アストンマーティンが進めている“セカンドセンチュリープラン”は、2022年までの7年間に毎年、まったくのニューモデルをラインナップにくわえるほか、既存モデルもリフレッシュをおこない、モデルの充実、拡充をおこなうという。
昨年11月には新型ヴァンテージを発表。ほかにも「DB11」については既存の5.2リッターV12エンジンにくわえ、4リッターV8搭載モデルを追加してクーペ/ヴォランテ(コンバーティブル)をラインナップした。2018年は「DB11」に5.2リッターV12ツインターボを搭載するフラッグシップモデルの「AMR」を追加し、6月にはヴァンキッシュSの後継モデルとして「DBS スーパーレッジェーラ」を発表した。今後はラグジュアリーサルーンモデルの「ラゴンダ」も電動化を伴って登場しそう。SUVの計画もあるらしい。
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また、アストンマーティンのアジア・パシフィック地域ディレクターであるパトリック・ニルソン氏が「アストンマーティンはクルマを製造するだけでなく、ライフスタイルを創造する独立企業として成長していきたい」と言うように、ライフスタイル分野にも力を入れている。
例えば、昨年、マイアミで建設がはじまった同社初の高級高層コンドミニアムがある。完成の予定は2021年だ。また、世界第2位の販売台数を誇る日本には、グローバル・ブランドセンターである「THE HOUSE OF ASTON MARTIN AOYAMA」を開設し、クルマだけではなくアパレルやモデルカーなど各種商品も販売する。
このほか、アストンマーティンが厳選した商品や芸術作品の紹介、そしてユニークなドライビング体験を提案する「Art of Living by Aston Martin」を毎年おこなっている。
今回、真冬のニュージーランドのクイーンズタウンで開催されたドライビング体験「ASTON MARTIN on Ice」は、「Art of Living by Aston Martin」のプログラムのひとつだ。
宿泊したのは5つ星ホテルの「ブルックリゾート」。500エーカーの敷地内にゴルフコースといくつかのコテージが点在する。今回のイベントではこちらに2泊し、初日はアストンマーティンのドライビング体験、2日目はニュージランドらしいアクティビティが楽しめるプログラムだった。
注目すべきはドライビング体験だ。会場となったのは海抜1550mの高地にあるSHPG(サザン・ヘミスフィア・プルーヴィング・グラウンズ)。自動車メーカーがウインターテストをおこなうことでも有名な場所だ。ちなみに会場までの往復に使用されたのはなんとヘリコプターだった(天候による)。
到着後、まずはインストラクターからドライビングポジションやステアリング操作、アンダー/オーバーステアについてなどのレクチャーを受けた。そのあと、最新モデルのヴァンテージ(4.0リッターV8ツインターボ 510ps/685Nm 8AT)やDB11ヴォランテ(4.0リッターV8ツインターボ510ps/675Nm 8AT)、DB11クーペ(5.2 リッター V12エンジン608ps/700Nm 8AT)が待つ、”on Ice”へ移動する。
ちなみに今回のドライビング体験では全車DSC(横滑り防止装置)はOFFにした。とはいえ、スタッドタイヤ(スパイク付タイヤ)を装着しているから、氷の上で「ガリガリッ」とグリップを確保するのも比較的イージーだ。広大な敷地には8の字をふくむ軌跡のバリエーションに富んだスラローム、氷盤のスキッドパッドなどが用意され、飽きることがなかった。
「退屈って思うかもしれないけれど、まずはアンダーステアの体験からしてみよう」と、インストラクターが話す。彼らはアストンマーティンのレーシングチームでレース参戦経験のあるドライバーだ。シンプルな単語を選び、アドバイスしてくれるのでわかりやすい。
アンダーステアを意図的につくる体験を通し、「なぜ、どんな操作をしたときにアンダーステアになるのか」を知ったうえで、次のオーバーステア体験に臨む。
参加者の多くが期待するオーバーステア=ドリフト走行の体験に使用したのは500psないしは600psオーバーの大パワー・エンジンを搭載する後輪駆動モデル。スキッドコントロールが相当難しいのでは?と思った。アクセルコントロールを間違えればすぐにスピンしてしまうだろうし、また、アクセルを踏むタイミングを間違えれば、たちまちフロントタイヤから滑り出し、アンダーステアを誘発してしまうはずだ。
しかし、あらゆる心配は杞憂に終わった。想像以上に安定した走りによって、ドリフト走行を存分に楽しませてくれたからだ。
どのモデルもアクセルペダルを2センチ前後踏むだけで、氷上でのコントロールは容易だった。優れたエンジンレスポンスがあるのはすべてのパワーユニットに共通していた。V12エンジンは実に滑らかで、張りのあるトルクがどこからでも得られた。V8ツインターボはターボについてはラグが気になっていたが、実際に運転するとターボ車であることを忘れるくらいナチュラルなフィーリングだった。
最新アストンマーティンに共通する挙動コントロールのしやすさはサーキットでも確認済みだったけれど、氷上というはるかに滑りやすいコンディションでは、そのことがさらに際立って実感出来たのであった。
ちなみに、あらゆる試乗車のなかでもっとも印象的だったのは最新のヴァンテージだった。DB11に比べるとボディがよりコンパクトで、かつV8エンジンを搭載するので鼻先も軽い。車両重心を下げ、前後重量配分50:50にこだわったことも功を奏して、氷上でのコントロール性は抜群だった。
静寂に包まれた白銀の世界に雪煙を巻き上げながら轟くアストンのエンジン。そしてコントロール自在のパフォーマンス……。まるで動き吠える“アート”そのものだ。「Art of Living by Aston Martin」(アストン・マーティンによる生活芸術)という標榜にいつわりはなかった。
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