ボクシーでレトロな見た目でも電気自動車
メルセデス・ベンツGクラス、G 580 EQテクノロジーがグレートブリテン島へやって来た。車重は3209kgにも達する。大きな衝撃を与える、新モデルといっていい。
【画像】4モーターのメルセデス・ベンツGクラス EQテクノロジー エンジン版ゲレンデ ダカール・レプリカも 全147枚
同社が開発で重視したことは、何よりGクラスであること。電動なことは、1つのバリエーションだと捉えて欲しいと考えている。とはいえ、メルセデスAMG G 63よりトルクフルで、悪路での走破性は高い。この世に必要な性能を、越えているように思う。
ボクシーな見た目には、1970年代の、昭和な香りが漂う。同じ特徴を持つオフローダーには、トヨタ・ランドクルーザー 250やランドローバー・ディフェンダーといった例がある。
バッテリーEVのSUVには、BMW iXやアウディQ8 e-トロンなどがある。だが、スタイリングはだいぶモダン。そのイイトコドリといえそうな、G 580 EQテクノロジー。ラグジュアリーな選択肢として、唯一の解釈といえそうだ。
スタイリングは、基本的にエンジンで走るGクラスと同等。ブルーのボディトリムが、差別化のわかりやすい要素となる。
注意深く観察すると、ボンネットは空力特性を改善するため、僅かにラインが持ち上げられている。ルーフスポイラーとAピラーのディフューザー、リア・ホイールアーチ前部のエアインテークなども、違いとなる。
英国仕様では、ホイールは20インチが標準。インチダウンでオールテレーンタイヤを履かせたい場合は、オプションとなる。テールゲートのスペアタイヤ風ケースは、充電ケーブルの収納ボックス。本物のスペアタイヤもオプションだ。
バッテリーは116kWh 内装はエンジン版と変わらず
ラダーフレームとボディが別体の構造は、Gクラスと共有。116kWhの駆動用バッテリーは、メルセデス・ベンツEQS SUVと同じセルだが、ユニットの形状は異なり、左右のシャシーレールの間に搭載される。両端には、冷却システムが実装される。
クロスブレースが除去され、駆動用バッテリーのケースはフレームの一部もなす。悪路を想定し、下面はカーボンファイバー製のプレートで保護される。
キャビンのエアベントが拡大され、そこまで勢い良くドアを閉めなくても、ラッチが噛み合うようになった。おなじみの、ガシャンという音で。
インテリアもGクラス。背中を起こした運転姿勢で、直立した長方形のフロントガラスが前面に広がる。足元の空間は狭め。実は全長4624mmと、そこまで巨大なわけではない。後方視界は、充電ケーブル・ボックスが遮る。
12.3インチのツインモニター・パネルがダッシュボードに載り、片側はMBUXインフォテインメント用、他方はメーター用となる。ステアリングホイールにはタッチセンサーがレイアウトされるが、押しやすいものの、スクロールしにくい。
センターコンソール側には、実際に押せるハードスイッチが並ぶエアコン用の操作パネル。従来どおり扱いやすい。ドアミラーの角度も、ドア側のボタンで調整できる。
荷室容量は555L。ボンネット側に収納は用意されない。クルマ全体での最大許容重量は3500kgで、最大積載量は415kgに制限される。家族全員とスキー道具を載せたら、400kgに迫るはず。
4モーターで587ps 3.2tを感じさせない走り
パワートレインは、前後に2基づつの4モーター。システム総合での最高出力は587ps、最大トルクは118.5kg-mがうたわれる。モーター毎に個別のリダクション・ギアとローレンジ・ギアが組まれ、それぞれ1本のタイヤを受け持つ。
0-100km/h加速は4.7秒で、ダッシュ力は豪快。だが、最高速度は180km/hだ。
アクセルペダルの反応は良く煮詰められており、ドライブモードによる変化度は大きい。ブレーキの反応も漸進的で滑らか。回生ブレーキの強さは、ステアリングホイール裏のパドルで変更できる。
ボンネット内に実装されるG-ロア・システムは、AMG風のV8サウンドを人工的に模したもの。かなりリアルで、これがバッテリーEVだと知らなければ、ガソリンで走るGクラスだと勘違いする可能性はある。だが、最終的にはオフが良いと筆者は思ったが。
