トランプ政権で再び日本車がやり玉に
「バイ・アメリカン」の意味
日本では不人気で日陰の車種……でもアメリカでは大ヒット中の日本車3選
「バイ(Buy)、アメリカン(American)」。 ドナルド・トランプ大統領は、大統領選挙期間中から一貫して、そう言っている。そのなかでは当然、クルマも含まれる。となると、「アメ車を買え」という風に聞こえる。
そのため、トランプ大統領が就任直後から、安倍晋三総理と世耕弘成・経済産業大臣が「いえいえ、そうおっしゃらず。日本メーカーもアメリカで生産しているでしょ」と説得に努めた。
「日本車は、アメリカ人の生活に十分に根差していますよね。日系自動車メーカーは多くのアメリカ人を雇用していますよね。今後も、アメリカ向け自動車は日本からの輸入を徐々に減らして、しっかりアメリカ国内で生産しますので、その点を十分にご理解ください」。そうした、貿易の初歩的なところから、トランプ大統領に説明をしてきた。
80年代とは状況がまったく違う
時計の針を少し戻すと、1980年代には日米自動車貿易戦争が勃発。価格が安くて性能が良い日本車が日本からアメリカに輸出され始め、アメ車が一気に売れなくなった。そのため、アメ車の工場で人員削減が行われたものだから、工場労働者の怒りが爆発。労働組合関係者らが日本車をでっかいハンマーで叩き壊したり、火をつけたりと、嫌日ムードが全米に広がった。
その後、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱、スバルと日系メーカーは次々とアメリカ国内生産拠点を開設した。または、北米貿易協定(NAFTA:ナフタ)を活用して、アメリカに隣接するカナダとメキシコでも生産拠点を拡充し、そこからアメリカへ完成車を輸出してきた。
80年代からのカーター、レーガン、親ブッシュ、クリントン、小ブッシュ、オバマと続いた6つの政権では日米自動車摩擦はとくに大きな問題にはならなかった。それがいきなり、トランプ政権で「アメリカにとって、重大な問題だ!」と、クルマが通商政策のやり玉に挙がったのだ。
一般国民に嫌日ムードなし
トランプ政権の「バイ・アメリカン」政策について、一般のアメリカ国民の本音としては「なにをいまさら」という感じだ。
クルマについても、日本車購入を毛嫌いするような社会運動は起こっていない。日本車の多くがアメリカや、アメリカ周辺で製造されいることを、多くのアメリカ国民は知っているからだ。
じつは、こうした社会情勢をトランプ政権は十分承知している。それにも関わらず、日本車叩きを強調するのは、「強いアメリカ」を演出するためのひとつの手法だ。
さらには、アメリカにとって通商問題で最大の敵は、日本ではなく、中国だ。昨今の米中貿易戦争による、両国間の交渉の綱引きが続いている。
そうした米中関係の中、日米自動車貿易が「交渉の駒のひとつ」として使われている、と霞が関の政府関係筋の多くは見ている。
昨今の日米自動車貿易戦争は、トランプ政権によるイメージ戦略だといえる。
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