鈴鹿サーキットで開催されている2024年F1第4戦日本GP。4月6日(土)に行われた予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が自身通算36回目、日本GPとしては3年連続となるポールポジションを獲得しました。今回は母国で初、今季3度目のQ3進出を果たした角田裕毅(RB)の予選の戦いなど、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で予選を振り返ります。
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フェルスタッペンが鈴鹿で3年連続ポール獲得。角田裕毅、母国でQ3進出決める【予選レポート/F1第4戦】
10番手で予選を終えた裕毅は、本当に良い仕事をしたと思います。今季はこれまでの3戦中2戦でQ3進出を果たしており、その上で迎えた母国グランプリですから、かなりプレッシャーもあったかと思います。ただ、そのプレッシャーをしっかりと力に変え、ミスなくアタックをまとめてQ3に進出しました。これは明日の決勝での入賞に向けて非常にポジティブな結果ですし、また日本のモータースポーツファンにとっても非常にポジティブなことだと思います。
やはり、期待に応えることはすごく大事なことです。今回もその期待に応えられたということは、さらなる伸びしろや、さらなる可能性に繋がっていくので、裕毅にとっても非常にプロダクティブ(生産的)な一日だったと思います。
チームメイトのダニエル・リカルドも11番手なので、RBの2台は結構クルマがまとまっているように見えます。リカルドに関しても今シーズンの予選としては、いちばん良い内容でした。良い走りができているということは、つまりクルマのバランスがきちんと取れているということです。
ただ、トップ5のチームに対してはまだまだタイム差があります。明日の決勝に向けては、まだタイヤのデグラデーション(性能劣化)の状況などを含め、私も調べるべきことがたくさんありますが、裕毅には戦略などでトップ5チームとのタイム差をうまく補い、ポイントを獲得することに集中してもらいたいです。
さて、これまで予選は速いことが多かったフェラーリが、今回の日本GPではあまりタイムを上げれていません。予選Q3では、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が他車とタイミングをずらし、他車がピットに収まってコースがクリアになった隙にアタックを行う作戦を採りました。
Q3でルクレールはこの1アタックのみで8番手。戦略でやったのだとしたら『どうなのかな?』と思う部分はあります。
今年の日本GPは金曜のフリー走行2回目(FP2)で降雨があり、クルマ的にはあまり十分なテストができていません。そんな状況で、フェラーリはレース重視のマシンで戦う戦略を選んだのか否か、という部分に私は注目しています。
フェラーリ勢はこれまでは予選では速さをみせ、決勝がイマイチという展開が多かっただけに、今回は真逆の展開になる可能性もありますからね。
そんな予選ではレッドブルがワンツーとなる中、ランド・ノリス(マクラーレン)が3番手となりました。ノリスは今回すごく乗れているように感じます。おそらくは鈴鹿サーキットのようなコースも好きなのだと思いますけど、そもそも彼は高速コーナーでのクルマの挙動やGから、タイムを上げることに繋がる情報をきちんと得ることができるドライバーです。
元々スピード感覚に優れているドライバーなので、今回の予選3番手は、ノリスのいちばん良い部分が出た結果だと思います。なお、マクラーレンのマシンはセクター1が速かったので、少しダウンフォースを付け気味だったように感じます。それにしても久しぶりに気持ちよく高速コーナーを攻め切っているノリスの痛快な走りを見たので、私も気持ちがよかったですね。
タイヤのデグラデーションもどうなるかというところで、決勝でノリスがどこまでいけるかは予想が難しいです。ただ、予選で良い走りを見せてくれたという事実は、今回の日本GPトピックスのひとつになると思います。表彰台争いには絡んでくるはずですから、引き続き楽しみな存在ですね。
最後に、一日前の話題ですが、岩佐歩夢(RB)がフリー走行1回目(FP1)に出走しました。彼は本当にブレないといいますか、ヨーロッパに行って学んだ仕事の仕方を貫いていたように思います。
鈴鹿サーキットでのFP1デビューということで、歩夢もかなりのプレッシャーがあったかと思います。ですが、そのなかで『何をやるべきか』を彼らしく組み立て、その組み立てたとおりに終えることができていました。
そういった部分で、歩夢は手堅い評価をしっかりと得ることができたと思います。新人のFP1発出走といったときには『ミスをしない』ことが一番重要です。歩夢はミスせず、タイムも本人が言うには想定より良かったとのことなので、今後に向けてすごくポジティブなFP1だったと思います。
私としては、歩夢の鈴鹿サーキットレーシングスクール(現:ホンダレーシングスクール鈴鹿)時代から、FIA F3、FIA F2と、彼の仕事ぶりを見てたきたので、感慨深いですね。本当に今回の走りが“始まり”になってほしいと思います。今後は、さらに大きなチャンスを得られることを本当に期待しています。
今回のFP1で本当に素晴らしい仕事をしてくれました。ただ、それは終わったことなので一旦忘れて、次の大きなチャンスを得るために、今季主戦場とする全日本スーパーフォーミュラ選手権で結果を出すことに、引き続き集中してほしいと思います。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿(HRS)のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24
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