■メリットは多くとも、クリアすべき問題は山積みか
2020年7月2日、国土交通省は、全国の高速道路の料金所をETC専用とする方向で検討すると明らかにしました。これに伴い、いわゆる「一般」レーンである現金扱いの有人ブースをすべて廃止する予定だといいますが、現実的に高速道路の料金徴収形態をETC専用することは可能なのでしょうか。
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検討に至った背景には、料金所職員が新型コロナウイルスに感染したなどの理由があり、感染症対策として職員との接触をなくす必要があると判断されたためとしています。
しかし、ETCの普及率が高まってるとはいえ、「完全に」有人ブースを廃止するとは思い切った決断であるとの声もあります。完全ETC化には、どんなメリット・デメリットがあり、実現にはどれほどの時間がかかるのでしょうか。
国土交通省道路局高速道路課の担当者は、次のように話します。
――ETC専用化することで想定されるメリット、デメリットを教えて下さい。
メリットとしては、新型コロナウイルスの観点でいえば、非接触型にすることで感染拡大の防止が見込める点です。
また、コロナウイルス後の長期的な観点では、ETCに統一することで柔軟な料金設定が可能となったり、ETCカードによって駐車場など、他の支払い手段に利用できるという利点があります。
デメリットならびに課題としては、ETCを持ってない人に対してどういった対応をするかという点です。解決案としては、クレジットカードのいらない『パーソナルカード』をより使いやすく改善したり、車載器を購入しやすくするなどが挙げられています。
――今からETC専用化をすると、実現したとしてどれくらいで実現するのでしょうか。
今回はあくまで専用化の『検討』が始まったばかりなので、実施時期は未定です。しかし、2020年秋頃には高速道路会社各所などを含む、関係各所からの意見などを取りまとめ、具体的な方針を議論していければと考えています。
――現時点の利用者状況を教えて下さい。
ホームページでも利用状況については常に公開していますが、2020年4月の段階では93.2%となっています。
※ ※ ※
国土交通省の担当者によれば、専用化や義務化については以前から議論されていたとのことで、新型コロナウイルスへの対策だけの意味合いではないようです。
また、今回の報道を受け、SNSなどではユーザーからさまざまな意見が寄せられていますが、「渋滞緩和に繋がる」「レーンを間違えることがない」という好意的な見方もされている一方で、「面倒だ」「あまり使わないのに取付費用がかかる」といった否定的な声はやみません。
高速道路における料金管理の向上といった大きな変革を実現するためには、実施までにどれほどデメリットや不安を解消できるかがカギとなるでしょう。
■2020年4月には過去最高の93.2%を記録、これまでのETC普及への道のりとは
今や90%以上の利用率となったETCですが、これまでどのような歴史をたどってきたのでしょうか。
まず、ETCの研究開発が開始したのは、1994年のことです。当時の建設省と道路4公団が主導となって事業がスタートしました。
1997年には試験運用が実施されます。対象となったのは、神奈川県の小田原厚木道路の小田原料金所と、東京湾アクアラインの木更津金田第一料金所でした。
その後、千葉・沖縄で一般へのサービスが開始したことを皮切りに、2001年11月から全国で一般運用されることとなります。
サービス開始後は、運送業者や通勤で高速道路を利用するユーザーを中心に利用者が増加、開始から5年後の2005年には利用率が50%を超えます。
そして、あるタイミングをきっかけに、80%の大台に乗ります。それは、リーマンショック後の「高速道路休日1000円」という施策です。
これは、ETC利用の普通車および軽自動車、自動二輪車を対象に、地方部の通行料金を上限1000円にするというものでした。
2009年から2011年まで実施されましたが、ETC利用率は実施前と比べると約20%も増加します。今日のETC社会の基盤を築いた出来事だったといえるでしょう。
その後、利用率は着々と上昇し、2020年4月の統計では過去最高となる93.2%を記録しました。ちなみに、利用率がもっとも高いのは阪神高速おける中型車以上の利用で98.8%となっています。
なお、現在は、従来よりも広範囲で渋滞や規制の情報を受信することが可能な「ETC2.0」と呼ばれるサービスが普及しています。
ある調査によれば、2020年5月末までのETC2.0セットアップ数は、全国でおよそ510万台にのぼるとのことで、今回のETC専用化にあたり、このETC2.0もますます浸透することが予測されています。
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