サスペンションは、コイルスプリングにアダプティブダンパーという構成で、フロントが独立懸架式、リアは再設計されたリジットアクスル。回頭性や乗り心地には重厚感を伴うものの、3.0tを軽く越える車重は感じさせない。
低速域では、路面の凹凸の影響を受けがち。シートやステアリングホイールを通じて、荒れた路面であることを感知できる。それでも、現代のピックアップトラックより洗練度は高い。パワートレインが静かなこともあり、風切り音は大きめだ。
大トルクで悪路性能は秀抜 360度ターンも可能
オフロードでの性能は、エンジンで走るGクラス以上。渡河水深は850mmと、それを凌駕する。
前後左右に独立した4モーターが、悪路では効果的。回転直後から最大トルクを利用でき、レスポンスはエンジン版より150倍も速いとか。デフロックに相当する機能を自在に切り替えられるだけでなく、タイヤ毎にロックさせたり、逆回転させることもできる。
戦車のように、その場でくるりと360度ターンすることも可能。平らな路面で、一度試してみるのは面白い。柔らかい砂地などでは、轟音とともに路面が大きくえぐられるが。
新しいG-ステアは、リアタイヤ内側の回転を抑え、外側の回転を高める機能。これにより、通常は13.6mある回転直径を縮小できる。ラリーカーの、ハンドブレーキターンとパワースライドを、同時に電気的に実行するものといえるだろう。
歩くような速度でステアリングホイールを思い切り切ると、効果的に働く。ぬかるんだヘアピンで試してみたが、驚くほど簡単に旋回してみせた。立木が入り乱れた森林や、狭い駐車道などで役立つに違いない。
悪路用のクルーズコントロールも備わる。どれも低速だが、速度は3段階から選べる。ペダルへ触れることなく、G 580が自動的にトラクションを調整し、ノシノシ進んでくれる。これらが融合した走破性は、お見事のヒトコト。車重が軽ければ、更に有能なはず。
Gクラスへ見事に合致する電動パワートレイン
一度の充電で走れる距離は、WLTP値で455kmがうたわれる。電費は3.3-3.5km/kWhと、優れるわけではない。それでも、AMG G 63なら6往復でガソリンタンクが空になるオフロードの峠道を、G 580なら1度の充電で14回も往復できるとか。
確かに、走行中にCO2は排出しない。それでも、Gクラスが富を象徴するようなオフローダーであることに変わりはない。本当に環境負荷を考えるなら、別のモデルを検討するべきかもしれない。
合理性を突き詰めれば、G 580が優秀だとは表現しにくいだろう。オンロードでのマナーは同価格帯のSUVに届かず、バッテリーEVとしては電費に優れず、お値段も高い。サイズを考えると、実用性が秀でているわけでもない。
しかし、それらも含めて、本物のGクラスらしい仕上がりにあることも事実。極めて正常進化だと感じる。高級で派手でレトロ。普通じゃないオフローダーに、電動パワートレインも見事に合致している。
◯:本物のGクラス 抜群の悪路性能 細部まで考え抜かれた仕上がり
△:お高めの価格 優れない電費効率 オフロードタイヤがオプション
メルセデス・ベンツ G 580 ウィズEQテクノロジー AMGライン・プレミアムプラス(英国仕様)のスペック
英国価格:15万4860ポンド(約3020万円)
全長:4624mm
全幅:1931mm
全高:1986mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:4.7秒
航続距離:455km
電費:3.3-3.5km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:3209kg
パワートレイン:クワッド永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:116.0kWh
急速充電能力:−kW
最高出力:587ps(システム総合)
最大トルク:118.5kg-m
ギアボックス:2速リダクション(四輪駆動)
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