強風、想定外のドアトラブル発生も
text:Kumiko Kato(加藤久美子)台風など強風が吹き荒れるときには、不要不急の外出は極力控えるべき。そうはいっても、急な買い物や家族の送迎でクルマを使うこともあるだろう。
また、出かけるときは平穏だったのに、出かけた先で急に風が強まることもある。地形や建物の配置によって思わぬ強風に遭遇することも珍しくない。
強風下でクルマを使う場合、気を付けるべきはドアの開閉だ。スライドドアなら風であおられることもなさそうだが(風向きによっては開閉がしづらい場合はある)、ヒンジドアでは強風にあおられる。
ドアが支えきれず隣のクルマにぶつかってしまうこともあり、ドアのヒンジがダメージを受けて正しい開閉ができなくなることもありうる。
ドライバー自身は注意しながらドアを開閉することができても、ドア開閉に慣れない子どもやお年寄りの乗り降りには十分な注意が必要だ。
強風でドアがあおられた際、どれくらいの風速までならドアを持って支えることができるのだろうか?
JAFユーザーテストの結果を見てみよう。
子どもがドアを支えきれない風速は
JAFユーザーテストによると、6歳男児も10歳女児も風速20m/sではドアを支えることができなかった。
風速20m/sと言えば、予報用語では「強い風」に相当する。東京湾を横断して千葉県木更津市へ至る高速道路「東京湾アクアライン」の橋部分が通行止めになる風速でもある。
子どもの場合、体重が軽いこともあり、ドアがあおられるのと同時に子ども自身もバランスを崩して、車外に転げ落ちてしまう危険がある。
もちろん、ドアを支えきれず横にクルマが停まっていれば、隣のクルマの側面にドアをぶつけてしまうことにもなる。
また、セダンやコンパクトカーなどヒンジドアのクルマに、ミニバンなどスライドドアのクルマに慣れてしまっている子どもを乗せるときは最大限の注意が必要。
ヒンジドアのクルマに慣れない子どもは、横のクルマとの距離感がつかめないことが多い。このような場合、強風時ではなくてもドア開閉は大人が外から行うのが鉄則である。
スライドドアのクルマでも同様。乗り降りは車道側ではなく歩道側からを徹底しておきたい。
これらの動作は乗せた子どもが高校生や大学生であっても、注意してあげた方が良い。
風速/クルマの種類 傷のつき方かなり違う
風速が速ければ速いほど、風であおられる力が強くなる。となれば、隣のクルマに当たってしまった場合の傷のつき方も変わってくる。
あてられたクルマも、あてた自分のクルマのドアも同様だ。
JAFユーザーテストでは、セダンとコンパクトカーなどクルマの種類によってもダメージの大きさが変わることがわかっている。
セダンのドアがコンパクトカーにぶつかった時の方が、コンパクトカーのドアがセダンにぶつかった時よりもキズは大きくなり与えるダメージが大きい。
ドアの重さや形状、どの位置にぶつかるかによって相手車の傷にも大きな違いが出てくる。ダメージが大きくなればその分、修理代も高額になってしまうのだ。
なお、ドアをぶつけた相手のクルマを修理するとなれば対物保険が関わってくる。ここで怖いのは片側だけではなく、両側のクルマに強風であおられた後部ドアを左右それぞれほぼ同時にぶつけてしまったようなケースだ。
A車、B車、C車と3台のクルマが停まっていて、B車の後席左右のドアから1人ずつ降りようとしたとしよう。
同時に強風にあおられてドアを支えきれず、A車とC車に、B車の左右のドアをぶつけてしまったという状況である。
強風下ではこんなことも起こりうる。保険適用はどうなるのだろう?
2事故にカウント 対物保険、6等級ダウン
実際に筆者の友人が体験したこと。左右のドアが強風であおられた。クルマから降りる際にドアを支えきれず、それぞれ隣のクルマにぶつかってしまった……。となれば、ほぼ同時に発生した事故であってもクルマ2台が被害車両となる。
そのため「2事故」とカウントされてしまうのである。
ちなみに、同じ「同時に2台が被害車両」となる事故でも、玉突き事故のような多重衝突の場合はそれぞれの事故に「連続性」があるため、事故は「1事故」としてカウントされる。
「1台のクルマが原因のほぼ同時に起きた事故だから1事故」だと思っていた友人が受けた衝撃は大きかった。
しかも後部座席に乗っていた(ドアをぶつけた)のは、わが子の友達2人だった。「修理代払って」とも言いだしにくい。
自分のクルマのドア2枚分と、両サイドのクルマの修理代2台分で見積の合計は約30万円。保険を使うと6等級ダウンとなり、元の等級に戻るまで時間も費用も掛かってしまうため、結局は保険を使わず自腹で支払ったそう。
強風や突風はその名の通り、予測できない状態で突然強い風が吹くことも十分に起こりうる。
JAFユーザーテストは以下の警告を発する。
「実際の突風や台風による強風はさらに強いエネルギーを持っています。周囲にクルマや障害物がなくても、強風であおられたドアが勢いよく開ききってヒンジが壊れることもあるので気を付けましょう」
隣のクルマにぶつけるのも嫌だが、ヒンジが壊れるのも同じくらい困る。強風時、ドアを開ける瞬間はドアを両手でしっかり押さえ、後続車をはじめ周囲の様子を確認しながら慎重に行いたい。
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