伝説的ブランドの最新作はサーキット専用車両
知る人ぞ知るイタリアの自動車メーカー、ATSアウトモビリがRRターボと名付けられたモデルを発表した。レース参戦のために自社開発された新型車だ。
歴史を遡れば、フェラーリを辞めたカルロ・キティやジオット・ビッザリーニたちによって設立されたATSが、初めてミドシップのスポーツカーを発売したのは1963年のこと。フランコ・スカリオーネがデザインしたこの2500GTは公道走行可能なクルマだったが、今回発表されたRRターボは開発当初から公道ではなくサーキットを目指している。
クーペ型ボディのプロポーションは典型的なミドエンジン・スーパーカーのそれだが、ATSはこのRRターボを可能な限り軽量で俊敏なクルマに仕立てた。
驚異的なパワーウエイトレシオ
アルミニウムやカーボンファイバーなど軽量な素材を多用することで、乾燥重量はわずか780kgに収まっている。復活したアルピーヌA110でさえ1098kgもあることを考えれば、どれほど軽いかわかるだろう。さらにこの車重が、FIA認定のロールケージや消火装置、ダッシュボードに備わるタッチスクリーンで調整可能なサスペンションといった標準装備を含めた数字であることを知れば一層驚くに違いない。
RRターボのエンジンは、ホンダ製の2.0L直列4気筒ガソリン・ターボ。これにATSがチューンを施すことで、最高出力600ps、最大トルク54.0kg-mを発生する。このエンジンがパドルシフト式6速シーケンシャル・ギアボックスと、リミテッド・スリップ・ディファレンシャルを介して、後輪を駆動する。動力性能の詳細な数字は明らかにされていないものの、パワーウエイトレシオを計算すれば、驚異的な加速性能が想像できるはずだ。ブレーキはブレンボ製4ピストン・キャリパーとスチール製ディスクが標準だが、オプションでATSサイコム製モノブロック・キャリパーとカーボンセラミック製ディスクを装備することも可能だ。
価格は邦貨換算1300万円から
ATSは1961年に、エンツォ・フェラーリと対立してマラネロを離れた元フェラーリの従業員たちが、打倒跳ね馬を目指して設立。しかし、それからわずかな期間に12台のロードカーを製造しただけで、1964年に倒産している。2014年に新会社として半世紀ぶりに復活し、マクラーレン650SをベースにしたATS GTというモデルを2017年に発表した。
レースに参戦したい人のために開発されたRRターボは、GTカップ・チャンピオンシップやニュルブルクリンク耐久シリーズ、ヨーロピアン・ヒルクライム・チャンピオンシップなど、欧州で開催されるFIA認定の多数のイベントに出場する資格を有するという。
現在注文受付中で、最初の納車は2020年に春になる予定。価格は税別11万ユーロ(約1300万円)からと発表されている。派生モデルとして公道走行可能なバージョンを作る計画があるかどうかは不明だ。ただしナンバープレートを付けるのであれば、多少の重量増は避けられないだろう。
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