ダイハツは2023年12月20日、2023年4月に発覚した社内認証試験での不正行為に対して、第三者委員会による調査が行なわれていたが、その調査報告書が公表され社内における認証試験で過去から現在まで25の試験項目で174件の不正行為が判明し、この結果を受けて国内販売モデル、海外での販売モデルを含め全車種の出荷を一時停止すると発表した。
不正行為が確認された車種は、生産を終了したものも含め、64車種・3エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)で、この中にはダイハツの車種に加え、トヨタ、マツダ、スバルへOEM供給をしている車種も含まれている。
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記者会見に出席した第初の奥平総一朗社長第三者委員会の調査の過程で、不正の恐れのある車種について、第三者委員会より一部情報提供を受け、ダイハツは安全性能・環境性能が法規基準を満たしているかを改めて社内で技術検証・実車試験などを実施し、確認を行なっている。
品質保証担当のダイハツの星加宏昌副社長ダイハツの開発を統括するトヨタの中嶋祐樹副社長その調査の段階で、ダイハツ ムーヴ、キャスト、トヨタ ピクシスジョイ、ダイハツ グランマックス、トヨタ タウンエース、マツダ ボンゴのエアバッグに関する試験において、量産品の「エアバッグ展開コンピューター(ECU)」が試験時に調達できず代替のエアバッグで試験を行なったという不正が判明。
技術検証を行なった結果、エアバッグの乗員保護性能に問題はなかったものの、検証を行なう中で、キャスト/ピクシスジョイの側面衝突試験における「乗員救出性に関する安全性能(ドアロックの外部からの解除)」が法規に適合していない可能性も判明。そのため技術検証と原因究明を行ない、速やかに必要な対応を実施するとしている。
その他の不正項目については、法規が定める性能基準を満たしていることを社内で確認するとともに、検証結果・プロセスの妥当性についても、第三者認証機関である「テュフ・ラインランド・ジャパン」が確認している。
また同日、国土交通省はダイハツから型式指定申請における不正行為に関する調査結果の報告を受けており、今後ダイハツへの立ち入り検査を行なうことになる。また同時に、国土交通省と自動車技術総合機構において、全ての現行生産車の基準適合性について技術的に検証を行なうと発表した。 その結果によっては型式認証が取り消され、ダイハツは改めて型式認証を取得する必要がある。
■ 不正行為の実情
今回の調査で、最も古い事例では1989年の不正行為が認められているが、全体の傾向としては、海外販売モデル、国内販売モデルの車種が拡大した2014年以降の期間で不正行為の件数が増加していることが明らかになった。
つまり、扱い車種が急激に増大し、同時に開発期間が短縮されている実情に対して、認証試験を担当する現場の人員が不足し、また開発期間が短縮されたことで、係長級のグループリーダーまでが不正に関与したとされている。
開発日程が最優先され、量産部品の入手を待って試験を行なう、あるいは試験条件を所定の条件で各種設定する時間を省略するために、一部の試験データを流用する、試験車両の仕様が試験条件に適合していないにもかかわらず試験を実施せざるを得ないために、事前に他のデータと差し替えるなどの事例が報告書に記載されている。
そして、部室長級以上の役職者が現場レベルの不正行為を指示し、あるいは黙認したという事例は確認されていないという。
報告書によれば、「短期開発は、他社との差別化要因であり、ダイハツの存在意義として開発部門の組織内で根付いたものであり、その結果、過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われるようになった。試験の過程で問題が生じた場合の対応を行なう余裕がない日程で開発スケジュールが組まれ、仮に問題が生じた場合であっても開発期間の延長は販売日程にまで影響を及ぼすことから、当初の開発スケジュールを柔軟に先送りすることは到底困難というのが実情であった。その結果、それらの不正行為に関与した担当者は、やむにやまれぬ状況に追い込まれて不正行為に及んだ」という。
また管理職が不正に関与していない理由は、「一番の要因としては、管理職が認証試験の実務や現場の状況に精通しておらず、また、報告や相談を行なっても認証試験の担当者が抱える問題の解決が期待できない結果、現場の担当者レベルで問題を抱え込まざるを得ない状況が生じた」という。
したがって、今回の不正行為の根源は短期開発を最優先、現場の声が届かないという経営体制や経営方針にあり、同時に現場と管理職の縦方向の乖離に加え、部署間の横の連携やコミュニケーションも不足し、認証試験は一発で合格して当たり前などの発想が強く、何か失敗があった場合には、部署や担当者に対する激しい叱責や非難が加えられるなどの企業風土にも大きな課題があるとされている。
このように見ると、他の自動車メーカーでの不正問題の事案と共通する製造企業内での問題点が浮き彫りになっていることがわかる。
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