初のフルモデルチェンジとなったイヴォークだが、見た目以上に中身が進化。様々なステージで、その卓越したダイナミック性能を確認することができた。(Motor Magazine 2019年6月号より)
先代のデザインコンセプトを色濃く継承
正直に告白しよう。今でもよく覚えているのだが、2008年に開催されたデトロイトモーターショーでお披露目されたランドローバーの「LRXコンセプト」を前にして、私は少々困惑していた。
1970年代のスーパーカー図鑑その10「ロータス ヨーロッパ」
「理詰めの独系デザインと比べると何か違っている。でもプロポーションにも落ち着きがない。これが英国皇室御用達のセンス?」
格別、英国モノに悪い先入観はない。それどころかロータスは1972年製エランスプリントなど2台を所有、スーツケースはグローブトロッターを選んだ。
果敢なことにランドローバーは2010年、このモデルの市販に踏み切った。ふたを開けてみると最初の半年で8万台を超える注文が届いたという。ビクトリア・ベッカムがデザインの一部を担当したというミーハー的な触れ込みが効いたのか、折からのSUVブームの波に乗ったのか、当時の総生産台数がようやく20万台に達したランドローバーとしては大ヒットとなった。
そしてクーペ、コンバーチブルと追加され、7年間で80万台を売り切り、2019年にいよいよ初のフルモデルチェンジとなる。
ギリシャの陽光の下に輝く新型イヴォークのデザインは、キープコンセプト。先代のイメージが踏襲されていた。「プロフェッサー」の異名を持つチーフデザイナーのマック・ゴーヴェルン氏の鼻息の荒さは相当なもので、「私のデザインをみんな今頃理解したのか」と、デザイン的優位性を説く。
試乗を前によく観察すると、新型イヴォークは特徴的な切れ長ヘッドライトの下にLEDのデイタイムランニングライトが加わり、バンパー左右のエアインテークが拡大されている。また後ろに回るとリアコンビネーションライトもヘッドライトに合わせて横長に細く広がっている。リアスカートもボディカラーに合わせたスタイリッシュなデザインだ。
つまりイヴォークならではのデザイン的オーラは、しっかり受け継がれている。サイズは全長4.37m、幅2m、高さ1.65m、そしてホイールベースは2.68mである。また空車重量は1.8トン、ラゲッジルーム容量は591~1383Lとカタログに記載されている。
48Vマイルドハイブリッド化で燃費性能アップ
試乗車に搭載されているエンジンは、2L直4ターボで、最高出力249ps、最大トルク365Nmを発生、ZF製の9速ATとの組み合わせで、0→100km/hを7.5秒、最高速度は230km/hとゆとりの高性能を発生する。
注目すべきはベルト駆動式の48Vオンボードエネルギーサプライが標準装備されているところだろう。17km/h以下でエンジンは停止、アイドルストップからの再スタートも非常にスムーズだ。このマイルドハイブリッド化によって燃費は6%向上し、CO2排出量は8g/km減少する。
走らせるとオンロードではこの上なく快適でロングドライブでも疲れない。スタイル重視のインチ21大径タイヤを履いているにもかかわらず、路面からのハーシュネスはまったく気にならない。
さらに驚きはオフロード性能の高さである。ランドローバーの試乗会らしくオンロードを1時間ほど走ると、まるでラリー競技のように「スペシャルステージ」が現れる。その中にはオフロードはもちろん、渡河、そしてアクロポリスラリーのスペシャルステージルートまで含まれていた。加えて現在使っていない数百mの高さの峡谷に跨る狭い鉄橋を渡らせられるなど、ハラハラさせる体験までさせてくれた。
実は、このステージは「グラウンドビュー」という機能で、まるで車体を透明にしたかのように、前輪を含むフロントの下で何が起こっているかを、ディスプレイで見せるために用意されたのだ。(文:木村好宏)
■レンジローバー イヴォーク Rダイナミック SE P250 主要諸元
●全長×全幅×全高=4371×1996×1649mm
●ホイールベース=2681mm
●車両重量=1893g
●エンジン= 直4 DOHCターボ
●排気量=1997cc
●最高出力=249ps/5500rpm
●最大トルク=360Nm/1200-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=9速AT
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