2020年6月10日、ダイハツの新型軽クロスオーバーSUV、タフトが発売となった。
新型タフトのグレード構成は、NAエンジンを搭載するベーシックなXと中級のG、上級のGターボになる。合計3グレードだ。
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価格はいずれも2WDで、Xが135万3000円、Gが148万5000円、Gターボが160万6000円。4WDはそれぞれ12万6500円高だ。
そこで、新型タフトのベストバイグレード、長所と短所について、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/ダイハツ
【画像ギャラリー】ベストバイグレードはどれ? 新型タフトのグレードの違いを写真でチェック!
タフトのグレード構成はどうなっている?
6月10日に発売された新型タフトはハスラーの牙城を崩せるか?
新型タフトのグレードは3種類
クルマの売れ筋&注目のカテゴリーは、今は新車販売台数の約37%を占める軽自動車と、約15%のSUVだ。
この2つの要素を兼ね備えた新型車として、ダイハツタフトが発売された。ガラスルーフのスカイフィールトップを全車に標準装着するなど、装備に特徴を持たせている。
そこでタフトのベストバイグレードはどのグレードなのか、そして長所と短所を解説していきたい。
タフトのグレード構成は、NAエンジンを搭載するベーシックなXと中級のG、上級のGターボになる。合計3グレードで、トランスミッションはすべてCVT(無段変速AT)だ。駆動方式は前輪駆動の2WDと4WDを全車に用意した。
装備は充実しており、ベーシックなX(2WDの価格は135万3000円)にも、衝突被害軽減ブレーキ、サイド&カーテンエアバッグ、LEDヘッドランプ、スカイフィールトップ、電動パーキングブレーキなどを標準装着した。
エントリーグレードのX(2WD)は135万3000円。ホイールハウスやルーフカラーはボディ同色、15インチスチールホイール、マニュアルレベリング機能付きフルLEDヘッドランプ(クリアランスランプ、オートライト付き)を装備
タフトXのインパネ。エントリーグレードだが装備は充実している。上級グレードに装備されるインパネセンターシフトやエアコン吹き出し口などに付くオレンジアクセントはなし
タフトXのシート。他のグレードにあるオレンジステッチはない。またフロントセンターアームレスト(ボックス付き)、助手席シートアンダートレイは装備されない
割安な印象のGグレード
148万5000円(2WD)のG。LEDフォグランプ、ブラックフィニッシュのルーフやルーフレール、ホイールハウスのほか、シルバー塗装の15インチアルミホイールなどが装備され、Xからプラスされた装備を考えるとお買い得
本革ステアリング&シフトノブ、TFTカラーマルチインフォメーションディスプレイ、運転席&助手席シートヒーターなど装備が充実するタフトGのコクピット
タフトGのシート。オレンジステッチが入り、フロントセンターアームレスト(ボックス付き)や助手席シートアンダートレイが装備される
中級のG(2WDの価格は148万5000円)は、Xにアダプティブドライビングビーム、スーパーUV&IRカットガラス、ルーフレール、LEDフォグランプ、15インチアルミホイール、TFTカラーマルチインフォーメーションディスプレイ、運転席&助手席シートヒーターなどを加えている。
プラスされた装備の価格換算額は合計22万円相当だが、Xに対する価格上昇は13万2000円だからGは割安だ。
Gにプラスされた装備の中で、アダプティブドライビングビームは、対向車や先行車を検知すると、ハイビーム状態を保ちながら複数あるLEDのいくつかを消灯して相手車両の眩惑を抑える。
小型車でも採用車種の少ない先進装備で、eKクロススペースは、同様の装備を7万7000円でオプション設定した。
したがって、アダプティブドライビングビーム+ルーフレール+アルミホイールの価格換算額を合計すると、13万2000円の価格上昇額がほぼ埋まってしまう。ほかの装備はサービスで装着される計算が成り立つ。
Gターボは最新の安全支援機能を装備
タフトGターボにはGの装備に加え、15インチアルミホイール(ガンメタリック塗装)を装備。写真はメッキパーツ装着車(ディーラーオプション)
