近年ますます人気の上昇具合が顕著な全日本スーパーフォーミュラ選手権。文字通り日本最速を決めるレースだ。そのスーパーフォーミュラで、2026年に圧倒的な強さを誇っているのがホンダ勢DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの太田格之進だ。だが、もちろん注目の選手は太田だけに止まらない。同じホンダ勢にして古豪にNAKAJIMA RACING所属するイゴール・オオムラ・フラガも要チェックな選手だ。
文:段純恵/写真:SPS-J
絶好調の勢いさらに増す格之進! 喰らいつくフラガやザックの健闘
全日本スーパーフォーミュラ選手権は富士スピードウェイでの第4大会7戦を終了。まだ3大会5戦が残っているが、ここまで4勝を含む取りこぼしのなさでランキング首位を独走中の太田格之進(ダンディライアン)が今季タイトルをもはや手にしているといっても過言ではない。
速さ、強さ、冷静なレース運びと、新王者(予定)として不足のない太田だが、ホンダ勢のトップ・コンテンダーとしてIMSAやル・マン24時間に遠征、参戦しているのだから、国内の頂点に立ってもらわなきゃ困るというものである。
その太田よりも、富士大会で筆者の目を引いたのは実は他の選手だった。第6戦で予選PPを獲得し決勝で2位に入ったザック・オサリバン(TEAM IMPUL)と、延期されていた第3戦の代替レースで優勝、第7戦決勝でも2位に入ったイゴール・オオムラ・フラガ(PONOS NAKAJIMA RACING)の二人だ。
まずオサリバンだが、前夜の降雨が結構な水量で残り、タイヤのグリップなど期待しようのない状態の路面にビビることもなければ、敏感すぎるマシンのセッティングにあれこれ悩むこともなく、自分のセンスとテクニックを頼りにQ1、Q2とタイムをポンポン上げてSF初PP(ポールポジション)を獲得。
英国F4時代にオサリバンの好敵手だったルーク・ブラウニング(REALIZE KONDO RACING)や似たような経歴を持つロマン・スタネック(ナビクル Buzz MK RACING)も、ワイルドな走りっぷりで初めて予選上位に進出した。
常勝勢「無限」&「トムス」不振の原因は環境……?
太田や岩佐歩夢(TEAM MUGEN AUTOBACS)、坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)ら予選上位の常連がQ1突破すらできなかった理由は個々あったようだが、ウェットから微妙に乾き始めた複雑なコンディション下で浮かび上がったのは、グリップなんてどこにあるんですか? 的タイヤと日本ではまずお目にかからない荒れた路面上での競争を当たり前にしてきた外国人選手たちの底力だ。
整ったコンディションでのセッティングがキチっと決まらないと速く走らせられない、繊細にして気分屋のお嬢様のごときいまのSFマシンで、ノーグリップ上等! な環境に育った彼らが実力を発揮しきれないのも無理はない。
その点、日本の四輪レース歴4年目にして昨季SFルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いたオオムラ・フラガは、上記の選手たちに比べると一日の長がある。
イゴール・オオムラ・フラガの走りから見えてくる「選手像」
過敏なマシンやタイヤについてはまだ勉強中で、オフテストでは限界を超えてマシンを壊したこともあったが、同じ失敗を繰り返していない。持前の向上心と探求心で昨年以上に勝利へのこだわりを見せるフラガだが、実は年初に高校時代からの恋人と目出度くゴールイン、そしてつい最近、かねてより気になっていたホンダの2シーターオープンスポーツカーS2000を購入したという。
中古車市場でも大人気、とても状態の良いS2000と偶然出会ったチャンスをフラガは逃さなかった。いまこの時をモノにする判断力と決断力、勝ち取るための闘争心は、第3戦決勝でSC明けの3ワイドになった2番手争いの1コーナーで一気にトップを奪った走りや、第7戦で予選順位から2ポジションアップの2位をつかんだ慎重かつ大胆な走りでも大いに発揮されていた。
そんなフラガを見ていて思い出すのは、F1を取材していた頃に間近で接したミナルディ時代のアロンソやベッテル、ブルデーにブエミ、チームは違うがライコネン、SFなら平川亮の走りだ。
たとえ50%の出来のマシンであっても自分の力で85%に引き上げる彼らの走り、そのエネルギーの波動に触れるたびに鳥肌が立った。フリー走行の発進時から全力でタイムを出しに行く彼らの気迫がどこから来ていたのか、今ならよくわかる。
話題となった牧野の悔し涙から見えること……
第6戦で3位となった太田の僚友・牧野任祐が表彰台で悔し涙をこらえきれずにいた。レース中のチーム無線の不手際で勝利の機会を逸したからだ。SFは全チーム無線を聞けることをウリにしているが、筆者は一度も聞いたことがない。
F1だろうがINDYだろうが、外部が聞ける無線は部分的な切り取りが多く、聞いても間違った印象につながりかねない。それにラップモニター上で次々更新されるタイムを追っていれば、各車に何が起こっているかおおよそ見当はつく。
牧野の無線状態は把握していなかったが、なぜ前を走る牧野でなく後ろにいた太田を先にタイヤ交換に入れたのかは大いに疑問だった。
タイヤ交換の優先権はチームの先行車にあるのが常道だと筆者は理解している。今季絶好調の同僚に対し、序盤は不調に苦しんだ牧野が、やっとリズムを取り戻しつかみかけた勝利のチャンスを奪われる格好になったと周囲に見られても、チーム関係者は言い訳できない事案だったという他ない。
ドライバーが身を切る思いで求める勝利への意欲を削ぐことなく、彼らの闘志を燃焼させ力量を発揮できるマシン、戦略、走行中のコース状況管理も含め、レースを構成するすべての人々、ピースがプロに相応しいレベルで揃っていることが、中身の濃いレースをファンに提供することにつながる。
「トップカテゴリー」はドライバーたちだけで成立するものではないのだ。
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みんなのコメント
てっきりセナのことかと思ったら違うのね。ふとしたときに見せる表情がセナに似てるときあるんだよね。
だから今は何がなんでも太田優先と。
牧野は海外で活躍ってタイプじゃないし。どちらかと言うとここまま国内専門職人って感じ。