激動の中にあった1960年代のジャガー
ジャガーXJ6 シリーズ1のサスペンションは、前がセミトレーリング・ウィッシュボーン式にコイルで、後ろがロワーウイッシュボーン式にツインコイルという構成。リア側は、ドライブシャフトがアッパーリンクも兼ねた。
【画像】混乱期に誕生した最高峰 ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B 同時期の英国車 イスレロも 全122枚
ブレーキは前後ともディスクで、高精度なパワーステアリングも標準装備。開発予算は600万ポンドと巨大ではなかったが、SタイプやMkXなど、ブランド内のサルーンをすべて置換する役目が与えられていた。
その頃のジャガーは、激動の中にあった。1966年にBMC傘下へ併合され、1968年にレイランド・モータースと親会社は合併し、巨大なブリティッシュ・レイランドが誕生。ローバーは、同じ傘下のブランドになっていた。
XJ6 シリーズ1へ寄せられた賛辞に、ジャガー創業者のウィリアム・ライオンズ氏や主任技術者だったボブ・ナイト氏は、胸をなでおろしたはず。英国価格はドイツ製ライバルより30%安く、上級サルーンの水準を引き上げる完成度にあった。
「信じられないほどの価値があります。最高峰の誕生です。XJ6の価格が仮に2倍で、世界最高のクルマだと主張されても、われわれはそれを否定しないでしょう。XJ6は、新たな基準です」。その頃のAUTOCARは、こう伝えている。
歴代の英国首相の公用車になったP5 B
マーティン・ロビンズ氏は、アドミラルティ・ブルーとシルバー・バーチのツートーンに塗られた、P5 B 3.5リッター・クーペを16年間所有している。以前のオーナーは、新車時代から大切に乗っていたようで、走行距離は8万2000kmほどだったという。
この車両は、1972年に開かれた故エリザベス女王の銀婚式式典にも参列している。ロスタイル・ホイールとドライビングライトの追加で、見た目の印象はだいぶ変わるものだ、と感心する。1950年代風の容姿が、上品にアップデートされている。
XJ6 シリーズ1と並ぶと、かなりの好対照といえるが、堂々とした佇まいにある。歴代の英国首相の公用車として、歴史を重ねた風格がある。
後席の居心地は素晴らしい。独立したレザーシートが2脚並び、アームレストで左右が仕切られている。その中には、格納できるカップホルダーとテーブルが設えられている。カーペットは厚手。ヒーターとラジオのボリュームを調整できる、操作パネルもある。
プアマンズ・ロールス・ロイスと呼ばれた過去
運転席側は、時代を超越して愛着が湧く、複数のメーターが並んだクラシカルなダッシュボードが支配的。両端がカーブを描き、ドアの内張りと滑らかに繋がる。見た目が優雅なだけでなく、人間工学にも優れている。
トランスミッショントンネルの上には、ツールボックスが隠れている。ダッシュボードの下段には、小物用のワイドな棚。仕立ては上質で、ゆとりがある。座面が高めの運転姿勢は自然で、前方視界は広い。
P5 Bは、英国でプアマンズ・ロールス・ロイスと呼ばれていた。しかし、内装にプアという言葉は合致しないだろう。
3.5L V8エンジンを始動させると、英国車として聞き慣れたサウンドが小さく響く。ステアリングホイールのリムの内側には、クロームメッキのホーンリングが輝く。
油圧システムの圧力が上昇すると、パワーステアリングが機能し、低速域でも取り回しは容易。3速ATの変速は滑らか。レスポンスの良いアクセルペダルをしっかり踏み込むと、キックダウンを誘える。
古い基本設計を感じさせないV8エンジン
V8エンジンの印象は、60年も前の基本設計なことを感じさせない。驚くほどスピードを乗せやすく、郊外の一般道を軽々と走破できる。ちなみにこのユニットは、後に初代レンジローバーやモーガン・プラス8にも利用されている。
大きめの凹凸を通過すれば、サスペンションが身震いすることも。上級サルーンとしては、乗り心地は硬めといえるが、安定性にも唸らされる。
ステアリングホイールへ伝わるフィードバックは皆無で、切り始めの遊びは大きい。それでも、速度域が上昇すると重みが増し、ハイレシオなステアリングラックと相まって、機敏にカーブを抜けていける。
気張るとアンダーステアを隠さず、安全志向なことがわかる。P5 B 3.5リッターをスポーティなサルーンだとは表現できないが、V8エンジンのサウンドと相まって、活気ある雰囲気へ惹き込まれる。
この続きは、ジャガーXJ6 S1とローバーP5 B(3)にて。
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