストリックカーのイベントの代表をやられている方に相談をしに行ったんです。するととても親身になってご協力いただきました。開催までのフローはこちらで作ってそれに対してアドバイスをいただいたり、スタッフが使用するトランシーバーも無償で貸していただきました。

本田:出展ブースのショップさんたちも、一緒にやりませんかとお話したら、本当に皆さん「ぜひやらせてください!」と返事いただいて。こちらがお金を出すわけでもないのに、本当にありがたい限りです。

甲野:若者だけでは限界がある。その壁を取っ払って引き上げてくれた大人の方々の存在で開催することができました。

後藤:変な言い方になってしまいますが「やっぱり大人ってすごいな」という気持ちになりましたね。

甲野:われわれ3人も年を重ねていくなかで若者じゃなくなったときに、「あんな大人になりたい」って強く思いました。

本田:そう。やっぱり文化というのは伝承していかなければならない。それがないと車の面白さというのは廃れてしまう。われわれもいずれは若者たちに教える立場になると思うのです。

後藤:その時に若者を支えよう、今回受けた恩はしっかりと返そうと思いました。その連鎖が生まれたらきっと若者の自動車文化というのは今後も続いていくと思います。今回のイベントの展示資格は35歳以下。われわれ3人も資格がなくなるときが絶対に来ます。イベントを通じて、共感してくれた若者にバトンタッチできれば嬉しいです。

文化の火種は“情熱”にほかならない

「文化」という言葉からは、歴史の重みや関わることのハードルの高さを感じさせる。しかし、この「YOKOHAMA CAR SESSION」の発端からイベントを成功させるまでの経緯を追うと、文化の醸成には何よりも情熱が大切だということに気づかされる。

そこに損得は何もなく、ただそれが好きという情熱があれば、創造性、行動がついてくる。そして人を巻き込み、より強く大きな力となっていく。文化は人が作り、そして伝えていくものだ。

主催者3人からは、「人」との関わりについての話が多くでた。展示するオーナー、サポートメンバー、出展ブースの企業、相談に乗った大人たち、それぞれの協力があったからこそイベントを無事に終わらせることができた、と。

その協力した人々の姿勢も、主催者3人の人柄もさることながら、その情熱に感化され、共感したからこそ生まれたものではないだろうか。このような情熱を持った車好きな若者がいる限り、自動車文化は廃れない、廃れるはずがないと感じた。

第二回も同じく横浜赤レンガ倉庫での開催が決定している。前回に比べ、展示車、出展ブースも拡充し、イベントとしてさらなるアップデートが図られ、見にきたギャラリーも楽しめるよう工夫されているようだ。若者の車文化の創出は、着々と進んでいる。ぜひ会場を訪れ、その情熱に触れてみてもらいたい。

第二回 YOKOHAMA CAR SESSION

開催日|2025年4月20日(日)

時間|9:00~17:00

会場|横浜赤レンガ倉庫 イベント広場

詳細|https://www.yokohama-akarenga.jp/event/detail/1097

YOKOHAMA CAR SESSION

https://yokohamacarsession.wixsite.com/yokohama-car-sessi-1


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