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【元専門誌編集長の視点】フェラーリ296スペチアーレが日本初お披露目!既に全完売の先に見えるもの

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【元専門誌編集長の視点】フェラーリ296スペチアーレが日本初お披露目!既に全完売の先に見えるもの

起源は2003年に登場したチャレンジストラダーレ

フェラーリ・ジャパンは6月21日、富士スピードウェイで21、22日両日で開催している『フェラーリ・レーシング・デイズ2025』で、『フェラーリ296スペチアーレ』を初お披露目した。ここでは前日メディア向けに行われた発表会の模様をレポートする。

【画像】50psアップ&60kg軽量!日本初お披露目となったフェラーリ296スペチアーレ 全164枚

296スペチアーレは、4月29日にイタリア・マラネッロにあるフェラーリ本社で発表されたスペシャル(=スペチアーレ)モデル。車名と外観からご想像のとおり、296GTBのハイスペックモデルだ。本社での発表時には『296スペチアーレA』と呼ばれるGTSをベースとしたオープンモデルも公開されているが、今回はクーペのみのお披露目となる。

簡単に書けば、296スペチアーレはハイパワー&軽量なモデルで、その起源は2003年に登場した360モデナをベースとしたチャレンジストラダーレとなる。その後、クーペに限ると、2007年の430スクーデリア、2013年の458スペチアーレ、2018年の488ピスタと続き、今回はこれまでのV8とは異なり、V6として初のスペシャルモデルとなった。

296GTB、GTSのパワーユニットは2992ccのV6ツインターボとリアに搭載されたモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドで、その成り立ちは変わらない。しかし、V6が37psアップの700psになり、モーターも新たなエクストラブースト採用で13psアップの最高180psということで、合計50psアップの880psを後輪駆動で実現している。

組み合わせられるトランスミッションが8速DCTであることも変わらないが、変速時の増大トルクを活用することで変速時間を短縮。この日は『ファストシフト』という呼び方で、パフォーマンスとドライバーの一体感を高めていることを強調した。

レーシングカー由来と感じさせるディテールが散見

乾燥重量も、60kg軽量となる1410kgになった。これはボディの一部にカーボンパーツを採用したのはもちろん、エンジンではチタンコンロッドなどの採用で約9kg軽量化して実現した数値だ。これにより、パワーウェイトレシオは1.6kg/psとなった。フィオラーノ・サーキットのラップタイムは1分19秒だ。

ダウンフォース向上もトピックだ。250km/hで435kgという数値は296GTBから20%増加となり、これはワンメイクマシンである296チャレンジのソリューションを活用しているという。フロントボンネットはエアロダンパー、テールはガンマウイングと呼ばれ、実車を見ていても、いかにもレーシングカー由来と感じさせるディテールが散見された。

296GTB、GTSで高評価のサウンドも注目だ。プレスリリースからそのまま引用すると、『特徴的なサウンドを受け継いでいます。燃焼で生じる3次、6次、9次の周波数成分のみで構成された純粋な倍音を響かせ、その質と迫力、音量がさらに高まりました』とある。筆者は『純粋な倍音』というフレーズが刺さり、期待が高まった。

この日会場に展示されたのは、『ヴェルデ・ニュルブルクリンク』と呼ばれるグリーンのボディカラーの296スペチアーレ。車名は『グリーンヘル』と呼ばれるニュルの深い森をオマージュしたものだが、実車はもう少し明るい印象だった。

なおプレスリリースでは発表されていないが、車両価格はクーペが5911万円、オープンが6715万円とのこと。既に全車が完売しており、欧州では来年まずクーペから納車がスタート。その後、オープンは6月くらいからとなる。日本はもう少し先になりそうだ。ちなみに296GTBの生産がもう少しで終了し、GTSはまだ続くとのこと。恐らくはそれぞれが入れ替えで、スペチアーレ生産に移行するのであろう。

スーパースポーツを販売することの難しさ

今回の発表会には、フェラーリのヘッド・オブ・プロダクト・マーケティングであるエマヌエレ・カランド氏とフェラーリ・ジャパン代表取締役社長であるドナート・ロマニエッロ氏が登壇。両氏は発表会の流れで行われたグループインタビューに登場した。

その一連のコメントを聞いていて感じたのは、こうしたスーパースポーツを販売することの難しさだ。カランド氏が繰り返し強調していたのは、ドライビングエモーションの向上で、『馬力を超えたところを目指す』という表現があった。

かつて我々メディアは最高速にフォーカスしていたものの、それは販売する側も取り上げる側も交通規則に違反するという意味で、ナンセンスになってしまった。また今回、後輪駆動としては限界ともいえる880psを実現してしまったことで、次世代に対するハードルも高くなった。しかし、顧客は一度味わった刺激にはいつか慣れてしまい、それ以上のものを求めてくる。

では例えば、ハイブリッドなし? いやそれでは街中における最低限の快適性を損なってしまう。では敢えてマニュアルトランスミッション? いやそれではギアシフトスピードを再現できず、パフォーマンスを発揮する際に片手を離すのは危険が伴うとカランド氏はコメント。こうしていくつかの質問に対する回答を聞いていて、だんだんと296スペチアーレの落としどころが見えてきた。

大人しく感じたスタイリング

一方、個人的に気になったのは、スタイリングが大人しく感じたことだ。

GT3やチャンレジ、さらに言えばF1やWECマシンに由来するレーシングテクノロジーをフィードバックしているのは理解でき、それがフェラーリのDNAやアドバンテージになっていることは確かだ。念のため先に書いておくと、個人的に296スペチアーレのスタイリングは機能美に溢れていてとても魅力的だと思っている。

しかし、手法としてはライバルたちにも追従されていて、296GTB/GTSのスタイリングが元々エレガントであるからこそ、逆にそれをベースとした296スペチアーレに対して物足りなさを感じる側面もあるのだ。

先に書いたように296スペチアーレは既に完売しており、そのオーナーのほとんどは296を所有しているという。カランド氏はモンテゼーモロの時代からフェラーリで言われ続けてきた、『需要よりも1台だけ少ない供給』という表現を用いて、その魅力を高めて行きたいという趣旨の発言があった。つまりは、特別な顧客でないと、そこにはたどり着けないわけで、これだけでも296スペチアーレは成功したモデルと言える。

そして、今年登場するフェラーリ初のEVは予定どおり発表と答える一方で、今後V8モデルが続くか、V6が他モデルに転用されるかという質問には、「未来に対する話はできない」と笑顔でノーコメントとなった。

日本におけるフェラーリ・レーシング・デイズは今年で10回目の開催となる。そうしたプラットフォームを続けられるのは、日本が世界2位という販売台数をキープしているからで、その人気は今後も続くはずだ。しかしそれには、厳しい競争だけでなく、揺らぐ電動化やトランプ関税といった外的要因も影響してくる。

そういった中でフェラーリは、顧客にどうやって新しい刺激を与え、勝ち抜いていくのか? 様々な選択肢がある中で、果たして次の一手は何を選ぶのか? できればいい意味で期待を裏切って欲しいというが、筆者の偽らざる本心である。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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