タフトGターボのコクピット。全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKC(レーンキープコントロール)がGからプラスされた装備
タフトGターボの内装。シートにはオレンジステッチが入る
上級のGターボ(2WDの価格は160万6000円)は、文字通りGのエンジンをターボに上級化して、なおかつGに4万4000円でオプション設定される運転支援機能も標準装着した。
運転支援の内容は、車間距離を自動制御可能な全車速追従機能付きクルーズコントロールと、車線の中央を走りやすいようにパワーステアリングを制御するレーンキープコントロールだ。
Gターボの価格はGに比べて12万1000円高いが、オプション価格が4万4000円の運転支援機能も加えたから、ターボの正味価格は7万7000円になる。
この金額はターボの価格換算額では平均的だが、タフトの場合は事情が異なる。ターボの装着と併せて、CVTもD-CVTに上級化するからだ。D-CVTはギヤ駆動を併用して駆動力の伝達効率を高め、変速比もワイド化した。
この効果もあって、タフトのターボは効率が優れている。実際の走りを左右する最大トルクは、NAエンジンが6.1kgm/3600rpm、ターボが10.2kgm/3600rpmだから1.7倍に増強されるが、WLTCモード燃費はNAエンジンが20.5km/L、ターボが20.2km/Lだ。
ターボは動力性能を大幅に高めながら、燃費数値はほとんど悪化しない。この高効率なターボの正味価格が7万7000円なら割安だ。
タフトのベストグレードはG、Gターボがおススメ!
以上のようにタフトでは、NAエンジンのGと、Gターボが買い得な推奨グレードになる。
もちろん価格の面ではGとなるが、販売店で両グレードを試乗して、自宅付近の登り坂などを走り、NAエンジンとターボの選択を判断したい。
またNAエンジンのGに、運転支援機能を4万4000円でオプション装着するなら、これを標準装着したGターボをお薦めしたい。
運転支援機能を装着するユーザーは、高速道路やバイパスを走る機会も多いだろう。そうなると動力性能に余裕のあるターボのメリットが際立つ。ターボと運転支援機能は親和性が高い。
新型タフトの長所と短所は?
スズキハスラーは136万5100~174万6800円
このようにタフトは、GとGターボを中心に装備を充実させて価格を割安に抑えた。この背景にあるのは、ライバル車のハスラーに向けた対抗策だ。
ベーシックなタフトXの価格は、ハスラーハイブリッドG(2WDの価格は136万5100円)に比べて約1万円安い。この価格で、タフトはハスラーが装着しないLEDヘッドランプ(ハスラーはハロゲン)やスカイフィールトップを採用した。
中級のタフトGは、ハスラーハイブリッドX(151万8000円)に比べて3万3000円安い。この価格で先進装備のアダプティブドライビングビームなどが加わる。
同様にタフトGターボの価格も、ハスラーハイブリッドXターボに比べて、わずか6600円だが安い。タフトの3グレードは、すべてハスラーに照準を合わせて割安感を強調している。
ここまでタフトが装備と価格でハスラーを意識する背景には、3つの理由がある。まずはタフトの外観や内装など、商品の特徴がハスラーに似ていることだ。典型的なライバル車だから、当然に競争相手を意識する。
2つ目の理由は、タフトが後から発売されたのに(初代ハスラーの発売は2014年、2代目も2020年初頭)、タフトの一部機能が現行ハスラーに比べて劣ることだ。使い勝手に最も大きく影響するのは、後席のシートアレンジだろう。
ハスラーの後席には、前後スライドと、背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がる機能が採用される。
後者の採用で、床の低い平らな荷室に変更することも可能だ。しかも後席の前後スライドと座面の昇降機能は左右独立式だから、スズキスペーシアやダイハツタントといったスーパーハイトワゴンと同様のアレンジを備える。
ところがタフトでは、これらがすべて採用されない。後席は背もたれが単純に前側に倒れるだけだ。発売から5年以上を経過した現行ムーヴと比べても、タフトのシートアレンジは劣っている。
特に後席がスライドしないことは残念。チャイルドシートを装着した時に後席が前寄りにスライドすれば、運転席に座る親との間隔が縮まり、信号待ちの時などに子供をケアしやすい。
