1967年のデイトナで勝利した330 P4
俳優のマット・デイモン氏が主演した2019年の映画、「栄光のル・マン」が記憶にある読者は少なくないと思う。フォードのワークスチームとキャロル・シェルビー氏が大西洋を渡り、フェラーリをル・マン24時間レースで翻弄するストーリーだ。
【画像】21世紀の偉業を1台に凝縮 フェラーリ・デイトナSP3 超特別なスーパーカーたち 全175枚
「栄光のデイトナ」は、製作されないのだろうか。その翌年、1967年のデイトナ24時間レースでは、フェラーリがフォードへリベンジを果たしている。
大西洋を西に向かったフェラーリのワークスチームは、レーシングカーの330 P4を1台と、330 P3を改造した330 P4の2台を擁立。フォードは7.0Lエンジンを搭載したGT40 MkIIを6台用意し迎え撃つものの、完敗している。
この勝利は、フェラーリの伝説になった。クルマ好きの間にも強い記憶を植え付けた。その後に登場した公道用モデル、フェラーリ365 GTB/4が、デイトナと呼ばれるようになったきっかけといえる。
365 GTB/4を、フェラーリは正式にはデイトナと呼んではいない。しかし、今回試乗したイエローのスーパーカーは、デイトナSP3と名付けられている。
大声で叫びたいほど美しい 栄光のマシンがモチーフ
フェラーリは、イーコナと呼ばれる、少量生産モデル・プロジェクトを立ち上げた。812スーパーファストがベースのバルケッタ、モンツァSP1とSP2が、既にリリースされている。その3番目となるのが、デイトナSP3だ。
スタイリングは、先述の栄光のマシン、330 P4がモチーフであることは間違いない。美しくカーブを描くフェンダーラインやテールのスリットなどは、あからさまにそうだろう。フロントガラスとルーフが備わり、日常性も担保されている。
筆者は、330 P4が世界で最も美しいクルマだと考えてきた。だが、デイトナSP3も劣らず大声で叫びたいほど美しい。2013年のラ・フェラーリ以来となる、最高傑作ではないだろうか。驚くほどワイドだが。
確かに、イタリア・マラネロ生まれのクルマはどれも美しい。それでも、ローマや812 スーパーファストを、何時間も眺めてしまう人はそこまで多くないと思う。
これほど印象的で斬新的なスタイリングは、永遠に色褪せないはず。遠くから眺めているだけでも、深い喜びが湧いてくる。
6.5L NA V12にカーボン製モノコック
美しいだけではない。これまでの21世紀のフェラーリの偉業が、1台に凝縮されているといっても過言ではない。
シャシーは、ラ・フェラーリ譲りのカーボンファイバー製モノコック。ミドシップされるエンジンは、812 コンペティツィオーネ譲りの6.5L自然吸気V型12気筒。それらが、芸術品のようなボディで包み込まれている。
インテリアデザインは、シンプルで研ぎ澄まされている。しっかり、走りが意識されている。170万ポンド(約3億3150万円)という英国価格へ、見合うものではないかもしれないが。
ドアはディヘドラルで、乗降性が良いわけではない。筆者は何度も頭をドアやルーフにぶつけてしまった。シートは、ラ・フェラーリと同じくシャシーへ固定されている。レバーを引いて、ペダルボックスの位置を調整すれば、理想的な運転姿勢へ落ち着ける。
フロントノーズの下には、小さな収納がある。しかし、1泊2日用のバッグが入るほどではない。
殆どの基準で信じられないほどの速さ
デイトナSP3は、フェラーリ296 GTBが7台買えるお値段だが、それより速いとはいえないはず。パワーウエイトレシオはほぼ同じながら、他方はツインターボでハイブリッドの3.0L V6エンジンを積む。自然吸気エンジンのパワー特性は、それに及ばない。
もっとも、速さを比べるべきモデルではないだろう。それを理解するフェラーリは、イタリア・フィオラノ・サーキットでのラップタイムを公表していない。最速のタイムから、だいぶ離れていると予想する。
V8ツインターボのマクラーレン720 Sと比べても、炸裂するパワー感は控えめ。サウンドも、より聴き応えのあるフェラーリは存在する。それでも公道では、殆どの基準で信じられないほどの速さを披露することは事実だ。
V12エンジンが、最大トルクを発揮するのは7250rpmから。積極的に回す必要はあるが、その手前の6000rpmから点火時期が変化し、9500rpmまでの体感はエキサイティングそのもの。特有の鋭い美声を響かせながら、パワーが放たれる。
同時に、穏やかに走るのも苦手ではない。限定生産のエキゾチックなスーパーカーだが、気難しさは驚くほどない。
印象的な洗練性 無二の運転体験が待っている
シャシーも素晴らしい。乾燥したアスファルトでは、公道では必要ないほどのグリップ力を頼れる。ステアリングは、やや旧来的なダイレクト感があり、少し軽すぎるとしても。
乗り心地は充分快適といえ、特注される極太のピレリ・タイヤが跳ね上げる砂利の音を除いて、洗練性は印象的なほど高い。
濡れた滑りやすそうな路面で、マネッティーノ・ダイヤルを時計回りに回しきれば、線形的にスライドし始める。相応の勇気と向こう見ずさがあれば、だが。全幅がもう少し細身なら、存分に攻められたように思う。
試乗したのはコース幅の広いサーキットだったが、速度域が増しても、ボディがひと回り小さく感じられる気配はなかった。最大限に秘めた能力を発揮させることができれば、唯一無二の運転体験が待っているに違いない。
少なくとも、安全な環境で可能な限り速く運転する機会を得られて、筆者は幸せ者だ。296 GTBの方が速くて扱いやすく、費用対効果は高いかもしれない。しかし、そんな比較は野暮だろう。
全身で堪能するために誕生したフェラーリ
デイトナSP3は、五感を深く満たす。全身で堪能するために、誕生したといえる。
ひたすら美しく、速く走れ、美声を奏でる、希少なフェラーリ。実態は、330 P4と近いわけではない。それでも、幸運にも購入することができたビリオネアが、満足しないとは思えない。栄光のデイトナを名乗るのに、ふさわしいと思う。
◯:極めて特別なフェラーリ 840psを発揮する自然吸気のV12エンジン 素晴らしいスタイリング
△:車内が狭め 圧倒的に速いわけではない 完売状態
フェラーリ・デイトナSP3(欧州仕様)のスペック
英国価格:170万ポンド(約3億3150万円)
全長:4686mm
全幅:2050mm
全高:1142mm
最高速度:339km/h
0-100km/h加速:2.9秒
燃費:6.2km/L
CO2排出量:368g/km
乾燥重量:1485kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:840ps/9250rpm
最大トルク:70.9kg-m/7250rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)
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