BEVシフトが叫ばれてきた自動車業界だが、ここへ来てその流れは少しずつ現実路線へ引き戻されつつある。充電インフラやコスト、さらには社会環境まで見渡していくと、いま改めて存在感を増しているのがハイブリッドだ。ではこの先、HEVはどこまで進化し、どんな立ち位置を担っていくのだろうか。
文:中谷明彦/画像:ベストカーWeb編集部、トヨタ、ホンダ、マツダほか
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目標を掲げるだけでは届かなかった完全BEV社会
今、自動車産業は大きな転換点にある。バッテリー電気自動車、いわゆるBEVが未来のモビリティの中心になると位置付けられ、世界の政府や自動車メーカーは電動車への完全移行を高らかに宣言してきた。欧州を中心とした環境規制の強化もあり、あたかも内燃機関は近い将来消滅するかのような論調が広がっていたのは記憶に新しい。
しかしその流れは、ここにきて明らかに変化の兆しを見せている。 背景にはいくつかの要因がある。ひとつは国際情勢の不安定化だ。中東情勢やウクライナ戦争などの影響により、石油価格は大きく変動し、各国のエネルギー政策にも再考を迫る動きが出ている。
また米国のトランプ政権では関税政策や環境政策の見直しが議論され、BEVに対する優遇措置も再検討の対象となっている。
だが、最も重要な問題は別にある。それはBEVに不可欠な充電インフラとバッテリーコストが、依然として十分な水準に達していないという現実である。BEVは補助金なしでは価格競争力を持ちにくい。また都市部では、自宅で充電設備を確保できないユーザーが増えている。マンション住まいが一般的な大都市では、駐車場に充電設備がないケースが多く、月極駐車場の価格も高騰している。
まさかここまでハイブリッドが普及するとは……
例えば東京都心では、軽自動車を所有するだけでも3~4万円/月の駐車場代がかかることは珍しくない。さらにコインパーキングも年々値上がりしている。こうした環境の中では、自動車を所有するよりも必要な時だけレンタカーやカーシェアを利用すればよいという考え方が、若い世代を中心に急速に浸透している。
このような社会状況を踏まえると、BEVが近い将来モビリティの中心になると断定するのは、やや時期尚早と言わざるを得ない。技術的にも社会インフラ的にも、解決すべき問題はまだ多い。そこで改めて注目されているのがハイブリッドシステム(HEV)である。
ハイブリッドの歴史を語る上で欠かせないのが、1997年に登場した初代プリウスだ。開発したのは言うまでもなくトヨタ自動車である。「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーとともに登場したトヨタ プリウスはガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせた画期的なハイブリッドシステムを搭載していた。
その技術の革新を担うのが、いわゆる動力分割機構である。遊星歯車を用いてエンジン、モーター、発電機の出力を最適に分配するこの機構は、極めて効率が高く、現在に至るまでハイブリッド技術の基礎となっている。自動車工学の歴史においても、極めて実用度の高い発明であり、いわば自動車技術のノーベル賞と呼ぶに値する発想だった。
各メーカーともハイブリッドシステムの開発は避けられない状態に
当時のプリウスは市街地の実用燃費でおおよそ15~20km/L程度だった。それでも当時としては驚異的な数値だったが、現在のハイブリッド車はさらに進化している。最新モデルではWLTCモード燃費で40km/Lを超える車両も登場しており、SUVのような大型車であっても実用燃費20km/Lを容易に達成する。
この燃費性能向上は、エンジンの熱効率向上だけによるものではない。空力性能の改善、転がり抵抗の低減、タイヤ技術の進歩など、自動車全体の総合性能が大きく高まった結果である。ハイブリッドシステムは現在、多くのメーカーが採用しているが、その方式はさまざまだ。ベルト駆動モーターを補助的に用いるマイルドハイブリッドや、エンジンを発電機としてのみ使う方式なども存在する。
しかし効率の面では、依然としてトヨタのTHS方式ハイブリッドが一つの完成系となっている。近年ではトヨタ方式の特許の一部が公開されたこともあり、他メーカーも同様な本格的ハイブリッドシステムを開発し始めている。
ディーゼルとの組み合わせにも活路があるか
今後の進化を考えると、いくつかの方向性が見えてくる。ひとつは、さらなるエンジン効率の向上である。現在でもガソリンエンジンの熱効率は40%を超える領域に達しており、一部では45%近い数値も報告されている。
これは従来ディーゼルが得意としてきた領域に迫るものだ。もうひとつの可能性は、異なる内燃機関との組み合わせである。例えばメルセデス・ベンツは、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたディーゼルハイブリッドを市場投入している。燃費に優れるディーゼルと電動モーターの組み合わせは理論的には非常に合理的だ。
またマツダが開発したCX-60、CX-80では、直列6気筒ディーゼルターボエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせている。大型SUVでありながら平均燃費20km/L前後を達成しており、その技術的挑戦は高く評価されるべきだろう。
今後あらゆる組み合わせのハイブリッドもありえるか?
さらに将来的には、水素燃料エンジンやバイフューエルエンジンとハイブリッドを組み合わせたシステムも考えられる。あるいは車体表面の太陽電池化、サスペンションのエネルギー回収、タイヤの発電素材など、走行中のあらゆるエネルギーを電力として回収する技術も研究されている。
これらが実用化されれば、実用燃費30km/L、あるいは40km/Lに迫るハイブリッド車が登場する可能性も決して夢ではない。一方、電気自動車は排出ガスを出さないという点で環境性能の高さが強調される。
しかし発電の多くが火力発電に依存している現状を考えれば、その環境負荷を単純にゼロと考えることはできない。バッテリーの製造や廃棄の問題も含め、総合的な環境評価はまだ議論の余地がある。こうした現実を踏まえると、少なくとも今後5~10年の間、ハイブリッドがモビリティの主流として位置付けられる可能性は極めて高いと考えられる。
もちろん20年、30年先の技術革新までは予測できない。新しいエネルギー技術が登場すれば、自動車の姿は大きく変わるかもしれない。
しかし現在の技術と社会条件を冷静に見れば、ハイブリッドこそが最も現実的な解であることは明らかだ。自動車メーカーは、この不確実な時代において生き残りをかけた難しい舵取りを迫られている。その中で最も重要なのは、現実を見据えた技術選択である。電動化の理想を追い求めることは重要だ。
同時に、今の社会で実際に機能するモビリティとは何かを見極めることこそ、自動車メーカーに課された真の課題なのだ。
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みんなのコメント
この間までBEVだ なんて散々言ってたくせに
だから車屋の話は、信じない
故障してそのままの所もあるとか
採算取れない事業は継続無理ですよ
EVは軽EVで自宅充電の街中チョイ乗り用しか無理でしょう