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【完璧なレストア】ポルシェ930ターボ なぜ? 海外オークションで落札ならず

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【完璧なレストア】ポルシェ930ターボ なぜ? 海外オークションで落札ならず

永遠のスター、911ターボ

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)

【画像】落札ならず ポルシェ911ターボ(1975年)【詳細写真】 全21枚

photo:RM Sotheby’s

特別なモデルが数多く存在するポルシェ911。そのヒストリーを語る上で欠かせない存在が、911ターボだ。

クルマ好きの間では、コードネームを用いて930ターボと呼ばれることが多い。

930ターボはカンナム・シリーズを制した「917/10 K」と「917/30KL」で得たターボ・テクノロジーを基に開発された。

ターボによる単なるパワーアップだけではなく、新たなフラッグシップとして豪華な高性能モデルと位置付けられたのが特徴である。

スタイリングはパワーを象徴するものとされ、ワイドなタイヤを収めるために120mm拡大されたリアフェンダーを始め、大型のリアスポイラーの採用によって強烈な印象に。1975年に発売されて以来、商業的にも大成功を収める。

日本では当時、スーパーカー・ブームの発端となるコミック「サーキットの狼」が盛り上がる。その中で、早瀬左近の2台目の愛車として活躍し、フェラーリ365GT4 BBとランボルギーニ・カウンタックとともに「スーパーカー御三家」として崇められた。

しかし、ポルシェ911のバリエーションとして送り出されただけに、1975年から生産終了の1989年までに、2万1589台も生産されている。

それはスーパーカーの生産台数ではなく、量産スポーツカーにあたるもので、ポピュラーな存在であることを印象付けた。

初期型930ターボ 競売に出品

生産台数が多いことから、コレクターズカー・オークションでも930ターボはポピュラーな存在といえる。

しかし、そのほとんどは3.3Lエンジンを積む1978年以降のモデルで、3.0Lエンジンの初期型は生産台数が2819台と少ないことからあまり姿を見せない。

こうしたなかで、極初期の素晴らしいコンディションの1975年製930ターボが競売の対象となった。

シャシーナンバーは、9305700065。この個体が、7月14日から22日にかけてオンラインで開かれたRMサザビーズ・オープンロード・ヨーロピアン・サマー・オークションに出品されたのだ。

1975年製の930ターボは274台が作られただけで、本シャシーナンバーは55番目に製作されている。

特注のカラーコード432コッパー・ダイアモンド・メタリックは、独特な凄みを感じさせる大人のボディカラーと言えよう。

1975年モデルだけの特徴

930ターボ最初期型の1975年モデルは、いくつかの特徴的なディテールを備える。

1975スタイル・インストゥルメント・パネル、スロットルペダル、テックス・タイプのドアミラー、ダッシュ上面の独立したスピーカーグリル、後席バックレスト裏面に「Turbo」ロゴが入らない、などが識別点となる。

このほか、リアウイングと一体のFRP製エンジンフード(1977年モデルまで)、レブ・カウンターにブースト計が備わらない(1976年モデルまで)、フロアコンソールがない(1976年モデルまで)なども初期型のポイント。

シャシーナンバー:9305700065は、イタリアのベローナにあるポルシェセンター・オートラマにデリバリーされ、最初のオーナーはスイス在住だった。その後ウィーンの著名なポルシェ・コレクターであり作家のゲオルク・コンラッドハイム博士が手に入れる。

その後、2016年に初期型911のスペシャリストのショップで、コンクール・レベルの仕上がりを目指してレストレーションに取り掛かる。この時点でオドメーターは9万2000kmを示し、ホイールからカーペットまですべてオリジナルを保っていた。

作業を始めるとモノコックの錆はほとんどなく、エンジン、ギアボックスは出荷時のままのナンバー・マッチングだった。レストレーションは費用を惜しまず細部まで徹底的に進められ、完成までに2年間を要したが、生産時以上の姿に復元されていた。

出品した現オーナー曰く、「現存する1975年の930ターボの中で、ベストのコンディションにある」という。

確かにディテールを見てゆくと、細部まで文句のつけようがないオリジナル度と素晴らしいコンディションに復元されていた。

結果は? 3410万円の壁

今回出品された1975年930ターボ。事前に発表された予想落札額は、27.5~32.5万ユーロ(3410~4269万円)だった。

ここ5年の930ターボ3.0Lモデルの落札額を見直してみると、下は1200万円からあるが、コンディションが良ければ2000~3000万円まで上昇する。

例外としては、走行34マイルの新車といえるものが39万ドル(4329万円)。1976年のアメリカ仕様プロトタイプが34.1万ドル(4263万円)というリザルトが存在する。

オークションは7月22日に入札が締め切られ、最高入札額は22万ユーロ(2728万円)に留まった。流札である。

極初期型で新車以上といえるコンディションを保つだけに、ベース車を手に入れて完璧にレストアすることを考えれば、予想落札額は妥当といえた。

しかし、コロナ禍で低迷する経済環境が足を引っ張ってしまったようだ。

オークションでは終了間際に競り合いが見られることがあるものの、ここでは最後の入札もなく、最低落札額に届かずに終わってしまったのである。その額は、あと5万ユーロ(620万円)足りないだけだった。

世界で最もコンディションの良い1975年930ターボ。再びオークションへ姿を現すことを期待したい。

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