愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第68回。後編では、俳優の鈴木京香さんが、東京でのクルマ生活や10年以上乗り続けた愛車について語る。
セダンを選んだワケ
圧倒的な“重厚感”──新型ベントレー コンチネンタルGTCスピード試乗記
前編では、俳優の鈴木京香さんが仙台の大学に通いながら仕事でも活躍し、愛車であるフィアット「パンダ」との生活を楽しんでいたところまでをお伝えした。
NHK連続テレビ小説『君の名は』への出演を機に活動拠点を東京に移した鈴木さんであるけれど、当初はクルマを持たなかったという。
「1年にわたる『君の名は』の撮影が終わったときには、どういうふうに仕事をしていくのか、よくわかっていませんでした。ただ当時はモデル事務所に所属していたこともあって、自ら運転して現場に行くこともあるかもしれない……と、思ったんですね。自宅の近くに駐車場を借りて、自分のクルマを持とうと決めました。仕事に行くのにふさわしいクルマということで、ボルボのセダンを選んだのですが、どのモデルだったかの記憶が曖昧で……」
『君の名は』が放映されたのが1991年。この時期に日本で買うことができたボルボだと、ボルボ240、ボルボ740、ボルボ940と960、あるいは登場したばかりのボルボ850のどれかだ。
それぞれのモデルをパソコンの画面に呼び出して検証していくうちに、鈴木さんの記憶が蘇ってきた。
「960だったと思います。友だちは740だったけれど、私は960を選んだことを思い出しました。室内が広いほうが仕事の合間に休めると思ったんです。本当はワゴン車にしたかったけれど、仕事に使うということでフォーマルなセダンを選びました。色もネイビーで、いかにも“お仕事用”という感じでした」
資料をあたると、ボルボ960の全長は4870mm。全長3380mmのフィアット・パンダからの乗り換えだと、かなり大きく感じたのではないだろうか。
「自分の駐車場に入れるだけでひと苦労で、とにかく大きいと思いました。でも乗り心地も重厚で安心感みたいなものがありましたし、大きなクルマで東京の道に慣れたこともよかったと思います。もし、あのとき小さなクルマに乗っていたら、小さなクルマにしか乗れなくなっていたかもしれませんから。それで、本当に忙しくなってくると事務所が運転手さんを付けてくれるようになって、運転手さんが私のボルボを運転してくださるようになりました。後ろの席に座りながら、大きなボルボにしてよかったなぁ、と、思いましたね」
鈴木さんが次に選んだのが、ローバーがホンダと共同開発したローバー「800」。基本骨格やパワートレインを当時のホンダ・レジェンドと共用したプレミアムセダンだ。
鈴木さんがお乗りになったのは、1993年のビッグマイナーチェンジでエクステリアが大きく変わった後期モデルである。
「ボディカラーはブリティッシュグリーン、インテリアはベージュにしました。ただ、この時期に所属事務所が社用車としてトヨタの『エスティマ』を購入したんですね。すると私のクルマは仕事に使わなくてよくなります。私の好みのデザインとかフォルムの美しさだけでクルマを選べるようになったんです」
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ジャガーXJ-Sの後継モデルとして1996年にデビューしたV型8気筒エンジン搭載のラグジュアリーなクーペで、鈴木さんは屋根が開くコンバーチブルを選んだ。
「当時、三谷幸喜監督の映画『ラヂオの時間』の現場で唐沢寿明さんとご一緒させていただいて、唐沢さんが『そんなにジャガーが気になるなら、ディーラーの知り合いに試乗をアレンジしてもらうよ』と、言ってくださったんです。そうしたら本当にディーラーの方が東宝の撮影所にジャガーを持ってきてくださって、敷地の中で試乗をさせてもらいました。すごく気に入って、後日ジャガーのディーラーにうかがって、ボディカラーはワインレッド、幌とインテリアはベージュのモデルを発注しました。仕事のことは考えずに、自分の好きなようにオーダーするのはパンダ以来でしたから、楽しかったですね。2カ月か3カ月後に納車されたときにはすごくかわいくて、“ジャイ子”という愛称を付けたんですよ(笑)」
ジャガーXK8での楽しかったドライブの思い出を尋ねると、こんな答が返ってきた。
「当時も犬を飼っていて、犬と一緒に仙台の実家によく帰省しましたね。300kmぐらい走るんですけど、加速が力強くて乗り心地も快適だから、苦になりませんでした」
こうして1990年代の後半から、“ジャイ子”との生活は約5年にわたって続いた。
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いろいろと話をうかがっていると、鈴木さんの愛車は1994年から2004年まで生産されたアストンマーティンDB7の最終モデルで、世界限定55台の「アニバーサリーエディション」ということがわかった。登場10周年を記念した希少な特別モデルだ。
「ジャガーが派手な色で少し目立ち過ぎたので、ネイビーとグレーの中間ぐらいの色、スレートブルーという色を選びました。インテリアはインディゴブルーみたいな紺色です」
愛車の仕様を説明しながら、「そうそう、納車されたら(スカッフ)プレートに『KYOKA SUZUKI』と、刻印してくださってました。照れましたが、いま思うと嬉しいことですね」と、鈴木さんは懐かしそうに笑った。
多忙な日々を過ごすなかで、アストンマーティンとのドライブは、リフレッシュする貴重な時間だったと振り返る。
「すごくいい音で走るので、気持ちがよかったですね。沼津港に行ってお寿司を食べて帰ってくるとか、三島に鰻を食べに行くとか、そういう休日が楽しかったし、普通に買い物やジムに行くのにも乗っていました。クルマに乗せてもらっているのではなくて、自分で進んで行く、という感じが好きでした。でも10年ぐらい乗った頃だと思うんですが、真夏にオーバーヒートするようになったり、切れたヘッドランプを取り寄せるのに何カ月もかかるようになったり、段々と乗らなくなりました。特にここ3、4年はほとんど乗っていなかったですね。それで去年、美術関係で知り合いになったアストンマーティンのコレクターの方にお譲りすることになりました。整った環境でクルマを大切にしてくださる方なので、いいお家に嫁いだな、と、安堵しています」
20年近くも所有したアストンマーティンDB7を手放して以来、クルマとは少し縁遠い生活を送っているという鈴木京香さんは、この日の取材について、こんなふうに語った。
「クルマに乗らなくなってしまったし、ジャガーやアストンマーティンと一緒にポーズを取るなんて絶対無理、照れくさい……と、思って、クルマとは別の撮影という企画でお願いしました。でも、お話をしていたら、私はクルマが好きだということがよくわかりました。いまは建築や美術に気持ちが向いていてとても充実していますが、やっぱりまたクルマを運転する生活ができたらいいですね」
アストンマーティンのショールームでひとめぼれしたように、いつの日かまた、恋に落ちるようなクルマとの出会いがあるかもしれない。
鈴木京香さんにそんな日が来るように、切に願いたい。
【プロフィール】鈴木京香(すずききょうか) 1968年宮城県生まれ。高校時代からモデル活動を始め、1989年に映画『愛と平成の色男』で俳優デビュー。NHK朝の連続テレビ小説『君の名は』(1991年)主演をはじめ、ドラマのほか、映画、舞台など数多くの作品に出演、幅広い役を演じる。映画『39 刑法第三十九条』(1999年)、映画『血と骨』(2004年)などで受賞歴がある。現在放送中の『PJ~航空救難団~』(テレビ朝日系 毎週木曜21時)に出演中。
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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・千吉良恵子(cheek one) スタイリング・藤井享子(banana) 編集・稲垣邦康(GQ)
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