また前寄りにスライドすることで、後席の後ろ側の荷室も広がり、ベビーカーなども積みやすい。後席がスライドしないタフトでは、このメリットが得られない。
新型タフトは、フラットな床面を持ったガンガン使えるスペースや汚れを苦にしない樹脂製シートバック、そして前席上のルーフ部をガラス製トップにしたスカイフィールトップなどが装備されている通り、クロスオーバーSUVとしてのキャラクターに特化されているのだ。
新型タフトの後席はフルフラットになり、シートバックは汚れにくい樹脂カバード仕様でラゲッジスペースもデッキボードも樹脂製の素材を使用するなど、アウトドア的な使い方は素晴らしいが、後席のスライド機構がないのがマイナスか
全車標準装備となるスカイフィールトップは、スーパーUV&IRカットガラスが使用されているので、夏場の日中に開けていても暑さは感じにくいという
タフトはエンジンの機能も見劣りする。ハスラーはマイルドハイブリッドだから、モーター機能付き発電機を搭載して、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行う。
アイドリングストップ後の再始動はベルト駆動で行うため、ノイズが小さく、頻繁なエンジン停止も可能になった。
これらの相乗効果で、ハスラーのWLTCモード燃費は、ノーマルエンジンが25km/L、ターボは22.6km/Lだ。タフトの20.5km/L・20.2km/Lよりも優れている。
このほかハスラーは、4WD仕様に滑りやすい下り坂を安定して走破できるヒルディセントコントロールなどを装着した。タフトもグリップサポート制御を備えるが、ハスラーほど悪路指向ではない。
その代わりハスラー4WDの価格は、2WDに比べて13万4200円高いが、タフトは12万6500円に抑えた。タフトはすべておいて、機能の割に価格を安く抑えてハスラーに対抗している。
タフトがハスラーを強く意識する3つ目の理由は、ダイハツとスズキの販売合戦だ。最近の軽自動車販売は、一貫してダイハツが1位、スズキは2位だが、2020年は接戦になっている。
2020年1~5月の軽自動車累計販売台数は、ダイハツが20万3486台、スズキは19万8715台だ。ダイハツが1位だが、スズキとの差はわずか4771台だから、今後の販売動向次第でスズキが1位になることも考えられる。
しかも初代ハスラーが発売されて売れ行きを伸ばした2014年は、スズキが暦年で1位になった。この時には両メーカーの販売会社が在庫車を大量に届け出して、販売台数を粉飾することまで行われた。
そのために中古車市場の価格とユーザーの売却額(リセールバリュー)が下落して、いい換えれば軽自動車の資産価値を下げてしまった。
2020年も2014年と同様、1月に新型ハスラーが発売され、2019年に登場したタントは売れ行きが伸び悩んで格安な特別仕様車を追加する事態に陥っている。
このままではダイハツの軽自動車販売が、2014年と同じく再び2位に転落しかねない。
こういった事情もあり、タフトの装備と価格が設定された。つまりタフトの割安な価格は、ダイハツの置かれた辛い現状の象徴だ。
ダイハツの営業マンに新型タフトの反響を聞いた
アウトドア志向ではなく、都会派でクールなスタイルを演出するクロムパックもメーカーオプションとして用意されている
ダイハツの販売店にタフトの受注状況を尋ねると、以下のような返答であった。
「お客様の反響は相応に多く、ムーヴやタントからの乗り替えが目立つ。他メーカーの車種では、スズキのワゴンRやコンパクトカーのヴィッツ、アクアなどからの乗り替えもある。
また小型/普通車のみを所有していたお客様が、タフトをセカンドカーとして加えることもある。納期は2WDなら1.5ヵ月から2ヵ月に収まり、4WDは少し長いが2ヵ月半程度」とのこと。
タフトは前述のようにシートアレンジが単純だから、ムーヴ、タント、ワゴンRなどから乗り替える時には、荷室の機能に注意したい。
そこに不満がなければ、安全装備や運転支援機能も充実しており、スカイフィールトップも装着しているので、お買い得な軽自動車といえるだろう。
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みんなのコメント
縦だったり横だったり、オレンジの枠があったり無かったり。落ち着かないインパネ。